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2026年01月16日
エレキギターのピックアップで音が変わる理由——”音の入り口”が決めるギターの個性
名古屋・熱田区の「ライブ喫茶ELAN」です。
当店ではレコードやライブ演奏だけでなく、音そのものの仕組みに興味を持つお客様も多くいらっしゃいます。中でも「同じギターでも人によって音が違う」「ピックアップで音が変わるのはなぜ?」という質問をよくいただきます。
今回は、エレキギターの”心臓部”ともいえるピックアップについて、音の違いを生み出す仕組みをわかりやすく紐解いていきましょう。
ピックアップとは何?——音を”電気信号”に変える装置
まず、ピックアップとはギターの弦の振動を”電気信号”に変換するパーツです。エレキギターでは、弦を弾いてもアコースティックギターのように木の響きで音は鳴りません。弦が磁石の上で震えることで発生した電気を増幅し、アンプから音として出すのです。
ELANでもライブ中、ギタリストが弦を軽くピッキングするだけで、ピックアップの種類によってまったく違うニュアンスの音が流れます。同じ演奏でも「温かく感じる音」や「鋭く突き刺さる音」など印象が一変します。その違いの大半を担っているのが、まさにこのピックアップなのです。
例えば、有名な「シングルコイル」と「ハムバッカー」という2種類。見た目は似ていても、音の出方はまるで違います。
シングルコイルとハムバッカーの違い
1. シングルコイル——クリアでシャープなサウンド
シングルコイルは、1つのコイル(銅線が巻かれた磁石)で構成されています。代表的なのがフェンダーの「ストラトキャスター」や「テレキャスター」です。
その音は「シャリッ」とした高音が魅力で、ブルースやカントリー、ポップスなどで好まれます。手触りのような繊細さがあり、ピッキングの強弱や指の動きをダイレクトに反映します。
ELANの常連ミュージシャンIさんは、ストラトを持ち込み、夜のセッションで繊細なアルペジオを弾くのが好きだと話します。
「ストラトのシングルは、空気を震わせるような伸びのある音がする。レコードのサックスの響きにも負けないくらいの透明感がありますね」と言っていました。
ただし、シングルコイルの弱点は「ハムノイズ」と呼ばれる電気的なノイズ。照明やアンプの電源から拾う”ジーッ”という音です。演奏時に気になる場合は、ノイズゲートを入れたり、演奏環境を工夫する必要があります。
2. ハムバッカー——厚みと力強さのある音
一方、ハムバッカーはシングルコイルを2つ組み合わせ、”ハム”(ノイズ)を”バック”(打ち消す)する構造になっています。つまり、「ノイズを打ち消す」ために生まれた設計です。
音の特徴は、太くて力強い。ロックやジャズギターなどで好まれ、低音がふくよかに響きます。ギブソンの「レスポール」に代表される形で、多くのロックギタリストが愛用しています。
ある夜、ELANでハムバッカー搭載のレスポールを弾いたお客様が、ストレートなチューブアンプに直結してブルースを奏でた瞬間。店内の空気が一気に”温度を持った”のを感じました。ピックアップ一つでこれほど音の存在感が変わるのだと、改めて実感します。
ピックアップの位置でも音は変わる
ピックアップは通常、ギターの弦の下に「ネック側」「ミドル」「ブリッジ側」と複数搭載されています。この位置によって、拾う弦の振動の”成分”が変化するのです。
- ネック側(フロントピックアップ):弦の振幅が大きく、温かいトーン。ジャズやバラードに向いています。
- ブリッジ側(リアピックアップ):弦が硬く振動するポイントなので、歯切れよく鋭い音。ロックやカントリーで多用されます。
- ミドル(中央):中間的でバランスの良い音。多様なジャンルに対応。
店のステージでも、ギタリストがスイッチでピックアップを切り替えるたび、音の表情がまるで別の楽器のように変わります。その変化を聴き取るのもライブの醍醐味です。
マグネットの材質による音の違い
ピックアップの要となる磁石(マグネット)の種類も音に大きく影響します。代表的なのは次の3種類です。
- アルニコ(AlNiCo)磁石:柔らかく温かい音色。クラシックなギターに多い。
- セラミック磁石:出力が高く、シャープで力強い音。ハードロックやメタル向け。
- ネオジム磁石:現代的で高感度。音の明瞭さを重視するプレイヤーに人気。
私たちがレコードで聴く往年のジャズやブルースのギターも、実はこのアルニコ・マグネットの持つ”丸みのある音”が支えています。ELANで流れる古いレコードのトーンと、ステージ上のギターサウンドが自然に溶け合うのは、こうした共通点があるからかもしれません。
ピックアップとアンプの”相性”
ピックアップの音を決めるもう一つの要素が、アンプとの相性です。ピックアップから出る信号は微弱な電気信号。アンプの回路や真空管の特性が、それをどのように増幅し、どんなトーンで出すかを決定します。
たとえば、ELANに設置している真空管アンプは、ソリッドステート(トランジスタ式)よりも音が滑らかで、”空気感”が残ります。シングルコイルの繊細なタッチをそのまま表現できる一方、ハムバッカーをつなぐとより太く包み込むような音に。
同じギターでも、接続するアンプが変われば、印象がまるで違って聞こえる。その奥深さは、コーヒー豆と焙煎の関係にも似ています。豆が同じでも、焙煎次第で香りも味もまったく変わるように、ピックアップとアンプの組み合わせがそのギターの”個性”を引き出すのです。
アクティブとパッシブ——電池で変わるピックアップの世界
ピックアップには「パッシブ」と「アクティブ」という2つのタイプがあります。ここまで紹介してきたシングルコイルやハムバッカーは、基本的にパッシブ型。電池を使わず、弦の振動と磁石だけで信号を生み出します。
一方、アクティブピックアップは内蔵のプリアンプを9V電池で駆動させ、信号を増幅してから出力します。代表的なのはEMG社のピックアップで、メタルやハードロックのギタリストに根強い人気があります。
アクティブの特徴は、ノイズが極めて少なく、出力が安定していること。どんな環境でもクリアで均一なサウンドが得られます。ただし、「味気ない」「無機質」と感じるプレイヤーもいます。
ELANに来るお客様の中にも、アクティブ派とパッシブ派で意見が分かれることがあります。あるベテランギタリストは「アクティブは現場での安心感がある。でも家で弾くときはパッシブの”生っぽさ”が恋しくなる」と笑っていました。
どちらが優れているというわけではなく、求める音や演奏スタイルによって選ぶもの。電池一つで音の性格が変わるというのも、エレキギターの面白いところです。
ピックアップの高さ調整——眠っている音を引き出すコツ
意外と見落とされがちなのが、ピックアップの「高さ」です。弦との距離を調整するだけで、音量やトーンが驚くほど変化します。
ピックアップを弦に近づけると、出力が上がり、太くパワフルな音になります。しかし近づけすぎると、磁力が弦の振動を妨げ、サステイン(音の伸び)が短くなったり、音程が不安定になることも。
逆に弦から離すと、出力は下がりますが、クリアで繊細なトーンが得られます。ジャズギタリストの中には、あえてピックアップを低くセッティングし、柔らかい音色を追求する人もいます。
調整はドライバー1本でできるので、試してみる価値は十分あります。ELANでリハーサル前にピックアップの高さを微調整しているギタリストを見かけることもあります。「今日の曲に合わせて少しだけ下げてみた」と、こだわりを語ってくれました。
新しいピックアップを買う前に、まずは今あるピックアップの高さを見直してみる。それだけで、眠っていた音が目を覚ますかもしれません。
ピックアップ交換の魅力——”自分だけの音”を求めて
ギタリストの中には、ピックアップを交換し、自分の理想の音を追い求める人も多くいます。市販のパーツを選び、はんだ付けをして調整するのは少しハードルが高いですが、その先に得られるのは「唯一無二の自分の音」です。
ELANでも、常連のプロギタリストが「前よりも高域の伸びを出したくてアルニコⅤを選んだ」と話してくれました。組み替え後に試奏した音は、確かに以前よりも立体的で、繊細なニュアンスが際立っていました。
ピックアップ交換の際には以下の点を考慮するのがポイントです。
- 使用ジャンル(ジャズ、ロック、ポップスなど)
- 手持ちのアンプやエフェクターとの相性
- 演奏中によく使うピックアップ位置
このように”音作り”は、単なるカスタマイズ以上の楽しさがあります。コーヒーにも好みのブレンドがあるように、ギターにもその人だけのサウンドブレンドが存在するのです。
まとめ——音の違いを”自分の耳”で楽しむ
ピックアップの種類、構造、位置、マグネット、そしてアンプとの組み合わせ——。これら一つひとつがエレキギターの音をつくり、その人の表現を形にします。
ライブ喫茶ELANでは、そんな音の奥深さを肌で感じていただけます。レコードから流れる往年の名演も、ステージで鳴る生音も、どちらも「音の入り口」が生み出す奇跡の結果です。
コーヒーを片手に、ギターの音色の違いに耳を傾けてみてください。きっと、いつもより深く音楽が心に響いてくるはずです。
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Cafe & Music ELAN
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