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2026年02月20日

音の”空間感”を作るステレオの仕組み

名古屋・本郷のライブ喫茶ELAN(エラン)では、珈琲の香りに包まれながら、クラシックロックやジャズの名盤をゆったりと楽しめます。常連のお客様から「ここの音は立体的に聴こえる」とよく言われます。実はその理由は、ELANが大切にしている”ステレオの空間感”にあります。

「ステレオ」という言葉は知っていても、「どうして左右のスピーカーから出る音が立体的に聴こえるの?」と疑問に思ったことはありませんか? この記事では、その”音の空間”を作り出す仕組みを、できるだけわかりやすくご紹介します。


ステレオとは何か? 〜音の広がりの基本〜

ステレオ(stereo)は、ギリシャ語の「立体的な(stereos)」が語源です。つまり、ステレオとは”立体的に音を配置する技術”のこと。

昔のラジオやTVの音は「モノラル(mono)」といって、1つのスピーカーからすべての音が出ていました。この場合、音の方向や距離感を感じにくく、「音が真ん中に固まっている」印象になります。

対してステレオでは、左右2つのスピーカーを使い、音を分けて鳴らします。例えば、ギターは左、ピアノは右、ボーカルは中央寄り──。この音の”配置”を人間の耳が自然に感じ取り、立体的な広がりや奥行きを認識するのです。

たとえば、ビートルズの録音を聴いていると、ジョンの歌声が真ん中やや右、ポールのベースが左、リバーブ(残響)が奥の方から包み込むように聴こえることがあります。これはステレオ録音の典型的な効果です。


耳が感じる「音の位置」と「空間」

私たちの耳は左右に離れてついていて、音がどちら側から来ているかを自然に判断できます。この能力を「定位感(ていいかん)」といいます。

音が右から届くと、右耳にわずかに早く、そして少し大きく届きます。このわずかな時間差(数ミリ秒)と音量差を脳が解析して、音の方向や距離を感知します。

ステレオスピーカーも同じ原理で、左右のチャンネルの作り方や音の反射のさせ方によって、音の”空間”を再現します。

ELANの店内では、スピーカーの配置に特にこだわっています。壁からの反射を計算して左右のバランスをとり、テーブル席のどこに座っても”真ん中”を感じられるようにスピーカーの角度を調整。さらに、店舗内の反響音を柔らかくするため、木材や布地の壁材を使用しています。

ある常連のお客様が「ここで聴くジャズは、ステージの真ん中にいるようだ」と話されていたことがあります。それは、ステレオ効果と店内の音響設計が見事に組み合わさっている証拠です。


「音の空間感」を演出する3つの要素

音が広がって聴こえる理由は、単に左右のスピーカーの配置だけではありません。実は、次の3つの要素が組み合わさって生まれるのです。

定位(どこから聴こえるか)

ボーカルや楽器の位置を明確に感じさせる要素です。例えば、ピアノが右側で鳴り、ベースが左で響くと、全体が自然に広がります。

奥行き(どれだけ遠くから聴こえるか)

録音時のマイク位置やリバーブ(残響)処理によって、手前や奥の距離感を出します。「教会で録った音が伸びやかに聴こえる」のはこの効果です。

空間の響き(音場)

壁の反射や部屋の形が影響します。ELANの店内は、レンガ調の壁と木の棚が自然な反響を作り出し、音が硬すぎず温かく聴こえるよう設計しています。


ELAN流・スピーカー配置の秘密

スピーカーというのは、置き方ひとつで”音の表情”がまるで変わります。ELANでは、長年オーディオを愛してきた店主が何度も微調整を重ね、理想の配置を見つけました。

スピーカーの距離はおよそ2.5メートルほど離して設置し、リスニングポイントはスピーカーと同じ距離で三角形を作るように配置。壁との距離は約60センチ空けて、低音のこもりを防いでいます。

この配置によって、左右の音がちょうど中央で混ざり合い、まるで”目の前で演奏している”ように感じられるのです。

ある日、若いカップルがレコードを聴きながら「まるで映画館みたい」とつぶやいてくれました。そんな瞬間に、私たちは「ああ、この空間を作ってよかった」と心から思います。


アナログレコードが持つ”音の奥行き”

