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2026年02月02日

レコード針(カートリッジ)の違いで音はどう変わる?

名古屋・熱田区のライブ喫茶ELANです。今回は「レコード針(カートリッジ)の種類と音の違い」について、はじめての方にもわかりやすく、当店の実体験も交えながらお話していきます。


レコード針とカートリッジって何?まずは基本から

レコードの音は、盤そのものではなく「溝」と「針」のやりとりから生まれます。 黒い円盤に刻まれた細いらせん状の溝を、先端のとがった(スタイラス)がなぞり、その振動を電気信号に変えてアンプへ送り出します。

このとき重要なパーツが「カートリッジ」です。 カートリッジとは、針先から伝わってきた振動を電気信号に変える小さな発電機のような部品で、トーンアームの先端に取り付けられています。 構造は小さいですが、ここが変わるだけで音のキャラクターがガラリと変わるため、オーディオファンの間では「音の入り口」として特に重視されているパーツです。

カートリッジ周りの主な用語を、いったん整理しておきます。

  • 針(スタイラス):レコードの溝に直接触れる先端部分
  • カンチレバー:針先とカートリッジ本体をつなぐ細い棒
  • カートリッジ本体:振動を電気信号に変える「心臓部」
  • ヘッドシェル:カートリッジを取り付けてアームに固定する土台

たとえるなら、針が「レコードの声を拾うマイクの先端」、カンチレバーが「マイクスタンド」、カートリッジ本体が「マイクのカプセル部分」といったイメージです。

当店でも、この「入り口」の違いによって、同じ盤とは思えないほど雰囲気が変わるのを日々体感しています。 「昔よく聴いたあのアルバムが、こんなに情報量があったなんて」と驚かれるお客様も少なくありません。


MM型・MC型・セラミック型──方式で変わる音のキャラクター

カートリッジの音の違いを理解するうえで、まず押さえたいのが「発電方式」の違いです。 主なタイプとして、MM型、MC型、そしてセラミック型(ピエゾ型)があります。

MM型(ムービングマグネット)とは

MM型は「Moving Magnet」の略で、カンチレバーの根元に付けた小さな磁石(マグネット)が動くことで電気を起こす方式です。 コイルは本体側にしっかり巻けるので、出力電圧が大きく、一般的なアンプのPHONO入力にそのままつなげるのが大きなメリットです。

MM型の特徴としては、

  • 音量が取りやすく、扱いやすい
  • 比較的価格が手ごろなものが多い
  • 交換針が用意されているモデルが多く、維持しやすい

といった点が挙げられます。 音の傾向としては「元気で、ほどよく厚みがあり、ジャンルを問わず聴きやすい」タイプが多く、当店でもBGM再生用のカートリッジにはMM型を使うことがよくあります。

ある日の午後、常連のお客様が「家でプレーヤーを買ったけど、何を選べばいいかわからない」とご相談にいらっしゃいました。 そのときおすすめしたのもMM型で、「まずはここから始めてみて、物足りなさを感じたら次のステップへ」とお話ししました。 後日、「勧めてくれたMM型で十分幸せに聴けています」と笑顔で教えてくださり、こちらもほっとしたのを覚えています。

MC型(ムービングコイル)とは

MC型は「Moving Coil」の略で、針に直結したコイルが磁石の周りを動くことで電気を起こす方式です。 コイルを極限まで軽くできるため、細かな振動への追従性が高く、非常に繊細な情報まで拾えるのが特徴です。

一方で、コイルの巻き数を増やすのが難しいため出力電圧はMM型の1/10程度と低く、専用の昇圧トランスやMC対応のフォノイコライザーが必要になります。 この「機材のハードル」があるぶん、オーディオ的な楽しみとしては”沼”の入り口ともいえる存在です。

MC型の音のイメージとしては、

  • 解像度が高く、空気感や余韻まで聴き取りやすい
  • 音場の広がりや奥行きがよく出る
  • 静寂感が高く、クラシックやジャズのニュアンス表現に強い

といった傾向があります。 当店でも、夜のじっくり聴き込みたい時間帯にはMC型+高性能針の組み合わせに切り替え、ボーカルの息づかいやホールの残響まで感じていただけるようにしています。

セラミック型(ピエゾ型)とは

セラミック型は、圧電素子(押すと電気が出る性質を持つ素材)を使った方式で、かつてのポータブルプレーヤーや安価なコンポなどで多く採用されていました。 構造がシンプルでコストを抑えやすく、フォノ入力を持たない機器にも直接つなぎやすいという利点がある一方、音質面ではMM/MC型に比べるとレンジや繊細さでやや不利とされています。

ただ、レコードとの最初の出会いが子どものころの”おもちゃのプレーヤー”だった、というお客様も多く、「あの少し歪んだ、でもなぜか落ち着く音が懐かしい」とおっしゃる方もいらっしゃいます。 完璧なHi-Fiだけが正解ではなく、「記憶に刻まれた音」もまた、レコードの魅力なのだと思います。


針先の形状で変わる「輪郭」と「情報量」

カートリッジの方式と並んで、音の違いに直結するのが「針先の形状」です。 針がどのような形で溝に触れるかによって、拾える情報量、輪郭のくっきり感、歪みの出方が大きく変わります。

代表的な針先の種類はおおまかに以下の通りです。

  • 丸針(球状針)
  • 楕円針
  • ラインコンタクト針(シバタ針、ファインライン針など)

丸針:やわらかく、寛げる音

丸針は、先端がほぼ球状になっているもっともベーシックな形です。 溝の上部をなぞるイメージで接触するため、細かな情報よりも「大まかな流れ」を拾うのが得意です。

その結果として、

  • 角が取れた、やわらかい音になりやすい
  • ノイズや録音の粗があまり強調されない
  • 長時間聴いていても疲れにくい

という特徴があります。 古い録音や、やや状態の悪い盤をかける際にも、丸針のほうが「ちょうどよく曖昧にしてくれて心地よい」と感じる場面があります。

実際、当店でも昼下がりにBGMとしてレコードを流すときは、あえて丸針+MM型の組み合わせを選ぶことがあります。 「お客様同士の会話を邪魔しないけれど、耳を傾けるとちゃんと音楽がそこにいる」という距離感を作りやすいからです。

楕円針:情報量とキレのバランス型

楕円針は、丸針の先端を縦方向に少しつぶして楕円形にした形状で、溝の奥までより深く入り込み、細かな凹凸を高い精度で読み取れるようにしたものです。 その分、位相ひずみやピンチ効果(溝の曲率がきつい部分で起こる歪み)も軽減され、音がよりクリアに、輪郭もシャープになります。

楕円針の特徴は、

  • 高域の伸びがよく、シンバルの金属感などがよく出る
  • ボーカルの子音や弦楽器のアタックがくっきりする
  • 丸針に比べて解像度が上がり、情報量が増える

といった点です。 一方で、溝の情報をよく拾うぶん、盤の傷やプチプチノイズも目立ちやすくなります。

夜にジャズヴォーカルのリクエストをいただいたとき、「息づかいまで聴いてみたい」とおっしゃるお客様には、楕円針+MMまたはMC型の組み合わせでお聴かせしています。 同じ曲でも、丸針のときより「歌い手が一歩近づいてきた」ような感覚になると言われることが多いです。

ラインコンタクト針:音溝の情報を根こそぎ拾う

シバタ針やファインライン針などに代表されるラインコンタクト針は、針先の接触部分を線状に細く長くした高性能タイプです。 溝の奥深くまで、しかも広い範囲で接触するため、刻まれた情報をほぼ余さず拾うことができます。

その結果、

  • 非常に高い解像度とワイドレンジな再生
  • 空間表現や奥行き感が明瞭に出る
  • ハイレゾに迫るような情報量でアナログを楽しめる

といった、いわゆる”Hi-Fi志向”の音になります。 一方で、針先のセッティング(アーム高さや針圧、オーバーハングなど)にシビアで、レコードの状態が悪いと「情報を拾いすぎてしまう」側面もあります。

当店では、夜の後半や「今日はじっくりあのアルバムを聴きたい」という日など、音楽に真正面から向き合いたいタイミングでラインコンタクト針を使います。 初めてラインコンタクトの音を体験されたお客様が、「CDでもサブスクでも聴き慣れていたはずなのに、初めてこのアルバムの本当の姿を見た気がします」と感想をくださったことがあり、こちらも思わず胸が熱くなりました。


はじめての方におすすめの組み合わせと、ELANでの使い分け

ここまでの内容を踏まえると、「で、結局どれを選べばいいの?」という疑問が出てくると思います。 そこで、はじめてレコード針(カートリッジ)を選ぶ方に向けて、目的別のおすすめと、当店での実際の使い分けをご紹介します。

家でゆったりBGMとして楽しみたい方へ

  • 方式:MM型
  • 針先:丸針または標準的な楕円針

この組み合わせは、とにかく扱いやすく、設置も比較的容易で、コストも抑えやすいのが魅力です。 喫茶店のように、会話や読書の邪魔をせず、でもふと耳を傾けるとちゃんと音楽の表情が伝わってくる──そんな聴き方にはぴったりです。

実際、当店のお客様でも「仕事から帰ってきて、明るい時間にコーヒーを飲みながらBGMとして流したい」という方には、まずこの方向性をご提案しています。 「難しく考えすぎず、気に入ったカートリッジをひとつ決めて、まずはそれを使い込んでみる」のが、アナログとの付き合いを長く続けるコツだと感じています。

ジャズやロックを”音の迫力”で楽しみたい方へ

  • 方式:MM型またはMC型
  • 針先:楕円針

ドラムのアタックやベースラインのグルーヴ感、ギターの歪みなどをしっかり感じたい方には、楕円針がおすすめです。 角が少し立つぶん、音の輪郭がはっきりし、「ライブ感」が増して聴こえます。

当店でも、ロックやフュージョン系のリクエストをいただいたときは、楕円針のカートリッジに切り替えることがよくあります。 「同じアルバムでも、さっきまでのしっとりした音とは全然違いますね」と驚かれるお客様も多く、そのリアクションを見るのは店としても楽しい瞬間です。

空気感や余韻までじっくり味わいたい方へ

  • 方式:MC型
  • 針先:高性能楕円針〜ラインコンタクト針

クラシックの室内楽や、録音の良いジャズ、シンガーソングライターのしっとりしたボーカルなど、「静けさの中のニュアンス」を聴き取りたい方には、この組み合わせが真価を発揮します。 ただし、機材面のハードルやセッティングの難しさも上がるため、「レコード再生をとことん楽しみたい」という気持ちになったタイミングでステップアップするのがおすすめです。

当店では、閉店前の静かな時間帯に常連のお客様と一緒に「今日はこの一枚をじっくり聴きましょう」と決めて、MC型+ラインコンタクト針でフルアルバムを通して聴くことがあります。 曲が終わったあと、しばらく誰も言葉を発さず、ただ余韻だけが漂っている──そんな瞬間に立ち会えるのは、ライブ喫茶として何よりの喜びです。


まとめ:針を変えると、聴き慣れた1枚が”新しく”なる

レコード針(カートリッジ)は、小さな部品ですが、音楽の印象を大きく左右する重要な要素です。

  • MM型:扱いやすく、ジャンルを問わず楽しめる”標準選手”
  • MC型:繊細な情報まで拾い、空気感まで感じられる”本格派”
  • 丸針:やわらかく寛げる音でBGMにも最適
  • 楕円針:情報量とキレのバランスがよく、多くの方にとっての”次の一歩”
  • ラインコンタクト針:レコードのポテンシャルを極限まで引き出す”ハイエンド志向”

同じレコードでも、針やカートリッジを変えるだけで、「こんなフレーズが入っていたんだ」「ベースがこんなに動いていたんだ」と新しい発見が生まれます。 それはまるで、いつもの喫茶店の席を変えたら、同じ風景が少し違って見えた──そんな体験に少し似ています。

ライブ喫茶ELANでは、こだわりの音響設備とともに、こうしたカートリッジや針の違いも実際に体験していただけるよう、さまざまな組み合わせを日々試しながらご用意しています。 「自分の好みに合う音がわからない」「家のプレーヤーに合う針を相談したい」といったご質問も、お気軽にお声がけください。 コーヒーを片手に、レコード針の奥深い世界を一緒に楽しんでいただけたらうれしく思います。

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております