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2026年01月26日

静かに店で音楽を楽しむための”気遣いマナー”――ライブ喫茶ELANが大切にしている、音と人のやさしい関係

音楽とコーヒーを静かに楽しむという贅沢

名古屋の街の喧騒から少し離れた場所にある「ライブ喫茶ELAN」は、”音楽を聴くこと”そのものを主役にした喫茶店です。お店の中に広がるのは、レコードから流れる温かな音、ふんわりとしたコーヒーの香り、そしてお客様それぞれの穏やかな時間。

この静けさには理由があります。私たちは「静かに音を楽しむ」という文化を、大切に育ててきました。

“静かに聴く”とは、ただ音量を下げることではありません。音楽に耳を澄ませ、演奏者の息づかいや間(ま)を感じ取ることです。それは、音楽を通して心を通わせる時間でもあります。

たとえば、夜の時間帯。ジャズのレコードを再生すると、お客様は自然と会話を止め、音に耳を傾けます。グラスを置く音すら、音楽の一部のように響く。そんな静かな一体感が、ELANならではの魅力です。

では、そんな空間を守るために、どんな「気遣い」が大切なのでしょうか?ここからは、当店で実際に感じたエピソードを交えながら、お伝えします。


話すトーンを”音のひとつ”だと思う

最初にお伝えしたいのは、「声のトーン」についてです。

ELANでは、会話そのものを制限しているわけではありません。ですが、店内の中心は”音楽”です。もしも友人と音楽の話で盛り上がったとしても、隣のテーブルにも同じ音の時間を楽しみにしている方がいます。

常連のお客様の中には、いつも”声のトーン”を音楽に合わせてくださる方がいます。ゆったりしたピアノのバラードが流れている時間には、小さな声で「この曲、昔よく聴いたなあ」と話されます。その控えめな一言が、むしろ音楽への敬意として感じられるのです。

反対に、大きな声での会話や笑い声は、せっかくのレコードの余韻を壊してしまうこともあります。音楽喫茶は、映画館と似ています。映画を観ながら大声で話す人がいないように、音楽を聴く場所でも同じ”共有の静けさ”があると考えています。

私たちスタッフにとっても、お客様が音に集中してくださっている時間は、空気がきゅっと澄み渡ったように感じます。そんな瞬間を増やすために、声のトーンに少しだけ気を配っていただけると嬉しいです。


スマートフォンとの付き合い方

現代において、スマートフォンを使わない時間はほとんどありません。ですが、音楽喫茶では少しルールが異なります。画面を見つめる”光”ひとつでも、静かな空間では意外と目立ちます。明るい画面が視界に入るだけで、音の世界から現実に引き戻されてしまう方も少なくありません。

たとえば、ある日の午後。ピアノトリオの美しいスタンダードが流れる中、ひとりのお客様がスマートフォンを手に取りました。ほんの一瞬の操作でしたが、その画面の明るさに隣の方の目が止まり、集中が途切れたのが分かりました。それからその方は、そっとスマホを伏せ、コーヒーを一口飲んで、再び音に戻っていかれました。まるで”音の世界に帰っていく”ような瞬間でした。

ELANでは、次のような工夫をお願いしています。

  • スマートフォンはマナーモードに設定する
  • 通話や通知音は店外で対応する
  • SNS投稿や撮影は、他のお客様の写り込みに配慮する

これらのマナーは、”音楽を聴く人の集中を尊重するための小さな約束”です。自分が音を聴いているときに、誰かにその集中を壊されたくない。だからこそ、他の人にもそうしない。それがELANの大切にしている思いやりです。


コーヒーと音楽に、静かなリズムを

当店では、多くの方が音楽を聴きながらコーヒーを楽しまれます。コーヒーを淹れる音や、カップを置く動作には、実は”リズム”があります。静寂の中にも、こうした音が小さなアクセントとなって音楽を引き立ててくれます。

私たちが大切にしているのは、”美しい音の調和”です。たとえば、スプーンをソーサーに戻すときに音を立てない、椅子を引くときに静かに動かす――そんな動作の中にも気遣いがあります。

以前、あるジャズピアニストが演奏中にこう話されました。「音楽って、音を鳴らすことじゃなくて、『音を止めた瞬間』が一番大事なんです」。この言葉は、店の雰囲気づくりにも通じます。静けさの中にこそ、心地よい余韻が生まれるのです。


レコードの音を”味わう”ということ

ELANの店内には、ジャンルを超えて数百枚ものレコードが並んでいます。お好きな曲をリクエストしていただければ、レーザーターンテーブルで再生します。これは針ではなく”光”で音を拾う機器で、盤面を傷めず、レコードに刻まれた細かな音まで忠実に再現することができます。