ELANのもう一つのこだわりは、アナログレコードの再生です。デジタル音源にはない”温かみ”や”空気感”がそこにあります。

レコード再生では、針が盤の溝を読み取って信号に変える過程で、微妙な音の揺らぎが生まれます。これが人の耳に”自然な音”として届くのです。

また、アナログは左右のチャンネル分離が絶妙で、広がりの中にもまとまりがあります。特にジャズなどのライブ録音では、会場の臨場感が鮮やかに再現されるのが特徴です。

ELANでは、ビル・エヴァンスやマイルス・デイヴィスなど往年の名盤を数百枚以上取り揃えています。カウンター越しに「今日はしっとりした夜ですね」と言われると、自然とスピーカーから流す音も柔らかなトーンへと変わります。

レーザーターンテーブルという選択

ELANでは、レコード再生にレーザーターンテーブルを採用しています。通常のターンテーブルは針が盤面の溝に直接触れて音を読み取りますが、レーザー方式はその名のとおり、光で溝の形状を読み取ります。針が盤面に触れないため、レコード盤を傷つけることがなく、摩耗による音質の劣化もありません。

もうひとつの大きな特徴は、針では拾いきれなかった微細な音の情報まで再現できる点です。溝の中に刻まれたごく小さな凹凸──たとえば録音現場の空気の揺れや、演奏者が息を吸う気配のようなもの──までもが音として立ち上がります。常連のお客様からは「同じレコードなのに、聴こえてくる情報量がまるで違う」という声をいただくことがあります。

レーザーターンテーブルが描き出す音は、ステレオの空間感をより鮮明にします。左右の分離がくっきりとし、奥行きの階調も細やかになるため、スピーカーの間に広がる”見えないステージ”がいっそう立体的に感じられるのです。


家でも”空間感”を楽しむコツ

実は、ステレオの立体感はご自宅でも工夫次第で体験できます。

スピーカーの間隔を広すぎないようにし(目安は2〜3m)、リスニングポジションはスピーカーの中央に。壁との距離を確保して反射を防ぎ、高音と低音のバランスをイコライザーで微調整してみてください。

また、部屋の素材や家具の配置も音を左右します。カーテンやラグを敷くだけで反射音が柔らかくなり、より自然で落ち着いたサウンドになります。

ライブ演奏で味わう”本物の空間感”

ELANの店内にはオーナー自ら設計したライブステージがあり、ジャズセッションやクラシックのコンサート、フォークの弾き語りなど、さまざまなジャンルの演奏が定期的に行われています。グランドピアノが据えられたステージは、音の響きまで計算された空間です。

録音された音源をスピーカーで再現する”ステレオの空間感”と、生の楽器が目の前で鳴る”本物の空間感”。この二つを同じ場所で体験できるのがELANならではの魅力です。ライブを聴いた後にレコードへ切り替えると、ステレオ再生がいかに巧みに空間を描いているかを実感できますし、逆にレコードで予習してからライブに臨むと、演奏者の息づかいや楽器の鳴りの違いがより鮮やかに耳に飛び込んできます。

音響設備は録音やライブ配信にも対応しており、演奏する側にとっても理想的な環境が整っています。「聴く人」と「奏でる人」の両方が心地よく過ごせる──それがELANの目指す音の空間です。


音と珈琲、そして時間

音楽を楽しむ時間は、単に「聴く」だけでなく、「感じる」ことでもあります。ELANでは、音が空間を包み、人と人とを優しくつなぐような時間を届けたいと思っています。

「目を閉じると、まるでそこにステージがあるようだ」──そんな風に思っていただけたら、それが私たちにとって最高の褒め言葉です。

珈琲の深い香りとともに、今日もお客様の心に響く”音の一杯”をお届けしています。

時間帯で変わる”音の選び方”

ELANでは、時間帯やその日の空気感に合わせて流す音楽を変えています。朝の開店直後は、ボサノヴァや穏やかなピアノジャズで一日の始まりをやさしく迎えます。午後になるとリズムに少し弾みをつけ、ロックやソウルの名盤がカウンターに並ぶこともあります。夕暮れどきからは照明をやや落とし、バラードやブルースなど情感の深い楽曲へと移り変わっていきます。

同じスピーカー、同じ空間でも、選ぶレコードが変わると”聴こえ方”がまるで違うのは面白いところです。録音された時代やスタジオの特性によってステレオの広がり方には個性があり、それを肌で感じ取れるのもアナログ再生ならではの楽しみといえます。

「午前中と夜とでは、まるで違うお店みたい」と笑う常連のお客様もいらっしゃいます。同じ椅子に座りながら、時間とともに景色が変わるように音が移ろう──そんな体験をぜひ味わいにいらしてください。


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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております