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2025年09月23日

ピアノは弦楽器?打楽器?その分類の不思議 – 名古屋ライブ喫茶ELANからの音楽談話

こんにちは、名古屋の音楽とコーヒーを楽しむ隠れ家、ライブ喫茶ELANです。

当店では、往年の名曲を収めたレコードが所狭しと並ぶ落ち着いた店内で、お客様に音楽とコーヒーのひとときをお楽しみいただいております。今日は、お客様からよくいただく音楽に関するご質問の中でも特に興味深い話題をお届けします。

先日、ジャズピアノのレコードを聴きながらコーヒーを楽しまれていたお客様から「ピアノって弦楽器なんですか、それとも打楽器なんですか」というご質問をいただきました。実は、この疑問は音楽愛好家の間でもよく議論される、とても面白いテーマなのです。

ピアノの音が生まれる仕組みとは

まず、ピアノがどのように音を出すのかを理解することが、この分類の謎を解く鍵となります。

ピアノの内部を覗いてみると、金属製の弦が張られているのがわかります。鍵盤を押すと、その鍵盤に連動したハンマーと呼ばれる部品が弦を叩きます。このハンマーで弦を打つことによって、弦が振動して美しい音色が生まれるのです。

当店でも、お客様にピアノの構造について説明する際は、よくこんな例えをお話しします。「まるで小さな大工さんが、弦という材料を精密なハンマーで叩いて、音楽という芸術作品を作り上げているようなものですね」と。

グランドピアノの場合、この弦の長さは低音域では約2メートルにもなります。高音域の弦は短く、低音域の弦は長くなっており、これが音の高低を決定しているのです。アップライトピアノでも同様の構造ですが、弦が縦に配置されているため、より省スペースでの設置が可能になっています。

この音の発生メカニズムを理解すると、ピアノの分類がなぜ複雑なのかが見えてきます。弦が音の源でありながら、その弦を振動させるのは打撃による力だからです。

弦楽器としてのピアノの側面

音楽学的な観点から見ると、ピアノは確実に弦楽器の要素を持っています。音の発生源が弦の振動であることは、バイオリンやギターなどの典型的な弦楽器と共通しているからです。

当店にいらっしゃるクラシック音楽愛好家のお客様とお話していると、よく「ピアノ協奏曲では、ピアノがオーケストラの弦楽セクションと美しく調和しますね」というお声をいただきます。これは、ピアノが本質的に弦楽器としての性質を持っているからこその現象でしょう。

楽器分類学において、弦楽器は「コルドフォン」と呼ばれるカテゴリーに属します。これは、弦の張力と振動によって音を生み出す楽器全般を指す専門用語です。ピアノは間違いなく、この定義に当てはまります。

また、ピアノの音色の豊かさも弦楽器としての特徴を物語っています。一本一本の弦が異なる太さと長さを持ち、それぞれが独特の倍音を生み出すことで、あの複雑で美しい音色が生まれるのです。

実際に、ピアノの調律師の方々は弦楽器の専門家として扱われることが多く、弦の張力調整や交換作業を通じて楽器を維持されています。これらの事実からも、ピアノが弦楽器として認識されている側面がよくわかります。

打楽器としてのピアノの特徴

一方で、ピアノが打楽器としての性質を強く持っていることも否定できません。鍵盤を押すという動作が、直接的にハンマーによる打撃につながるからです。

当店でジャズピアノの演奏を聴いていると、奏者の方が鍵盤を力強く叩く音が印象的です。この「叩く」という動作こそが、ピアノが打楽器的である証拠といえるでしょう。実際、ジャズやポピュラー音楽の分野では、ピアノはリズム楽器としての役割も担うことが多いのです。

打楽器の定義を考えてみると、「物体を打撃することで音を発生させる楽器」となります。ドラムやティンパニ、木琴などが代表的な打楽器ですが、これらはすべて何かを叩くことで音を出します。ピアノも、ハンマーが弦を叩くという点で、この定義に完全に合致しています。

特に興味深いのは、ピアノの演奏技術における「アタック」という概念です。これは、鍵盤を押す速度や力加減によって音の立ち上がりをコントロールする技術で、まさに打楽器的なアプローチといえます。バイオリンのように弓で弦を擦る楽器では、このようなアタックの概念は存在しません。

また、ピアノには「ダンパー」という装置があり、鍵盤を離すと弦の振動を止める仕組みになっています。これも打楽器的な特徴で、音の持続時間をコントロールする点で他の弦楽器とは大きく異なります。

音楽教育現場での分類の実際

音楽教育の現場では、ピアノの分類について興味深い状況が見られます。

小学校や中学校の音楽の授業では、楽器を「弦楽器」「管楽器」「打楽器」の三つに大別して教えることが一般的です。この際、ピアノは多くの場合「鍵盤楽器」という独立したカテゴリーで扱われることが多いようです。

当店にいらっしゃる音楽教師の方からお聞きした話では、「子どもたちにピアノの分類を説明するときは、まず音の出る仕組みを実際に見せることから始める」とのことでした。グランドピアノの蓋を開けて、鍵盤を押したときにハンマーが動く様子を見せると、子どもたちは「打楽器だ!」と驚くそうです。

しかし、その後で弦を指で弾いてみると、今度は「弦楽器でもある」ということに気づくのだとか。このような体験を通じて、楽器分類の複雑さと面白さを学んでいくのです。

音楽大学などの高等教育機関では、より専門的な分類が用いられます。楽器学という学問分野では、ピアノは「弦鳴楽器」の「打弦楽器」というカテゴリーに分類されることが多いようです。これは、弦を打つことで音を出す楽器という意味で、ピアノの特徴を最も正確に表現した分類といえるでしょう。

世界各国での楽器分類の違い

楽器の分類方法は、文化や国によって異なるアプローチが取られることも興味深い点です。

西洋音楽の伝統では、オーケストラでの役割に基づいた分類が一般的です。ピアノは通常、オーケストラでは独奏楽器として扱われるため、弦楽器セクションには属さない特別な位置にあります。

一方、ドイツの音楽学者ホルンボステルとザックスが提唱した分類法では、音の発生原理に基づいてより科学的に楽器を分類します。この分類法によると、ピアノは「コルドフォン」(弦鳴楽器)の「複合コルドフォン」に属し、さらに細分化すると「ピアノ・チター」というカテゴリーになります。

当店でクラシック音楽について語り合うお客様の中には、ヨーロッパ各国の音楽院で学ばれた方もいらっしゃいます。そのような方々からお聞きする話では、フランスの音楽院ではピアノを「楽器の王様」と呼び、特別な地位を与えているそうです。これは、ピアノが持つ多様性と表現力の豊かさを認めた分類といえるでしょう。

中国や日本などの東アジアでは、伝統的な楽器分類に西洋の概念を取り入れながら、独自の視点で楽器を捉える傾向があります。特に、楽器の材質や製作方法を重視した分類が特徴的です。

現代における新しい楽器観

21世紀に入り、楽器に対する考え方も大きく変化しています。特に、電子楽器やデジタル技術の発達により、従来の楽器分類では対応しきれない新しい楽器が次々と生まれています。

電子ピアノやシンセサイザーの普及により、「鍵盤楽器」というカテゴリーの重要性が増してきました。これらの楽器は、物理的な弦や打撃機構を持たないため、従来の分類法では説明が困難です。

当店でも、時代とともに音楽の楽しみ方が変化していることを実感しています。若いお客様の中には、アコースティックピアノと電子ピアノの違いよりも、音楽そのものの美しさや感動を重視される方が多いようです。

現代の音楽教育では、楽器分類よりも「音楽を通じた表現」や「音楽によるコミュニケーション」に重点が置かれる傾向があります。これは、技術的な分類よりも、音楽の本質的な価値を重視する流れといえるでしょう。

また、ワールドミュージックの普及により、西洋音楽の枠組みを超えた楽器への関心も高まっています。インドのタブラ、アフリカのジャンベ、南米のカホンなど、様々な文化圏の楽器が紹介されることで、楽器分類の多様性がより明確になってきました。

ライブ喫茶ELANでの音楽体験と楽器への想い

当店ライブ喫茶ELANでは、様々な楽器の演奏を通じて、お客様に音楽の素晴らしさをお伝えしています。

グランドピアノを中心とした演奏では、その楽器が持つ二面性を肌で感じていただけます。繊細なバラードでは弦楽器としての美しい響きを、力強いジャズナンバーでは打楽器としてのリズミカルな魅力を体験できるのです。

お客様からは「同じピアノでも、演奏する楽曲によって全く違う楽器に聞こえますね」というお声をよくいただきます。これこそが、ピアノの分類が複雑である理由を物語っているといえるでしょう。

当店の音楽ライブラリには、ピアノを中心とした様々なジャンルのレコードを取り揃えています。クラシックのピアノ協奏曲からジャズトリオ、ソロピアノまで、幅広いレパートリーを通じて、ピアノという楽器の多面性を感じていただけます。

音楽とコーヒーを楽しみながら、楽器について語り合う時間は、当店が最も大切にしている価値の一つです。お客様同士の音楽談義から生まれる新しい発見や気づきは、音楽の持つコミュニケーション力の証明でもあります。

まとめ:楽器分類を超えた音楽の本質

ピアノが弦楽器なのか打楽器なのかという問いには、実は明確な答えは存在しません。それは、ピアノという楽器が持つ豊かさと複雑さの証でもあります。

音の発生メカニズムから考えれば弦楽器であり、演奏方法から考えれば打楽器でもある。このような二重性こそが、ピアノを「楽器の王様」と呼ばれる所以なのかもしれません。

大切なのは、分類にとらわれることなく、音楽そのものの美しさや感動を味わうことです。当店ライブ喫茶ELANでは、これからもお客様と一緒に、音楽の持つ無限の可能性を探求していきたいと思います。

名古屋にお越しの際は、ぜひ当店で音楽とコーヒーのひとときをお楽しみください。往年の名曲に囲まれた落ち着いた空間で、楽器について語り合いながら、音楽の新しい魅力を発見していただければ幸いです。

音楽には正解も不正解もありません。あるのは、それぞれの心に響く美しい調べだけです。ピアノの分類についての疑問も、音楽を深く愛するからこそ生まれる、素晴らしい探求心の表れなのです。

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

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定休日|月曜・第1&第3火曜日
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ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

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