初めて聴いたお客様の中には、「まるで演奏者が目の前にいるみたい」と驚かれる方が多いです。たしかに、デジタル音源では感じにくい温度や空気感があります。これは、”音の振動”がそのまま空間全体を包み込むように伝わるからです。

音楽を”聴く”だけでなく、”味わう”。その感覚を大切にしたいと考えています。

たとえば、雨の日の午後はビル・エヴァンスのピアノを。晴れた休日の午前にはスタン・ゲッツのやわらかなサックスを。季節や気分に合わせて音を選ぶと、同じ一杯のコーヒーでもまったく違う味わいに感じられます。


同じ”音”を共有するということ

音楽喫茶は、静けさの中に”つながり”があります。隣の席の人と話さなくても、同じ曲を聴き、同じ空気を感じている――それだけで不思議な一体感が生まれます。

たとえば、ある晩、ちょうどマイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』をかけたとき、店内の全員が息を止めるように聴き入っていました。曲が終わると、ほんの一瞬の間を置いて、自然に小さな拍手が起こりました。誰かが呼びかけたわけではなく、ただ”その場がそう導いた”ような感覚。あの瞬間こそ、音楽が人を繋ぐ奇跡だと感じました。

私たちは、そんな「音を共有する文化」を守り続けたいのです。


マナーは、音楽への”敬意”から生まれる

“静かに聴く”という行為は、制限ではなく、自由の形でもあります。音楽には、演奏者の思いや歴史が詰まっています。その音を丁寧に受け取ることは、演奏者や作曲者への敬意そのものです。

マナーとは、他人に押しつけられるものではなく、”音楽を愛する人の自然なふるまい”です。そして、そんな気持ちが集まる場所こそ、ELANのような音楽喫茶の原点なのだと思います。

 

初めてご来店される方へ

「音楽喫茶って、どんな雰囲気なんだろう」「常連さんばかりで入りづらくないかな」――初めての方から、そんな声をいただくことがあります。

どうぞ、ご安心ください。ELANは、音楽を愛するすべての方に開かれた場所です。

初めてのお客様には、まずお好きな席にお座りいただき、メニューをご覧いただきながら、流れている音楽に耳を傾けてみてください。何も特別なことをする必要はありません。ただ、その場の空気に身を任せるだけで大丈夫です。

もしレコードのリクエストをされたい場合は、遠慮なくスタッフにお声がけください。「ジャズは詳しくないのですが……」という方も歓迎です。お好みの雰囲気をお聞きして、ぴったりの一枚をお選びします。静かなピアノがいいのか、軽やかなボサノヴァがいいのか、その日の気分に合わせてご提案いたします。

音楽喫茶の楽しみ方に正解はありません。本を読みながら聴いても、目を閉じて音に浸っても、窓の外を眺めながらぼんやりしても。あなたらしい過ごし方を見つけていただければ、それが一番です。


お一人様の時間を大切に

ELANには、おひとりで来店されるお客様がたくさんいらっしゃいます。むしろ、お一人様のほうが多いかもしれません。

誰かと一緒にいなくても、音楽がそばにいてくれる。そんな感覚を味わえるのが、音楽喫茶の醍醐味です。

仕事帰りにふらりと立ち寄って、一杯のコーヒーとともに今日の疲れを溶かしていく。週末の午後、誰にも邪魔されずに好きなレコードをリクエストして、ゆっくりと時間を過ごす。そんなひとときが、明日への活力になることもあります。

おひとりだからこそ、音楽との対話に集中できる。周りを気にせず、自分だけの世界に入り込める。ELANは、そんな”ひとりの贅沢”を応援しています。


季節とともに変わる音の風景

ELANでは、季節に合わせて店内の雰囲気も少しずつ変わります。

春には窓から差し込む柔らかな光の中で、軽やかなスウィングを。夏の暑い日には、涼しげなクール・ジャズやボサノヴァを。秋の夕暮れには、しっとりとしたバラードを。そして冬の寒い夜には、温かみのあるピアノトリオを――。

音楽は、季節の移ろいをより豊かに感じさせてくれます。同じ曲でも、聴く季節や時間帯によって、まったく違う表情を見せることがあります。

ぜひ、季節ごとにELANを訪れてみてください。きっと、その時々の”音の風景”が、あなたを迎えてくれるはずです。


ライブ喫茶ELANから、みなさまへ

私たちは、音に耳を傾ける時間を”人生のささやかな贅沢”だと考えています。忙しい日常の中で、静かにコーヒーを飲み、音に身を委ねる。そんなひと時を、ELANで過ごしていただけたら幸いです。

どうぞ、今日も”静かに音を楽しむ”気持ちで、扉を開けてください。そこには、あなたのための音が、静かに待っています。

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております