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2026年01月08日

“いい音”って何? ライブ喫茶ELANが初心者に伝えたいオーディオの基礎

「いい音って何?」と聞かれたとき、ELANのカウンターのこちら側からいつも思うのは、「スペックでは測りきれない”気持ちよさ”のことかな」ということです。

この記事では、名古屋・熱田のライブ喫茶ELANが、お店での体験や会話を交えながら、オーディオ初心者の方に向けて”いい音”の基礎をゆっくりお話していきます。


ライブ喫茶ELANが考える「いい音」とは

ELANには、ジャズ好きの常連さんからオーディオ機器はこれからという初心者の方まで、さまざまなお客様がいらっしゃいます。その中で改めて感じるのは、「いい音」の正解は1つではなく、「自分が気持ちよく聴けて、音楽に浸れるかどうか」というところにある、ということです。

お店でお客様と話していると、「ハイレゾが一番いい音なんですよね?」「値段が高いスピーカーほどいい音ですよね?」といった質問をよくいただきます。たしかにスペックや価格は目安になりますが、同じ機材でも、部屋の広さやスピーカーの置き方、聴く人の好みで印象はがらりと変わります。

ELANでは、JBLの大型スピーカーやレーザーターンテーブルなど、かなり本格的な音響機材を揃えていますが、それでもめざしているのは「機械を自慢する音」ではなく、「お客様がリラックスしてコーヒーを飲みながら聴ける音」です。

“いい音”を一言でまとめるなら、次の3つが揃っている状態だと考えています。

  • 長時間聴いていても耳が疲れにくい
  • 演奏のニュアンスや空気感が伝わってくる
  • 思わず「もう一曲聴きたい」と感じる

ある日、オーディオ初心者のお客様から「CDとレコード、どっちが”いい音”なんですか?」と聞かれました。そのときお店でかけたのは、同じアルバムのCDとレコードを順番に再生して聴き比べる、というちょっとした”実験”でした。

「CDのほうがクリアで整理された音に聞こえる」「レコードのほうが、なんだか部屋全体がふわっと鳴っている感じがする」と、そのお客様は率直な感想を教えてくれました。そこで「じゃあ、あなたにとってはどちらが”いい音”でしたか?」と尋ねると、少し考えてから「レコードのほうが落ち着いて聴けました」と笑顔で答えてくださったのが印象的でした。

この小さなエピソードからも分かるように、”いい音”とは他人が決めるものではなく、「自分の耳が気持ちよく感じる音」です。この記事では、その感覚を自分で見つけていくための、最初の道しるべになるような話をしていきます。


オーディオ初心者が最初に知るべき3つのポイント

“いい音”を難しく考えすぎると、オーディオはすぐに「用語の沼」になってしまいます。まずは、ELANでお客様にお話ししている「ここだけ押さえておけば大丈夫」という3つの基本から見ていきましょう。

1. 周波数特性と”音のバランス”

オーディオの世界でよく出てくる「周波数特性(しゅうはすうとくせい)」とは、「低音から高音まで、どのくらいの音をどのようなバランスで出せるか」を表したものです。数値としては「20Hz〜20kHz」といった形で表記され、これは「低いほうは20ヘルツ、高いほうは20キロヘルツまで再生できます」という意味です。

ただ、数字が広ければ広いほどいい、というわけではありません。オーディオ初心者の方にとって大事なのは、「低音・中音・高音のバランスが自然に聞こえるかどうか」です。

たとえば、低音が出すぎていると、ベースやバスドラだけがドンドン主張して、ボーカルが埋もれてしまいます。高音がきつすぎると、シンバルやサ行が耳に刺さって、長時間聴くと疲れてしまいます。

ある日、若いお客様が「重低音がガンガン出るヘッドホンがかっこいい」と言って、低音強調モードで好きなロックを聴いていました。そこで同じ曲をELANのスピーカーで通常のバランスのままかけてみると、「あれ、ギターのフレーズってこんなに繊細だったんですね」と驚いていらっしゃいました。

その表情を見て、「派手さよりも、全体のバランスこそ”いい音”の第一歩だな」と改めて感じた場面でした。

2. ダイナミックレンジと”音の表情”

「ダイナミックレンジ」とは、「音の小さい部分から大きい部分まで、どれだけの幅を表現できるか」という指標です。ささやくようなボーカルと、クライマックスの盛り上がりをどれだけ自然に、かつ無理なく再生できるかがここに関わってきます。

ダイナミックレンジが狭いと、音の強弱が平坦になり、どの曲も同じような”ノッペリした印象”になってしまいます。逆に、レンジが広すぎると、小さい音が聴き取りにくかったり、家庭の環境ではボリューム調整が大変になったりする場合もあります。

ELANでジャズのバラードをかけているとき、お客様がよく「ピアニッシモからフォルテまでの”空気の動き”が気持ちいい」とおっしゃいます。これは、ピアノやサックスが小さく息を潜めるような瞬間から、一気に音を解き放つ場面まで、音の表情が豊かに伝わっているからです。

「音量が大きければ迫力があっていい音」というイメージを持つ方も多いのですが、本当に心に残るのは、むしろ”静けさ”と”余韻”がきちんと聴こえる音だったりします。その意味で、ダイナミックレンジは”音のドラマ”を描くための重要な要素だと言えます。

3. 歪みと”耳障りのよさ”

オーディオ用語でいう「歪み(ひずみ)」とは、本来の音に含まれていなかった成分が混ざってしまい、音が濁ったり、耳障りになったりする現象のことです。数値としては「全高調波歪率(THD)」などで表されますが、初心者の方は「音量を上げたときに苦しくならないかどうか」で判断すると分かりやすいです。

ただし、ここで少しややこしいのは、「歪みが少ない=必ずしも心地いいとは限らない」という点です。真空管アンプのように、わずかな歪みが”味”となって、柔らかく温かい音に感じられるケースもあります。

ELANでも真空管アンプの試聴会を行った際、「スペックだけ見たらトランジスタアンプのほうが優秀なんでしょうけど、この”ほんのり丸い音”がたまらないですね」と話されるお客様が大勢いらっしゃいました。耳で聴いたときの心地よさこそが、数字を超えた”いい音”の判断基準になる場面です。

オーディオ初心者の方には、まず「長く聴いていても疲れないか」「ボーカルの声が自然に聞こえるか」という2点を大事にしていただくよう、お店としてもお伝えしています。


機材より大事? スピーカーの置き方と部屋の影響

「高い機材をそろえればいい音になる」と思われがちですが、実際には”部屋”と”スピーカーの置き方”のほうが音への影響は大きかったりします。ELANの店内も、オーナー自らが音響を考えて設計し、スピーカーの位置や角度、天井の高さなど細かい部分まで調整して作り上げています。

リスニングポジションと”音の焦点”

スピーカーの前で、左右のスピーカーと自分の位置を結んでできる三角形を「正三角形に近づける」と、音の定位(どの位置からどの音が聞こえるか)がはっきりしやすくなります。この「ベストポジション」は、よく「スイートスポット」と呼ばれます。

ELANでは、カウンター席とテーブル席で「音の聴こえ方」が少し違うように設計されています。常連のお客様の中には、「今日はピアノトリオだから、あの席で聴こう」と、曲や気分によって座る場所を選ぶ方もいるほどです。

ご自宅でも、ほんの少しスピーカーの位置を動かしたり、角度を内側に向けたりするだけで、ボーカルが真ん中にピタッと定位したり、ベースの低音がぼやけずに締まって聴こえたり、左右の広がりが自然になったりと、さまざまな変化が生まれます。

難しい機材を買う前に、「スピーカーの高さや向きをいじってみる」というシンプルな工夫から始めてみることをおすすめしています。

部屋の響きと”残響の心地よさ”

音は、スピーカーから出た直後だけでなく、壁や床・天井に反射した”反射音”もセットで耳に届きます。この反射音が多すぎると、音がぼやけてしまい、少なすぎると妙に乾いたつまらない音に感じられます。

ELANでは、レコード棚を壁面に配置して音の拡散を助けたり、床材やテーブルの材質を考えて反射音の質を整えたり、ステージと客席の距離を取り、音の広がりを自然にしたりといった工夫で、ほどよい残響が心地よく感じられるようにしています。とくに木のテーブルやレコード棚は、単なるインテリアではなく、”音の調味料”として大きな役割を果たしています。

ある日、「自宅だと同じスピーカーを使っているのに、なぜかここで聴くより”平坦”に感じる」というお客様がいらっしゃいました。お話を聞いてみると、ご自宅はフローリングに大きな窓、家具は少なめという、音が反射しやすく、かつ吸音するものが少ない環境でした。

そこで「絨毯を敷いてみる」「カーテンを厚手のものに変えてみる」「本棚を壁際に置いてみる」といった簡単な対策を提案したところ、後日「同じスピーカーとは思えないくらい聴きやすくなりました」とうれしい報告をいただきました。部屋づくりは、”いい音”にとって、とても大切なパートナーなのです。


レコード、CD、デジタル音源——”いい音”はどこにある?

ELANには、往年の名曲を収めたレコードが所狭しと並び、レーザーターンテーブルという特殊なプレーヤーでレコードを高音質再生できる環境があります。一方で、CDやデジタル音源(ストリーミング)も、今や音楽を楽しむうえで欠かせない存在です。

ここでは、「どれが一番いい音か」を決めつけるのではなく、それぞれの特徴と”初心者にとっての付き合い方”をお伝えします。

レコードの”温かさ”とレーザーターンテーブル

レコードは、盤に刻まれた溝を針でなぞり、その振動を電気信号に変えて再生するアナログ方式です。そのため、わずかなノイズや歪みが生まれますが、それが”温かさ”や”厚み”として好まれることも多くあります。

ELANには、針ではなく”光”で溝を読み取る「レーザーターンテーブル」を導入しています。これはレコード盤の情報をレーザーで読み取ることで、針の摩耗やノイズの影響を最小限にし、原音に近いクリアな音を再生できる機材です。

常連のお客様の中には、「学生時代に買った思い出のレコードを、ここでレーザーターンテーブルで聴くのが楽しみなんです」という方もいらっしゃいます。「針で聴いていたときには気づかなかったピアノの細かいニュアンスが聴こえた」と感動される姿を見ると、レコードの世界の奥深さをあらためて感じます。

CDの”安定感”とデジタルのメリット

CDはデジタル形式の代表格で、ノイズが少なく、取り扱いもしやすいメディアです。再生ごとに音質が劣化しにくく、広いダイナミックレンジを持てるため、クラシックや映画音楽などにも向いています。

一方で、「なんとなく冷たい印象」「情報量は多いけれど、心に残りにくい」と感じる方も少なくありません。これは、録音やマスタリングの方向性、再生機器のキャラクターなど、さまざまな要素が関係してきます。

最近では、ストリーミングサービスも高音質化が進み、ハイレゾ相当の音源を楽しめるようになってきました。ELANでも、「家ではサブスクで曲を知り、ここではレコードやCDでじっくり聴き直す」というお客様が増えています。

どれが正解? “自分の耳”で決める楽しさ

「レコードとCD、どちらが原音に近いのか」という議論は、オーディオの世界では昔から続いています。しかし、ELANとしては「どちらにも魅力があり、どちらも”いい音”になり得る」と考えています。

ある夜、3人のお客様に同じジャズアルバムをレコードとCDで聴き比べてもらったことがあります。それぞれの感想は、「レコードのほうが音に”空気”を感じる」「CDのほうがベースの音程が聴き取りやすい」「どっちも良くて決められない」と、見事にバラバラでした。それでも3人とも共通していたのは、「聴き比べる時間そのものが楽しかった」ということです。

オーディオ初心者の方には、ぜひ「どれが正解か」よりも、「自分はどの音の質感が好きか」を探す感覚で、レコードもCDもデジタルも、肩の力を抜いて試してみてほしいと思っています。


ELANで”いい音”を体験するための楽しみ方

最後に、名古屋・熱田のライブ喫茶ELANならではの”いい音の楽しみ方”を、お店目線で少しだけご紹介します。もしこの記事を読んで、「ちょっと聴いてみたいな」と思っていただけたら、ぜひコーヒー1杯から気軽に遊びにいらしてください。

レコードリクエストと”思い出の一曲”

店内には、ジャズを中心にロックやポップス、映画音楽など、幅広いジャンルのレコードを取り揃えています。レコードは、リクエストをいただければレーザーターンテーブルや通常のプレーヤーで再生し、お客様の席でじっくりお楽しみいただけます。

あるお客様は、「父がよく聴いていたアルバムを、ここで初めてちゃんと通して聴きました」と話してくれました。「音がクリアなのももちろんですが、あのときの家の雰囲気まで思い出して、不思議と涙が出そうになりました」と笑いながら話される姿が、とても印象に残っています。

“いい音”とは、機械の性能だけでなく、「その人の記憶や感情と結びつく音」でもあるのだと感じさせられた瞬間でした。

ライブステージで感じる”生音”

ELANの店内には、オーナー自らが設計したライブステージがあり、グランドピアノやアコースティックドラムセットなど、本格的な生楽器によるライブを楽しむことができます。JBLの大型スピーカーやこだわりの音響設備によって、”うるさすぎないのに迫力がある”絶妙なバランスをめざしています。

とくにジャズのセッションでは、プレイヤー同士がアイコンタクトを交わしながら、その場で音楽を”会話”していく様子が、音としても空気としても伝わってきます。「CDで聴いていた同じ曲なのに、”今ここでしか聴けない音”として立ち上がる感じがして、鳥肌が立ちました」という感想をいただくことも少なくありません。

生音を体験すると、その後に家で聴くオーディオの音も、また違って聴こえてきます。「ライブで聴いたあのサックスの音に近づけるには、どんな音量で、どこにスピーカーを置こうかな」と、楽しみ方の視点が広がっていくはずです。

コーヒーと”音の余白”

ELANは「音楽とコーヒーを楽しむ隠れ家」として、音だけでなく、香りや空間の落ち着きも大事にしています。一杯ずつ丁寧に淹れたコーヒーを片手に、レコードやライブの余韻に浸る時間は、”いい音”をより深く味わうための大切な”余白”です。

音楽を聴くとき、人は耳だけでなく、目に入る光や、口に含んだ飲み物の味、椅子の座り心地など、さまざまな感覚を同時に受け取っています。「ここで飲むコーヒーは、家で同じ豆を淹れても、なぜか少し違う味に感じる」と話されるお客様もいらっしゃいますが、それはきっと”音”と”空間”が加わることで、味の感じ方が変わっているからかもしれません。

オーディオ初心者の方にとっても、難しいことを考える前に、「好きな一曲を、ゆっくりコーヒーを飲みながら聴いてみる」という時間を持つことが、”いい音”の入り口になると考えています。


これからオーディオを始めるあなたへ

もし今、スマートフォンのスピーカーや簡単なイヤホンで音楽を聴いていて、「もっといい音で聴いてみたい」と感じているなら、いきなり高価なセットをそろえる必要はありません。小さなアクティブスピーカー1台でも、置き方や音量、部屋との相性を意識するだけで、音楽の表情はぐっと豊かになります。

そして、もし機会があれば、名古屋・熱田のライブ喫茶ELANに足を運んでみてください。レコード棚の前で「この一枚、気になります」と声をかけていただければ、一緒に”あなたにとってのいい音”を探すお手伝いをさせていただきます。

 

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております