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2026年01月07日
音楽が脳に与える効果とは?集中・リラックス・睡眠を支える”音の力”
名古屋・熱田区のライブ喫茶ELANでは、毎日のように店内で音楽とコーヒーに囲まれていますが、その”心地よさ”には、実は脳科学的な理由があります。
この記事では、音楽が脳に与える「集中力アップ」「リラックス」「睡眠」の3つの効果を、喫茶店ならではの視点から、できるだけやさしくお話ししていきます。
ライブ喫茶ELANという「音楽の実験室」
当店ライブ喫茶ELANは、名古屋市熱田区の静かな住宅街にある、レコードとコーヒーを楽しむ小さな音楽喫茶です。
壁一面に並んだジャズ、クラシック、ロックなどのレコードを、こだわりのJBLスピーカーやレーザーターンテーブルで鳴らし、コーヒーの香りと一緒に味わっていただける空間になっています。
店主が自ら設計したステージにはグランドピアノやドラムセットも用意しており、昼はレコード鑑賞、夜は生演奏という二つの顔を持つのがELANの特徴です。
常連さんからは「ここに来ると不思議と頭がスッキリする」「仕事帰りに寄ると、家に帰ってからよく眠れる」といった声をよくいただきますが、これも音楽が脳に働きかけているおかげだと考えられます。
ある平日の午後、ノートPCを開いている会社員のお客様が、「家だと全然集中できないのに、ここだと原稿が一気に進むんですよ」と笑いながら話してくれました。
その日BGMとして流していたのは、60〜80BPM(1分間に60〜80拍)のスローテンポのジャズで、実はこのあたりのテンポの音楽は思考をクリアにし、集中を助ける効果があるとされています。
音楽が脳に与える基本的な影響
まず、音楽が脳にどう作用しているのか、ざっくりイメージをつかんでおきましょう。
少し専門的な話も出てきますが、できるだけ噛み砕いて説明していきますので、コーヒーを飲みながら読んでいただけたらうれしいです。
脳波と自律神経というキーワード
音楽の効果を語るとき、よく出てくるのが「脳波」と「自律神経(じりつしんけい)」です。
脳波とは、脳の活動を電気信号として測ったもので、リラックスしているときや眠いとき、集中しているときなど、状態によって波の形が変わります。
代表的な脳波は次のように整理できます。
- α波(アルファ波):リラックスしているとき、目を閉じて休んでいるときに出やすい状態
- θ波(シータ波):うとうとしているときや、瞑想に近い深いリラックス状態で出やすい状態
- δ波(デルタ波):ぐっすり深く眠っているときに現れる状態
一方、自律神経は、心拍や呼吸、体温などを自動で調節している神経で、「交感神経」と「副交感神経」の2つから成り立っています。
交感神経は活動モード(戦闘モード)、副交感神経は休息モードの役割を持っていて、音楽はこのバランスにも影響を与えます。
たとえば、激しいテンポの音楽を聴くと心拍数が上がり、交感神経が優位になってテンションが高まります。逆に、ゆったりとした穏やかな音楽は心拍数を下げ、副交感神経を優位にして心身を落ち着かせることが、複数の研究で示されています。
音楽がもたらすホルモンの変化
音楽はストレスホルモンと呼ばれる「コルチゾール」を減らし、不安や緊張を和らげることが分かっています。
また、心地よい音楽やコーヒーの香りは、快感や意欲に関わる「ドーパミン」や、気分を安定させる「セロトニン」といった神経伝達物質の分泌にも関わっているとされています。
ELANで、ふっと表情がやわらいでいくお客様の様子を見ていると、「あ、今この方の脳の中ではコルチゾールが減って、セロトニンが増えているんだろうな」と勝手に想像してしまいます。
これは決して大げさではなく、リラックス音楽を聴くと脳のα波が増え、心身の緊張がほぐれていくという報告が複数の機関から出されています。
集中力アップ:なぜカフェだと作業がはかどるのか
「家よりカフェの方が仕事や勉強がはかどる」と感じたことはないでしょうか。
ELANでも、レポートを書く学生さんや、プレゼン資料を作っているビジネスパーソンの方がよくいらっしゃいますが、その集中を支えているのも、やはり音楽の力です。
適度な音と「ホワイトノイズ効果」
静かすぎる場所より、少しざわざわした場所の方が集中しやすいことがあります。
これは「ホワイトノイズ効果」と呼ばれ、小さな話し声やカップの音、コーヒーマシンの音、そしてBGMが合わさった適度な環境音が、かえって脳を集中モードへ導くためだと考えられています。
カフェBGMの特徴としては、次のようなものが挙げられます。
- 音量は大きすぎず、小さすぎない
- テンポは60〜80BPM程度の、心拍と近いスローテンポ
- メロディは主張しすぎず、耳障りにならない
このような音楽は、脳波としてはリラックス状態を示すα波を保ちながら、集中を邪魔しないちょうど良い刺激を与えてくれるとされています。その結果、「落ち着いているけれど、頭はよく回っている」という理想的な状態に入りやすくなるのです。
ELANでの”集中タイム”エピソード
ある常連の大学院生の方は、修士論文の執筆をほとんどELANで進めたそうです。「家だとスマホを触っちゃうんですけど、ここだと”書くしかない”モードに入れるんですよね」と話してくれました。
その方がよく選んでいたBGMは、ピアノトリオのジャズや、静かなクラシックの弦楽四重奏でした。どちらも音数が多すぎず、リズムが安定していて、メロディも穏やかなため、集中作業のBGMとしては非常に相性が良いジャンルだとされています。
実際、「クラシック音楽が脳波や自律神経に作用し、リラックスや集中、睡眠の質向上などの効果をもたらす」という内容の解説もあり、音楽のジャンル選びが集中力に直結することが示されています。
集中したいときのポイントは、「好きすぎて歌いたくなる曲」ではなく、「適度に好きで、背景になってくれる音楽」を選ぶことです。
リラックス効果:副交感神経をオンにする音楽とコーヒー
仕事帰りにELANへ立ち寄り、「ここに来ると、肩の力が抜けますね」と言ってくださるお客様は少なくありません。
その”肩の力が抜ける”状態こそ、音楽とコーヒーが一緒に作り出しているリラックスモードです。
α波と副交感神経によるリラックス
癒し系の音楽を聴くと、脳ではα波やθ波といったリラックス状態を示す脳波が増えることが知られています。α波が増えると、脳はリラックスしながらも一定の集中力を保てる状態になり、心拍数や血圧も落ち着いていきます。
また、このとき自律神経では副交感神経が優位になり、消化や回復に適した”休息モード”に切り替わります。実際、リラックス音楽によってストレスホルモンであるコルチゾールの濃度が下がり、不安やストレスが軽減されることが報告されています。
ELANでは、夕方以降の少し疲れた時間帯になると、テンポがゆったりめのジャズボーカルやバラード、クラシックのスローテンポな曲を選んで流すことが多いです。「さっきまで頭がガンガンしていたのに、ここで一杯飲んだら落ち着きました」という声を聞くと、音楽が副交感神経のスイッチを入れてくれたのだと実感します。
コーヒーの香りとの相乗効果
当店では、音楽だけでなくコーヒーの香りも、リラックスの重要な要素だと考えています。
コーヒーの香りは、脳内のドーパミン分泌を刺激し、「ちょっと幸せな気分」「ほっとする感覚」を生み出すことが指摘されています。
さらに、音楽とコーヒーの香りが組み合わさることで、ストレス軽減や気分の安定といった効果が相乗的に高まるという脳科学的な見方もあります。このため、ELANでは「好きなレコードを選んでいただき、その曲に合わせてゆっくりコーヒーを味わう」という過ごし方をおすすめしています。
たとえば、雨の日にビル・エヴァンスのピアノトリオをリクエストされ、深煎りのブレンドをお出ししたとき、「なんだか、ずっと心にあったモヤモヤが少し軽くなりました」と話してくださったお客様がいました。音楽と香りと空間が揃うことで、心がほどけていく瞬間が、確かに生まれているのだと感じます。
睡眠の質を上げる音楽の使い方
「寝る前に音楽を聴くとよく眠れる」と感じたことがある方も多いと思いますが、これにもきちんとした理由があります。ただし、音楽なら何でもいいわけではなく、選び方と聴き方にはちょっとしたコツがあります。
音楽と睡眠のエビデンス
睡眠前に音楽を聴くことで、主観的な睡眠の質が良くなり、寝つきが良くなるという報告がいくつもあります。また、睡眠前にリラックスできる音楽を聴くことで、副交感神経が優位になり、心拍数や血圧が下がっていくことが示されています。
特に、リラックスしたときに出るα波を引き出す音楽は、眠りにつく前の状態を整えるのに適しているとされています。高周波音(おおよそ4,000Hz以上)を含む音楽は、脳のα波を発生しやすいという指摘もあり、リラックスや入眠のサポートとして活用されることがあります。
ただし、「この音楽を聴けば誰でもすぐ眠れる」というレベルの絶対的な根拠があるわけではなく、厚生労働省なども、音楽が主観的な睡眠の質に良い影響を与えることを中程度の確実性で示唆しています。あくまで「眠りやすい状態を作るサポート役」として、うまく付き合っていくのが現実的です。
就寝前の音楽の選び方・聴き方
ELANの店主として、お客様から「寝る前にどんな音楽を聴けばいいですか?」と聞かれたとき、次のようなポイントをお伝えしています。
- テンポはゆっくり(60BPM前後)
- 音量は小さめ、環境音のように
- 歌詞よりもインスト(歌のない曲)を中心に
- ジャンルはクラシック、アンビエント、ピアノソロ、静かなジャズなど
実際に、夜のELANでは、閉店に近づく時間帯になると、ピアノソロや静かな弦楽器の曲を選ぶことが多いです。「このまま眠れそうなので、帰りたくなくなりますね」と冗談交じりに言われるのは、音楽が睡眠前のリラックス状態をつくっている証拠かもしれません。
また、睡眠前の音楽は、ずっと流しっぱなしにするより「寝つくまでの20〜30分だけ」にする方が良いとされることもあります。入眠後は、脳波がα波からθ波、δ波へと移行していくため、睡眠ステージを妨げないよう、タイマーを活用するのがおすすめです。
ELAN流・音楽とコーヒーの楽しみ方
ここまで、音楽が脳に与える「集中」「リラックス」「睡眠」の効果を見てきましたが、最後にELANで実際に試していただける”体験メニュー”を、脳科学の視点も交えながらご紹介します。
1日のリズムに合わせて音楽を選ぶ
1日の中で、時間帯によって必要なモードは変わります。そこで、ELANでは次のような「時間帯別おすすめの楽しみ方」を提案しています。
午前〜昼:集中したいとき
- BGM:テンポ60〜80BPMのピアノジャズやクラシック
- 状態:α波を保ちながら、作業に集中しやすい脳の状態を目指す
夕方:一息つきたいとき
- BGM:ボサノバやバラード、穏やかなボーカルもの
- 状態:副交感神経を優位にし、コルチゾールを下げるリラックスタイム
夜:眠りにつながる時間
- BGM:静かなピアノソロ、アンビエント系、クラシックのスローテンポ
- 状態:α波を引き出し、眠りに入りやすい心と体の準備を整える
ELAN店内でも、このリズムを意識してBGMを選曲しており、時間帯によって空気感が少しずつ変わるようにしています。ご来店の際には、「今の自分に合ったモード」に耳を澄ませてみていただけると、新しい発見があるはずです。
お客様と一緒につくる”音の時間”
ELANでは、店主が一方的に音楽を流すのではなく、お客様のその日の気分や体調を聞きながら、「今はどんな音が合いそうか」を一緒に考える時間を大切にしています。
「最近眠りが浅くて…」と話されたお客様には、カフェイン控えめのコーヒーと、穏やかなピアノ曲をおすすめしたこともあります。
別の日には、「今日は徹夜で資料を作らなきゃいけなくて…」という方に、少しテンポのあるジャズと深煎りのブレンドを組み合わせてご提供しました。その方は帰り際に、「あの選曲、完全に”仕事モード”に入れました」と笑顔でおっしゃっていて、音楽とコーヒーがその人の1日を支えられたことがとても印象的でした。
音楽の好みや体調は人それぞれ違いますが、「今の自分にとって心地よい音」を探していくプロセスは、音楽と脳の関係を体感する一番の近道です。
ELANは、その”実験の場”として、これからもレコードとコーヒーをご用意してお待ちしています。
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Cafe & Music ELAN
やわらかな音と、香り高い一杯を。
名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分
ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います
あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております
