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2025年10月14日

ギターピックの形と厚みが音に与える影響 – ライブ喫茶ELANオーナーが語る音作りの秘密

名古屋のライブ喫茶ELANで日々様々なミュージシャンの演奏を聴いていると、同じギターでも奏者によって驚くほど音色が変わることに気づきます。その違いを生み出す要因の一つが、実はギターピックなのです。

当店では開店以来15年間、数多くのギタリストが演奏してきました。プロからアマチュアまで、それぞれが自分なりのピック選びにこだわりを持っています。今回は、そんな経験から見えてきたピックの形と厚みが音に与える影響について、詳しくお話しします。

ピックの厚みが音色に与える決定的な影響

薄いピック(0.5mm以下)の特徴

薄いピックは、まるで羽根のようにしなやかです。弦に当たった瞬間、ピック自体が曲がることで、攻撃的でない優しい音色を生み出します。

当店でよく見かける薄いピックの代表例が、フェンダーの「ミディアム」と呼ばれる0.73mmのピックです。実際にお客様のギタリストAさんは、「ストロークプレイには欠かせない」と話していました。Aさんは主にフォークソングを演奏されるのですが、薄いピックで奏でるコードストロークは、まるで風が草原を撫でるような自然な響きを持っています。

薄いピックの音響的特徴は次の通りです:

  • 高音域が強調されがちで、キラキラとした音色
  • アタック音(弦を弾いた瞬間の音)が柔らかい
  • ストロークプレイで威力を発揮
  • ピック自体のしなりにより、弦への負担が軽減される

ただし、薄いピックにも弱点があります。単音弾きや速いフレーズでは、ピックがしなりすぎて正確性に欠ける場合があるのです。

中厚ピック(0.7mm-1.0mm)のバランス感

中厚ピックは、まさに万能選手と呼ぶべき存在です。当店のハウスギターに常備しているのも、この厚さのピックが中心です。

先日、ジャズギタリストのBさんが「中厚ピックこそ、ギターの本来の音を引き出してくれる」と語っていました。Bさんは0.88mmのピックを愛用されており、そのバランスの良さを実感されているようです。

中厚ピックの特徴:

  • 低音から高音まで均等に響く
  • ストロークと単音弾きの両方に対応
  • 適度なアタック感で表現力豊か
  • 初心者から上級者まで幅広く使用可能

実際に当店で演奏を聴いていると、中厚ピックを使うギタリストは演奏ジャンルを問わず安定した音色を保っています。ロックからジャズ、ポップスまで、どんな楽曲にも自然に馴染む音色が魅力です。

厚いピック(1.0mm以上)のパワフルさ

厚いピックは、ギターサウンドに力強さと存在感をもたらします。当店でハードロックやメタルを演奏するギタリストのほとんどが、1.0mm以上のピックを選択しています。

常連のCさんは1.5mmの分厚いピックを愛用されており、「ピックが弦に負けない。だから思い通りの音が出せる」と説明してくれました。Cさんの演奏を聴いていると、確かに一音一音に重量感があり、会場全体に響く迫力があります。

厚いピックの音響特性:

  • 低音域が豊かで重厚な音色
  • アタック音が明確でパンチがある
  • 単音弾きでの正確性が高い
  • ピッキングハーモニクスが出しやすい

ただし、厚いピックは扱いにコツが要ります。力を入れすぎると音が硬くなりすぎるため、微妙な力加減が求められるのです。

ピックの形状による音色変化の仕組み

ティアドロップ型の特徴と音響効果

ティアドロップ型は、水滴の形を模したピックで、最も一般的な形状の一つです。先端が細く、持ち手部分が丸みを帯びているのが特徴です。

当店で長年観察していると、ティアドロップ型を使うギタリストは実に多様な音色を生み出しています。この形状の秘密は、その先端の細さにあります。

細い先端部分で弦を弾くことで:

  • 弦との接触面積が小さくなる
  • 結果として明瞭で輪郭のはっきりした音が得られる
  • 高音域の抜けが良くなる
  • 速いフレーズでの応答性が向上する

実際に、ジャズギタリストのDさんは「ティアドロップの先端部分だけでピッキングすることで、メロディラインが際立つ」と話されていました。Dさんの演奏では、複雑なコードの中でもメロディが明確に聞き取れるのが印象的です。

ジャズ型ピックの独特な響き

ジャズ型ピックは、ティアドロップ型よりもさらに先端が尖っており、全体的に小さな形状をしています。まさにジャズギタリストのために開発された特殊な形状と言えるでしょう。

当店でジャズセッションが行われる際、参加ミュージシャンの多くがこの形状を選択しています。その理由は、ジャズ特有の奏法にあります。

ジャズ型ピックの音響的メリット:

  • 極めて正確なピッキングが可能
  • 弦との接触時間が短縮され、クリアな音質
  • 複雑なコード進行での音の分離が良好
  • サムピッキング(親指側でのピッキング)がしやすい

常連のジャズギタリストEさんは「ジャズ型でないと、速いビバップフレーズが弾けない」と断言されています。確かにEさんの演奏を聴いていると、一音一音が粒立って聞こえ、複雑なハーモニーも明確に理解できます。

オニギリ型(トライアングル型)の安定感

正三角形に近い形状のオニギリ型ピックは、三つの角すべてを使用できる実用的な設計です。一つの角が摩耗しても、他の角を使い続けることができるため、経済的でもあります。

当店のハウスギターに常備しているピックの一つがこの形状です。初心者のお客様にも扱いやすく、安定した演奏を提供してくれます。

オニギリ型の特徴:

  • 持ちやすく、演奏中にずれにくい
  • 三つの角度が異なる音色を提供
  • ストロークプレイで威力を発揮
  • 長持ちするため経済的

フォークギタリストのFさんは「オニギリ型の丸い角を使うと、優しいストローク音が得られる」と説明してくれました。実際にFさんの演奏では、弾き語りにぴったりの温かみのある音色が響いています。

材質による音色への影響

プラスチック系ピックの特性

現在最も一般的なピック材質がプラスチック系です。当店でも演奏者の8割以上がプラスチック製ピックを使用しています。

プラスチック系ピックの中でも、特に人気が高いのがセルロイド製です。1900年代初頭から使われている歴史ある素材で、多くの名ギタリストが愛用してきました。

セルロイドピックの音響特性:

  • バランスの良い音色
  • 適度な硬さで扱いやすい
  • 経年変化が少なく長持ち
  • カラーバリエーションが豊富

最近では、ナイロン製やデルリン製のピックも人気を集めています。ナイロン製は柔軟性があり、デルリン製は耐久性に優れているのが特徴です。

天然素材ピックの温かみ

一方で、天然素材のピックを愛用するギタリストも少なくありません。当店でも、べっ甲や木製ピックを使う演奏者を見かけます。

アコースティックギター専門のGさんは、べっ甲製ピックの愛用者です。「天然素材独特の温かみのある音色が、木のギターにぴったり」と語っています。確かにGさんの演奏は、まろやかで深みのある音色が印象的です。

天然素材ピックの特徴:

  • 独特の温かみのある音色
  • 経年変化により音質が向上する場合も
  • 環境に優しい素材
  • 希少性により価格が高め

木製ピックを使用するHさんは「木の種類によって音色が変わるのが面白い」と話されています。ローズウッド、エボニー、メイプルなど、それぞれ異なる音響特性を持っているのです。

実際の演奏シーンでのピック選択

ジャンル別最適ピック選択

当店で15年間様々なジャンルの演奏を聴いてきた経験から、ジャンルごとの傾向をお話しします。

ロック・ハードロック系の演奏者は、圧倒的に厚手のピックを選択する傾向があります。1.0mm以上の厚さで、ティアドロップ型かオニギリ型が主流です。パワフルなサウンドと正確なピッキングが求められるためです。

実際に当店で定期的にロックバンドの練習をしているIさんは、1.2mmのティアドロップ型を愛用されています。「厚いピックでないと、パワーコードの重厚感が出ない」というのがIさんの持論です。

ジャズ系では、先述したジャズ型ピックが圧倒的に人気です。厚さは0.8mm-1.2mm程度で、正確性と表現力のバランスを重視した選択が多く見られます。

フォーク・ポップス系では、中厚から薄手のピックが好まれます。0.5mm-0.8mm程度の厚さで、ストロークプレイのしやすさが重視されている印象です。

プロ演奏者のピック選択例

当店に出演していただいたプロギタリストの方々のピック選択も興味深いものがあります。

ジャズギタリストのJ氏は、複数の厚さのピックを使い分けています。バラード演奏時は薄手のピック、アップテンポな楽曲では厚手のピックというように、楽曲に応じた使い分けをされているのです。

「ピックは楽器の一部。音楽に応じて最適なものを選ぶのが当然」というJ氏の言葉が印象的でした。実際にJ氏の演奏では、楽曲ごとに明らかに異なる音色を聴くことができます。

ロックギタリストのK氏は、一貫して同じピックを使用されています。1.14mmの厚手ティアドロップ型で、「このピック以外では自分の音が出ない」と断言されるほどのこだわりをお持ちです。

ピック選びの実践的アドバイス

初心者向けピック選択指針

当店には多くのギター初心者の方が来店されます。そんな方々によくお伝えしているピック選びのポイントをご紹介します。

まずは中厚のティアドロップ型から始めることをおすすめしています。0.7mm-0.8mm程度の厚さで、プラスチック製のものが扱いやすいでしょう。この組み合わせなら、ストロークも単音弾きもある程度こなせます。

初心者の方によくある失敗が、いきなり極端な厚さのピックを選んでしまうことです。薄すぎると正確な演奏が困難になり、厚すぎると表現力に制限が生まれてしまいます。

当店で初心者向けレッスンを行っているL先生は「まずは標準的なピックで基礎を身につけることが大切」と指導されています。基礎ができてから、自分の演奏スタイルに合わせてピックを選択していけば良いのです。

上級者のピックカスタマイズ

一方で、上級者の中にはピックをカスタマイズする方もいらっしゃいます。当店の常連Mさんは、市販のピックを自分でヤスリで削って理想の形状を作り出しています。

「市販品では満足できない細かなニュアンスがある」というMさんの追求心には頭が下がります。実際にMさんの演奏は、他では聞けない独特の音色を持っています。

ピックカスタマイズの例:

  • 先端の角度調整
  • 厚さの部分的変更
  • 表面のテクスチャー加工
  • 握り部分の形状修正

ただし、これは相当な経験と技術が必要です。初心者や中級者の方は、まず市販品の中から最適なものを見つけることに集中することをお勧めします。

音響設備との相互作用

アンプとピックの関係性

当店では様々なギターアンプを設置していますが、同じピックでもアンプによって音色が大きく変わることを日々実感しています。

真空管アンプでは、厚手のピックの低音域の豊かさがより強調される傾向があります。一方、ソリッドステートアンプでは、薄手のピックの高音域のクリアさが際立ちます。

常連のNさんは「アンプとピックの組み合わせこそが音作りの要」と語っています。Nさんは会場のアンプに応じてピックを変更されており、その音作りへの執念には感服します。

レコーディングにおけるピック選択

当店のスタジオでレコーディングを行う際も、ピック選択は重要な要素となります。マイクの種類や録音環境によって、最適なピックが変わってくるのです。

レコーディングエンジニアのO氏によると「ピックの材質や厚さの違いは、録音では特に明確に現れる」とのことです。実際のレコーディングセッションでは、複数のピックで試奏を行い、最適なものを選択する過程が不可欠です。

まとめ:音楽表現を豊かにするピック選択

ライブ喫茶ELANで15年間多くのギタリストを見てきた経験から言えることは、ピック選択は決して軽視できない要素だということです。

厚さと形状、そして材質の組み合わせによって、同じギターでも全く異なる音色を生み出すことができます。薄いピックの優しい響き、厚いピックの力強さ、ティアドロップ型の明瞭さ、オニギリ型の安定感、それぞれに独特の魅力があります。

大切なのは、自分の演奏スタイルと音楽ジャンルに最適なピックを見つけることです。そのためには実際に様々なピックを試奏し、耳で違いを確認することが何より重要でしょう。

当店では今後も、ギタリストの皆さんの音作りをサポートしていきたいと考えています。ピック選びでお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。豊富な種類のピックを用意して、皆様のお越しをお待ちしております。

音楽とコーヒーを楽しみながら、理想的なギターサウンドを追求する時間を、ライブ喫茶ELANで過ごしてみませんか。

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております