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2025年10月28日
音楽用語「スウィング」とは?ジャズ喫茶で知っておきたい基礎知識
はじめに
当店ELANにご来店いただくお客様から、「スウィングってよく聞くけど、実際どういう意味なんですか?」というご質問をいただくことがあります。レコード棚に並ぶジャズの名盤を眺めながら、この言葉の意味を知りたいと思われる方は少なくありません。
スウィングという言葉は、音楽の世界、特にジャズにおいて非常に重要な概念です。当店で流れる往年の名曲を聴きながら、このスウィングという言葉の持つ意味を理解していただくことで、音楽の楽しみ方がさらに深まるはずです。
今回は、ライブ喫茶を営む私たちの視点から、スウィングという言葉が持つさまざまな意味について、できるだけわかりやすくご説明していきたいと思います。コーヒーを片手に、ゆったりとお読みいただければ幸いです。
スウィングの基本的な意味
スウィング(Swing)という英単語は、もともと「揺れる」「振る」という意味を持っています。公園のブランコを思い浮かべていただくとわかりやすいでしょう。英語でブランコのことを「swing」と呼びますが、まさにあの前後に揺れる動きがスウィングの原義です。
音楽の世界でこの言葉が使われるとき、主に三つの意味があります。一つ目は音楽ジャンルとしての「スウィング・ジャズ」、二つ目はリズムの特徴を表す「スウィング感」、そして三つ目は演奏スタイルや雰囲気を指す場合です。
当店のレコード棚を見ていただくと、1930年代から40年代にかけてのビッグバンド・ジャズのアルバムが数多く並んでいます。これらの多くがスウィング・ジャズと呼ばれるジャンルに属しており、ベニー・グッドマン、カウント・ベイシー、デューク・エリントンといった巨匠たちの名演奏が収められています。
お客様が店内でくつろがれているとき、足を自然とリズムに合わせて揺らしたり、体を軽く動かしたりすることがあるかもしれません。それこそがスウィングの持つ魔力なのです。音楽が持つ独特のリズムが、聴く人の体を自然と動かしてしまう。この感覚こそが、スウィングという言葉の核心に触れる体験だと言えるでしょう。
スウィング・ジャズという音楽ジャンル
スウィング・ジャズは、1930年代から1940年代にかけてアメリカで大流行した音楽ジャンルです。この時代は「スウィング時代」とも呼ばれ、ジャズが最も大衆的な人気を誇った黄金期でした。
当時のアメリカでは、大規模なダンスホールでビッグバンドによる演奏が行われ、人々はそのリズムに合わせて踊りました。10人から20人程度の大編成のバンドが奏でる華やかなサウンドは、経済的に困難な時代を生きる人々に活力と希望を与えたのです。
当店でも、閉店後にスタッフだけで残ってこの時代の音楽を大音量で流すことがあります。すると不思議なことに、疲れていた体が軽くなり、自然と体が揺れ始めるのです。これがスウィング・ジャズの持つエネルギーなのだと、私たちは実感しています。
スウィング・ジャズの特徴は、まず編成の大きさにあります。トランペット、トロンボーン、サックスなどの管楽器セクションに、ピアノ、ベース、ドラムのリズムセクションが加わり、厚みのある豊かなサウンドを生み出します。また、アレンジ(編曲)が重要な役割を果たし、各楽器が計算された役割を担いながら全体として一つの音楽を作り上げていきます。
ある常連のお客様は、「スウィング・ジャズを聴くと、当時のダンスホールの華やかな雰囲気が目に浮かぶようだ」とおっしゃっていました。まさにその通りで、この音楽には時代の空気感が刻み込まれているのです。
スウィング感というリズムの秘密
スウィングという言葉が音楽用語として使われるとき、最も重要なのが「スウィング感」という概念です。これは音楽のリズムに関わる独特の感覚を指しています。
通常、音楽のリズムは楽譜に書かれた音符の長さ通りに演奏されます。しかし、ジャズにおけるスウィング感では、楽譜上は同じ長さの音符であっても、実際には微妙に演奏のタイミングをずらすのです。これを「跳ねる」と表現することもあります。
具体的に説明しましょう。8分音符が連続する場合、楽譜通りに演奏すれば「タタタタ」と均等なリズムになります。しかしスウィング感を出して演奏すると、「ターッタ、ターッタ」という具合に、最初の音を長く、次の音を短くするような不均等なリズムになります。この微妙なずれが、音楽に独特の揺れる感覚を生み出すのです。
当店で初めてジャズを聴かれるお客様に、この説明をすると「なるほど、だから体が自然と揺れるんですね」と納得されることが多いです。まさにその通りで、このリズムの揺れが、聴く人の体を自然と動かす力を持っているのです。
面白いことに、このスウィング感は楽譜に正確に書き表すことが非常に難しいとされています。演奏者の感覚や、その場の雰囲気によって微妙に変化するからです。ベテランのジャズミュージシャンたちは、長年の経験を通じてこの感覚を体得しており、それぞれに個性的なスウィング感を持っています。
当店のレコードコレクションの中でも、同じ曲を異なるミュージシャンが演奏したものを聴き比べると、スウィング感の違いがよくわかります。それぞれのミュージシャンが持つ独特のリズム感が、同じ曲を全く異なる表情に変えてしまうのです。
スウィングするとはどういうことか
ジャズの世界では「スウィングする」という表現がよく使われます。これは単にスウィング・ジャズを演奏するという意味ではなく、音楽が持つべき理想的な状態を表す言葉です。
「この演奏はスウィングしている」と言うとき、それは音楽に生命力があり、躍動感があり、聴く人の心と体を動かす力を持っているという意味になります。逆に「スウィングしていない」演奏は、技術的には正確でも、どこか機械的で生気に欠けた演奏ということになります。
当店で数十年にわたってジャズを聴き続けている常連のお客様は、「本当にスウィングしている演奏に出会うと、鳥肌が立つ」とおっしゃいます。それは演奏者たちが完全に一体となり、音楽が自然に流れ出ているような瞬間のことを指しています。
スウィングする演奏を生み出すには、いくつかの要素が必要です。まず、演奏者全員が同じグルーヴ(リズムの流れ)を共有していること。そして、お互いの音をよく聴き、呼吸を合わせていること。さらに、リラックスしながらも集中力を保っていること。これらの要素が揃ったとき、音楽は「スウィングする」のです。
興味深いのは、スウィングするかどうかは、演奏のテンポ(速さ)とは関係がないということです。ゆったりとしたバラードでもスウィングすることができますし、速いテンポの曲でもスウィングしないことがあります。大切なのは、音楽に込められた生命力なのです。
当店では時折、お客様同士が「今かかっている曲、本当にスウィングしていますね」といった会話をされているのを耳にします。そういう瞬間、私たちスタッフも心の中で「この音楽の素晴らしさを感じ取っていただけて嬉しい」と思うのです。
コーヒーとスウィング、当店での楽しみ方
ここまでスウィングという言葉の意味について説明してきましたが、当店ELANでは、このスウィングする音楽を、丁寧に淹れたコーヒーとともにお楽しみいただけます。
音楽とコーヒーの相性について考えたことはあるでしょうか。実は、スウィング・ジャズの持つリラックスした躍動感と、良質なコーヒーの持つ豊かな香りと味わいは、非常によく調和するのです。
当店では、お客様がゆったりとした時間を過ごせるよう、広く落ち着いた雰囲気の店内を整えています。レコードから流れる音楽は、決して大きすぎず、かといって小さすぎず、会話の邪魔にならない程度の音量に調整しています。この絶妙なバランスが、音楽もコーヒーも両方楽しめる空間を作り出しているのです。
所狭しと並ぶレコードコレクションは、長年かけて集めたものです。その中には、スウィング時代の貴重な録音も数多く含まれています。デジタル音源では味わえない、レコード特有の温かみのある音質が、スウィング・ジャズの魅力をさらに引き立てます。
あるお客様は、「仕事帰りに立ち寄って、スウィング・ジャズを聴きながらコーヒーを飲むと、一日の疲れが吹き飛ぶ」とおっしゃってくださいました。音楽の持つ癒しの力と、コーヒーブレイクのリラックス効果が相乗効果を生んでいるのでしょう。
私たちは、単に音楽を流しコーヒーを提供するだけでなく、お客様に「スウィングする」時間そのものを体験していただきたいと考えています。日常の慌ただしさから離れ、ゆったりとしたリズムの中で心と体を揺らす。そんな贅沢な時間を、名古屋の街の中で提供できることを誇りに思っています。
スウィングを体感する
スウィングという概念を頭で理解することと、実際に体感することは別のことです。当店にいらしたら、ぜひ説明を聞くだけでなく、実際に音楽に耳を傾け、体で感じていただきたいのです。
最初は意識的に音楽を聴いてみてください。リズムセクションのベースやドラムが刻むビート、その上で歌うように演奏される管楽器のメロディー。そして何より、音楽全体を通じて流れる独特のリズムの揺れ。これらを感じ取ろうとすることで、スウィング感が少しずつわかってくるはずです。
しばらく聴いているうちに、もう意識しなくても自然と足が動いたり、指でテーブルをリズムに合わせて叩いていたりすることに気づくかもしれません。それこそが、音楽があなたを「スウィングさせている」証拠なのです。
当店では、時折お客様から「このアルバム、家でも聴きたいのですが、タイトルを教えていただけますか」というご質問をいただきます。そういうときは喜んでアルバム情報をお伝えし、どこで入手できるかなどもアドバイスさせていただいています。気に入った音楽をご自宅でも楽しんでいただけることは、私たちにとっても嬉しいことです。
また、スウィング・ジャズに興味を持たれたお客様には、入門編として聴きやすいアルバムからご紹介することもあります。カウント・ベイシー楽団の軽快な演奏や、ベニー・グッドマンの親しみやすいメロディーなどは、初めての方にも楽しんでいただきやすい名盤です。
音楽は言葉では説明しきれない部分が多いものです。だからこそ、実際に聴いて、感じて、体験していただくことが何より大切だと、私たちは考えています。
まとめ
スウィングという言葉には、音楽ジャンルとしての意味、リズムの特徴を表す意味、そして音楽の生命力を表す意味があることをご紹介してきました。
1930年代から40年代にかけて大流行したスウィング・ジャズは、大編成のバンドによる華やかなサウンドと、踊りたくなるようなリズムが特徴です。その根底にあるスウィング感という独特のリズムの感覚は、音楽に揺れる動きを与え、聴く人の心と体を自然と動かします。
そして「スウィングする」演奏とは、技術を超えた生命力を持つ音楽のことを指します。これは演奏者たちが一体となり、音楽が自然に流れ出る理想的な状態を表す言葉なのです。
当店ELANでは、こうしたスウィングする音楽を、コーヒーとともにゆったりとお楽しみいただけます。往年の名曲を収めたレコードから流れる温かみのある音色、落ち着いた店内の雰囲気、そして丁寧に淹れたコーヒー。これらすべてが調和して、特別なくつろぎの時間を作り出しています。
名古屋の街で、本物のスウィング・ジャズに触れ、音楽の持つ力を体感できる場所。それが私たちライブ喫茶ELANです。日常の喧騒から離れ、音楽に身を委ねる贅沢な時間を、ぜひ当店で体験してください。
スウィングという言葉の意味を知ることで、音楽の聴き方が少し変わるかもしれません。そして実際にスウィングする音楽を体験することで、人生がほんの少し豊かになるかもしれません。私たちは、そんな音楽との出会いの場を提供し続けていきたいと考えています。
皆様のご来店を、心よりお待ちしております。
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Cafe & Music ELAN
やわらかな音と、香り高い一杯を。
名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分
ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います
あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております
