NEWS

2026年02月01日

レコードの静電気対策、知っておきたいコツ ──ライブ喫茶ELANがお話しする「音の透明感」を守る方法

みなさんは、久しぶりにお気に入りのレコードをプレイヤーに乗せたとき「パチッ」という小さな音を聞いたことはありませんか? あるいは、針を落とした瞬間にホコリがくっついて「ザー」というノイズが混ざった経験がある方も多いはずです。 それらの原因の多くは、”静電気”です。

名古屋・熱田区のライブ喫茶ELANでは、日々たくさんのレコードを再生しています。お店の空気が乾燥する冬場になると、どうしても静電気によるトラブルが増えてしまうのです。この記事では、静電気の仕組みから、具体的な対策、そして当店で行っている工夫を、どなたでも実践できる形でご紹介します。


静電気がレコードに与える影響とは?

まずは静電気がなぜ発生しやすいのかを理解しておきましょう。 静電気とは、物体の表面に”電気の偏り”が生じている状態のことです。冬の乾燥した空気では、電気が逃げ場を失い、レコード盤の表面にどんどんたまっていきます。

レコードの場合、この静電気が次のようなトラブルを引き起こします。

  • ホコリを強く吸着する:静電気は微細なホコリを引き寄せ、音溝(レコードの凹凸部分)に入り込みます。その結果、再生中に「プチプチ」というノイズが発生します。
  • 針飛びやノイズの原因になる:帯電が強いと、カートリッジが拾う音信号にもわずかな干渉が起き、音像がにじむことがあります。
  • 音質の劣化:帯電したレコードは、静電気の放電によって「パチッ」というノイズを出すほか、繊細な高音域の再生に悪影響を与えることもあります。

ELANでも、冬の乾燥期にはお客様から「ノイズが気になる」とご相談いただくことがありました。しかし、いくつかの工夫を取り入れたことで、現在ではどの盤も驚くほど静かに、美しく鳴るようになっています。


水分量と室内環境を整える

もっとも基本的で効果的なのが「湿度管理」です。 静電気は乾燥した環境ほど溜まりやすく、湿度が40%を下回ると急激に発生しやすくなります。そこでELANでは、冬場には加湿器を複数台稼働させて50〜60%をキープするようにしています。

家庭でも簡単に実践できる方法があります。

  • 加湿器を設置する 音響機材を傷めない蒸気タイプや超音波タイプがおすすめです。音に影響を与えない静音設計のものを選びましょう。
  • 観葉植物を置く 自然に湿度を調整してくれるうえ、インテリアにも癒しをプラスしてくれます。
  • 部屋の換気を意識する 密閉した空間では静電気がこもりやすく乾燥も進むため、1日数回の換気で空気の循環を作ることが大切です。

お店では、演奏前にスタッフが必ず湿度計をチェックしています。ある日、いつものように計測器を見たら「湿度33%」という数字が出ていて驚きました。すぐに加湿器を強にしたところ、音の抜けが明らかに違ったのを覚えています。静電気対策は、湿度から始まります。


レコードクリーナーと導電ブラシを使いこなす

湿度管理の次に重要なのが「物理的なお手入れ」です。 静電気はレコードの再生や取り扱いのたびに発生するため、定期的な除電が欠かせません。

ELANで使用しているのは、導電性ファイバーを使ったカーボンブラシです。ブラシを盤面に軽く乗せながらターンテーブルを1〜2周させると、細かなホコリを取り除きながら静電気を逃がしてくれます。

また、液体タイプのレコードクリーナーも効果的です。静電気防止成分を含んだ専用クリーナーを使用することで、盤面がわずかに導電性の膜で守られ、ホコリが付きにくくなります。 ただし、家庭用洗剤やアルコールを使うのは厳禁です。成分によっては盤面を傷め、かえって音質を損なう原因になります。

ある常連のお客様が「古いレコードを濡れタオルで拭いたら音がこもった」と話されていました。盤の素材であるPVC(ポリ塩化ビニル)は薬品に弱いため、必ず専用クリーナーを使いましょう。


再生直前と直後のケアを習慣に

意外と見落とされがちなのが、「再生後」のケアです。 レコードを聴き終えたあと、盤面には再び静電気がたまっています。これをそのままジャケットにしまうと、ホコリが付きやすく、次に聴くときのノイズの原因になります。

そこでおすすめしたいのが、聴く前後のルーティンです。

  1. 再生前にカーボンブラシで表面を軽く払う。
  2. 再生後にももう一度ブラッシング。
  3. 専用の内袋(静電気防止タイプ)に収納する。

この3つを意識するだけで、レコードの寿命と音質が大きく変わります。ELANではスタッフ全員がこの手順を徹底しています。数千枚におよぶレコードを管理していても、ノイズが少なく保たれるのは、この「小さな習慣」のおかげです。

保管環境にも目を向ける──静電気は”しまい方”で差がつく

再生時のケアと同じくらい大切なのが、レコードの保管環境です。

レコードを長期間しまっておく場所が乾燥していたり、温度変化の激しい場所だったりすると、盤面に静電気がたまりやすくなります。直射日光の当たる窓際やエアコンの風が直接あたる棚は避け、室温と湿度が安定した場所を選びましょう。

また、レコード同士を密着させて縦に詰め込みすぎると、出し入れのたびに摩擦が生じ、それが帯電の原因になります。棚には適度なゆとりを持たせ、1枚ずつスムーズに取り出せる状態を保つのが理想です。

内袋についても見直してみてください。購入時に付属している紙製の内袋は、長く使ううちに繊維くずが音溝に入り込むことがあります。静電気防止加工が施されたポリエチレン製の内袋に交換するだけで、帯電とホコリの付着を同時に抑えることができます。

ELANでは、すべてのレコードを帯電防止内袋に入れ替えたうえで、棚の配置にも気を配っています。「保管も再生のうち」──そんな気持ちで日々レコードと向き合っています。


静電気防止グッズの活用──帯電そのものを減らす工夫

最近は、オーディオ愛好家の間で「帯電防止マット」や「イオナイザー(除電装置)」が注目されています。

  • 帯電防止ターンテーブルマット ラバーや導電性素材を使用しており、レコード盤とプレイヤー間の帯電を軽減します。
  • 静電気除去ガン(イオナイザー) 空気中のプラスイオン・マイナスイオンを放出し、盤面の電荷を中和します。特に乾燥のひどい冬場に効果抜群です。
  • 導電スタビライザー レコードの中心に置いて安定を保ちながら、帯電も抑える優れものです。

ELANでは、特に冬場のライブ前にイオナイザーを使用しています。一見地味な作業ですが、「あの一音の透明感が違う」とミュージシャンの方々からも好評です。オーディオ環境の細部に気を配ることが、最終的に”心地よい音空間”を作るのです。


レコードと人の関係──丁寧に扱うことが最高の防御

機材や環境以外にも、大事なポイントがあります。 それは「人の手」そのものです。人の体も静電気を帯びやすく、手が乾燥した状態でレコードに触れると静電気が移りやすくなります。ELANでは、スタッフがプレイヤーに盤を乗せる前に必ず手を軽く湿らせたり、導電手袋を着用したりしています。

また、「触れる」ときの意識も大切です。 レコードは指紋や皮脂でも音質が変わるほど繊細です。ジャケットから取り出す際は中央のラベル部分と縁だけを持つようにし、表面にはできるだけ触れないようにしましょう。

音楽と人との関係も、こうした小さな”気遣い”の積み重ねにあります。 ELANが大切にしているのは、ただ音を再生することではなく、「音を扱う所作」そのものの美しさです。アナログレコードの世界は、機械ではなく”心で触れる音楽”なのだと感じます。

ちなみに、服装も意外と見落としがちなポイントです。フリースやポリエステル素材の衣類は静電気を発生させやすく、そのままレコードに近づくだけで帯電してしまうことがあります。レコードを扱うときは、綿や麻など天然素材の服を選ぶだけでも効果があります。

ELANのスタッフの間では、冬場のレコード作業時に着る服についてちょっとした暗黙のルールができています。「今日はフリース着てきちゃったから、盤に触る前にエプロンに替えよう」なんて会話が交わされることも。小さなことですが、こうした意識の積み重ねが、一音一音の透明感につながっていると感じています。


まとめ──静電気対策は「音を愛する心」のあらわれ

静電気は目に見えない存在ですが、その影響は確かに音に現れます。湿度、手入れ、収納、そして扱い方。そのひとつひとつが重なって、ようやく透明な音が生まれます。

ELANでは、毎日レコードをかけながら、その一枚一枚に心を込めています。冬のある夜、常連の方が「今日の音、いつもよりクリアですね」と微笑まれたことがありました。 静電気対策は地味で手間がかかりますが、その小さな努力こそが”音に命を吹き込む瞬間”だと私たちは信じています。

お店でお出しする一杯のコーヒーと同じように、音も人も、丁寧に向き合うことで深い味わいが生まれる──。 みなさんもご自宅で、大切なレコードをいつまでも美しく響かせてください。

====================


Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております