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2026年03月15日

エレキギターのピックアップとは?シングルコイルとハムバッカーの違いをライブ喫茶ELANで体感

「同じエレキギターなのに、プレイヤーや曲によってまったく違う音がする」。 名古屋・熱田区のライブ喫茶ELAN(エラン)でライブを聴いていると、その”音の違い”の大部分をつくっているのが、ピックアップという小さなパーツだと実感します。

エレキギターとピックアップ――ライブ喫茶ELANで毎晩起きていること

ライブ喫茶とは、昼間はコーヒーや軽食を楽しめる喫茶店として営業し、夜には店内のステージで生演奏が行われるお店のことです。

ELANも同じスタイルで、名古屋市熱田区外土居町の小さな店内で、レコードとライブ、そしてコーヒーを組み合わせた時間をお届けしています。

ステージにはグランドピアノとドラムセット、そしてエレキギター用のアンプが常設されています。

ジャズ、ブルース、ロック、ポップスなど、さまざまなギタリストがこのステージに立ちますが、同じアンプを使っていても、「太くて丸い音」「鋭く抜ける音」「ふんわり包み込むようなクリーントーン」など、ギターの音色は本当にさまざまです。

その”個性”の中心にあるのが、ピックアップです。 ピックアップとは、弦の振動を電気信号に変えるための部品で、エレキギターの心臓部と言われます。

アコースティックギターはボディの箱鳴りで音が大きくなりますが、エレキギターはピックアップが拾った信号をアンプで増幅してはじめて”エレキの音”になります。

ある夜、常連のギタリストさんが、シングルコイル搭載のストラトタイプと、ハムバッカー搭載のギターを2本持ってライブに来られました。 同じアンプ、同じ曲で弾き比べていただいたところ、前者は「キラッとした透明感のあるクリーン」、後者は「太くて粘りのあるオーバードライブ」と、まるで別のバンドのような印象に変わりました。

客席からは、「ギターを持ち替えた瞬間に、コーヒーの味まで変わったような気がした」という声も聞こえてきて、ピックアップの”空気を変える力”を改めて感じました。

ELANは、こうした「音の違いの理由」を、専門家だけのものにせず、音楽を楽しむすべての方と共有できる場所でありたいと考えています。

ピックアップが音を変える仕組み――弦の振動を”どう電気にするか”

ピックアップで音が変わる理由を理解するには、まずその仕組みをざっくりと押さえる必要があります。 難しい話に聞こえるかもしれませんが、コーヒーをドリップするときの「豆とお湯とフィルター」の役割分担をイメージすると、すっと入ってきやすくなります。

ピックアップとは何か

ピックアップは、「弦の振動を電気信号に変える装置」です。

中には磁石とコイル(細い銅線をぐるぐる巻いたもの)が入っていて、金属弦が磁界の中で振動するときに生じる電磁誘導によって、電気信号が生まれます。

仕組みを3ステップで見ると、こうなります。

磁石とコイルがピックアップの中にセットされる

金属弦がその磁石の上で震える

磁界の変化がコイルに電気を発生させる → これが”音の元”の信号になる

この「電気信号」がアンプに送られ、増幅・着色されて、スピーカーから音として出てきます。

つまり、ピックアップは「どんな成分の振動を、どれくらいの強さでアンプに渡すか」を決める、入り口のフィルターのような存在といえます。

ある意味で、コーヒーにおける”豆”の役割に近いかもしれません。 同じドリップの仕方でも、豆が違えば香りも酸味もコクも変わるように、同じギターでもピックアップが違うと、音のキャラクターがガラリと変わります。

何が変わるのか

ピックアップが違うと、次のような要素が変化します。

出力の大きさ(音の”押し出し”)

明るさ・暗さ(高音がよく出るか、落ち着いたか)

太さ・細さ(中低音の厚み)

歪ませたときのまとまり方(ロック向きか、クリーン向きか)

ノイズの出やすさ(ハムノイズが乗りやすいかどうか)

ELANでライブを聴いていると、同じコードストロークでも、「ジャラーン」と軽く弾いただけでピックアップの個性が伝わってきます。

あるギタリストは、「この曲は優しく包みたいからフロントのシングルで」「こっちはガツンと行きたいからリアのハムバッカーで」と、1曲の中でもピックアップを切り替えながら音色を作っていました。 その切り替えの瞬間、店内の空気感がスッと変わるのを、カウンターの内側から何度も見ています。

シングルコイルとハムバッカー――代表的な2種類のキャラクター

ピックアップの種類はたくさんありますが、エレキギターの音を語るうえで避けて通れないのが、「シングルコイル」と「ハムバッカー」という2つのタイプです。

シングルコイルピックアップ

シングルコイルは、その名のとおり「1つの磁石+1つのコイル」で構成された、最もシンプルな構造のピックアップです。

特徴としてよく挙げられるのは、次のような点です。

高音域がよく伸び、歯切れが良い

クリーン~軽い歪み(クランチ)でのニュアンスが出しやすい

カッティングやアルペジオが爽やかに響く

その代わり、電源ノイズなどのハムノイズを拾いやすい

ジャズ、ポップス、ファンク、カントリーなど、「一音一音の輪郭やアタック(音の立ち上がり)を大事にしたい」ジャンルでよく使われます。

ELANのライブでも、ストラトタイプやテレキャスタータイプのギターがステージに上がると、シングルコイル特有の”キラッとした”クリーンが店内に広がります。

たとえば、ボサノヴァのような柔らかい曲では、トーンを少し絞ったフロントのシングルコイルを使うことで、「丸くて温かいけれど、ちゃんと輪郭もある」音を出すことができます。 その音に、深めに入れたコーヒーの香りが重なると、時間の流れまで少しゆっくりになったように感じます。

ハムバッカーピックアップ

ハムバッカーは、「2つのコイルを組み合わせた構造」を持つピックアップです。

2つのコイルを逆向きに巻くことで、ハムノイズ(50/60Hzの電源ノイズ)を打ち消す(バッキングする)仕組みになっているため、この名前がついています。

特徴としては、次のような点が挙げられます。

出力が大きく、太くて力強いサウンド

中低音がしっかり出て、ハイゲイン(強い歪み)との相性が良い

ノイズに強く、歪ませても音がまとまりやすい

シングルに比べて高音はややマイルドになりやすい

ロックやハードロック、メタル、フュージョンなど、「歪ませて迫力を出したい」スタイルには欠かせません。

ELANでも、ハムバッカー搭載のギターがジャズロックやブルースロックを演奏するとき、客席の空気圧が少し上がったような感覚が生まれます。

ある夜、ハムバッカー搭載のセミアコースティックギターでジャズバラードを演奏したギタリストがいました。 シングルコイルよりも少し太く、丸い音でメロディを弾くそのスタイルに、お客様からは「コーヒーのミルク多めみたいな音ですね」という素敵なたとえが返ってきました。 ピックアップひとつで、同じ曲が「ブラックコーヒー」にも「カフェオレ」にもなる――ELANでは、そんな会話が当たり前のように交わされています。

ピックアップの”位置”とアンプとの”相性”――なぜさらに音が変わるのか

ピックアップが音を変える要素は、「種類」だけではありません。 同じ種類のピックアップでも、「どこに付いているか」と「どのアンプで鳴らすか」によって、聴こえ方は大きく変わります。

フロント/センター/リア――弦のどの部分を拾うか

多くのエレキギターには、ピックアップが2つまたは3つ搭載されています。 ネック寄りにあるものを「フロント」、真ん中を「センター」、ブリッジ寄りを「リア」と呼びます。

弦は、真ん中に近いほど振れ幅が大きく、端に近いほど振れ幅が小さくなります。 そのため、ピックアップの位置によって拾える成分が変わり、次のような傾向が生まれます。

フロント(ネック側):

弦の振れ幅が大きい位置 → 低音を多く含んだ、太く柔らかい音

ジャズやバラード、アルペジオなどに向いた「甘いトーン」

センター:

フロントとリアの中間的なキャラクター

カッティングなどで、バランス良く抜ける音

リア(ブリッジ側):

弦の振れ幅が小さい位置 → 高音成分が強く、明るく歯切れの良い音

ロックのリフやソロ、カッティングなど、”前に出したい”場面に向いた「エッジのあるトーン」

ELANのライブでよくあるのが、「1コーラス目はフロントでやわらかく、2コーラス目からリアに切り替えて一気にテンションを上げる」という構成です。

ピックアップセレクターをカチッと切り替えた瞬間、音の抜けが変わり、客席の集中度も少し前に寄る――その変化を、ステージと客席の真ん中あたりで感じられるのが、ライブ喫茶の面白さでもあります。

ピックアップとアンプの”相性”

ピックアップから出てくる電気信号は、まだとても小さく、素朴な”音の材料”に過ぎません。 その信号をどのように増幅し、どんな味付けをしてスピーカーから出すかを決めるのが、アンプです。

ELANでは、真空管アンプを中心に、クリーンが得意なアンプ、歪みが得意なアンプなどをライブの内容に合わせて使い分けています。

同じシングルコイルでも、クリーン重視のアンプに繋げば「透明感のあるクリーン」に、歪みやすいアンプに繋げば「ジャキッとしたロックトーン」になります。

ハムバッカーの場合も、アンプのキャラクターによって、「ジャズ寄りの太くて丸い音」にも、「ハードロック向きの厚くて攻撃的な音」にもなります。

ある常連ギタリストは、同じハムバッカー搭載のギターで、ジャズの日とロックの日にアンプだけを変えて演奏されました。 ジャズの日はクリーン重視のアンプで、トーンを少し絞ったウォームなサウンド。 ロックの日はゲインの高いアンプで、同じピックアップから「別人のような」サウンドを引き出していました。 その違いを、いつもと同じエランブレンドコーヒーを飲みながら聴いていたお客様が、「同じ豆でも淹れ方で味が変わるのと一緒ですね」と話されていたのが印象的でした。

初心者の方へ――ピックアップの違いをELANで気楽に体験してみませんか

「シングルとハム、どちらがいいのか」「ピックアップの種類が多すぎてよく分からない」。 そんな声もよく聞きますが、ライブ喫茶ELANとしては、次のような”気楽な入口”をおすすめしています。

まずは、「自分が好きな音」をいくつか思い浮かべる

透き通ったクリーンが好き → シングルコイルを聴いてみる

太くて歪んだロックサウンドが好き → ハムバッカーを聴いてみる

ELANのライブで、ギタリストがどのポジションを使っているか、そっと観察してみる

甘い音 → フロント

歯切れの良いカッティング → センター or リア

ガツンとしたソロ → リア+ハムバッカー

終演後、ギタリストやお店に「今日のギター、どんなピックアップなんですか?」と聞いてみる

ELANでは、ライブ後にギタリストとお客様がカウンターでコーヒーを飲みながら、機材の話で盛り上がる光景がよく見られます。

「この曲はフロントのシングルで弾いていました」「こっちはハムバッカーに切り替えて、トーンを少し絞っています」など、現場ならではの具体的な話を聞けるのも、ライブ喫茶の大きな魅力です。

名古屋・熱田区という土地柄、仕事帰りにふらっと寄って音楽とコーヒーを楽しむ方も多く、「今日は音作りの勉強をしに来ました」と言って、じっとステージの手元を見つめているお客様もいらっしゃいます。

そうした時間を通じて、「あの音が好きだから、自分はシングル寄りだな」「自分はハムの太さが落ち着く」といった”耳の好み”が少しずつ育っていきます。

ライブ喫茶ELANは、「音楽とコーヒーが人生を豊かにする場所」として、今日もギターのピックアップから生まれる音の違いを、さりげなく空間の中に溶かし込んでいます。

もし今、「ピックアップで音がどう変わるのか、自分の耳で確かめてみたい」「コーヒーを飲みながら、エレキギターの音作りの世界を覗いてみたい」と感じてくださったなら。 一度、名古屋・熱田区のライブ喫茶ELANに遊びに来てください。

小さなステージの上で、シングルコイルもハムバッカーも、その日の天気やお客様の気分に合わせて音色を変えながら鳴り続けています。 その音と一杯のコーヒーが、きっと「エレキギターって面白い」「いつか自分でも弾いてみたい」と思っていただけるきっかけになれば、とても嬉しく思います。