NEWS
2026年01月27日
レコードのA面とB面の意味とは?──喫茶ELANが語る、アナログの深い世界
音楽とコーヒーが溶け合う場所から
名古屋の住宅街の一角。コーヒーの香りとアナログレコードの音が混ざり合う、静かな時間が流れています。ここ「ライブ喫茶ELAN」では、店内の棚にずらりと並んだ名盤たちが、今日もお客様を待っています。
「最近、レコードを買ったんですけど、A面とB面ってどう違うんですか?」
そんな質問が、よくカウンター越しに聞こえてきます。今では音楽の多くが配信やストリーミングで聴かれる時代。だからこそ、レコード特有の”面”の概念は、少し不思議に感じられるのかもしれません。
けれど、そのA面とB面には、アーティストのこだわりや物語がしっかりと刻まれているのです。
A面とは何か──「メインディッシュ」のような存在
レコードのA面は、いわば「作品の顔」と言える面です。アーティストたちは、リスナーが最初に針を落とすその瞬間を意識して、最も印象的な楽曲を配置します。
たとえば、1960年代から70年代にかけての名盤では、A面の1曲目にシングル曲や代表曲が置かれることが多くありました。理由は簡単。「最初の一曲で掴むこと」が大切だったからです。
ELANのオーナーもこう語ります。
「A面って、まるでコース料理の最初に出てくるメインディッシュなんですよ。最初の一口で”おっ”と思わせる構成になっている。そこから作品の流れが始まるんですね。」
A面の構成には、「その時代の空気」や「アーティストのメッセージ性」が詰まっています。ジャズでもクラシックでも、リスナーとの”一期一会”を大切にするA面は、レコードというフォーマットの中で最も聴き応えのある部分なのです。
B面とは何か──”裏”ではなく”余韻”を味わう時間
一方、B面はA面に対して「補足」や「余韻」を担う役割を果たします。ここには、実験的な曲、ゆったりした曲、あるいは個人的な曲が収められることが多いのです。
かつてELANの店主が若いころ、B面ばかり聴いていた時期があったそうです。
「A面は派手で華やか。でもB面には、そのアーティストの”心の声”が隠れている気がしてね。」
B面には次のような特徴があります。
- A面とは異なる雰囲気やテンポの曲が並ぶ
- アルバムの”後半の物語”として位置付けられている
- ファンの間では”通好み”の曲が多い
特にジャズやロックの名盤では、B面が評価されて時を経て名曲になることもしばしば。静けさの中で深く沈み込むB面は、まるで夜更けの一杯のコーヒーのような味わいがあります。
A面とB面を分ける”技術的な理由”
A面とB面の違いは、アーティストの意図だけではありません。実は物理的な制約も関係しています。
アナログレコードは、片面あたり約20分前後しか録音できません。これは、溝の密度や音の歪みを防ぐための制限によるものです。そこで、一枚のアルバムを構成する全曲を2つの面に分ける必要がありました。
つまりA面とB面の存在は、「アナログという技術が生んだ文化」でもあるのです。
この構造が、音楽の聴き方そのものを変えました。リスナーはA面を聴き終えたら、一度立ち上がり、レコードをひっくり返す。その”動作”が、音楽の時間を一度リセットし、新しい気持ちでB面を迎える儀式のようになっていたのです。
ELANでも、常連のお客様が「この”ひっくり返す時間”がいいんだよ」と笑顔で話してくれます。音楽と向き合う”間”の美学は、デジタルにはないアナログ独自の魅力です。
心をつなぐ「表と裏」のストーリー
A面とB面の関係は、まるで人間の表情のようにも見えます。A面が”外向きの表情”なら、B面は”内側の素顔”。どちらが欠けても、本当の魅力は伝わりません。
1970年代の名盤の多くがそうであったように、アルバム全体を通して聴くことで、アーティストの世界観が立体的に浮かび上がります。
- A面:聴く人を引き込む導入と展開
- B面:心の奥を感じさせる余韻と結末
ELANのオーディオから流れるレコードでも、A面とB面の”つながり”を意識して選曲しています。音質にこだわり抜いたJBLのスピーカーとレーザーターンテーブルが、A面の迫力もB面の繊細さも、等しく美しく響かせてくれるのです。
レコードの”物語”を楽しむということ
レコードの醍醐味は、曲を聴くだけでは終わりません。ジャケットデザイン、ライナーノーツ(解説書)、盤の色やラベル──その一つひとつが、作品の世界を構成しています。
ジャケット裏面に記された曲順を追いながら針を置く。カフェのカウンターでコーヒーを片手に、ゆっくりと音に身をゆだねる──そんな時間こそ、レコードがもたらす”贅沢なひととき”です。
「デジタルが便利なのは確か。でも、レコードには”聴くまでの時間”を楽しむ余白があるんです。」とELANの店主は話します。
ELANの日常風景──レコードが紡ぐ会話
ある休日の午後、常連のご夫婦がいつもの席に座りました。奥様が「今日は何をかけてくれるの?」と尋ねると、店主は棚から一枚のレコードを取り出します。ビル・エヴァンスの『Waltz for Debby』。ジャケットを見せると、ご主人が「ああ、これは名盤だね」と目を細めました。
ELANでは、こうした何気ないやり取りが日常的に生まれます。レコードは単なる音楽メディアではなく、人と人をつなぐ”話題の種”でもあるのです。
「あのジャケット、誰が描いたか知ってる?」 「このアルバム、実は録音場所がすごく面白くてね」
一枚のレコードから広がる会話は、時に音楽の話を超えて、その時代の文化や思い出話へとつながっていきます。
初めてレコードに触れるお客様へ
最近では、レコードに初めて触れる若いお客様も増えてきました。スマートフォンで音楽を聴くことが当たり前の世代にとって、レコードは「おしゃれなインテリア」として興味を持つ入口になることも多いようです。
「触っていいんですか?」と遠慮がちに尋ねる方には、店主が丁寧にレコードの扱い方を教えます。盤面を指で触らないこと、ジャケットから出すときの持ち方、針を落とす瞬間の緊張感──そのすべてが、デジタルでは味わえない体験です。
初めてレコードの音を聴いた瞬間、「なんか、温かい感じがしますね」と言葉を漏らす方がいます。その一言が、私たちにとっては何よりの喜びです。アナログの音には、言葉では説明しきれない”肌触り”のようなものがあるのかもしれません。
レコードを選ぶ楽しさ
ELANの棚には、ジャズを中心にクラシック、ロック、歌謡曲まで、さまざまなジャンルのレコードが並んでいます。お客様の中には、ジャケットの絵柄だけで「これ、かけてください」と選ぶ方もいらっしゃいます。
音楽を”見た目”で選ぶ。これもレコードならではの楽しみ方です。CDやストリーミングでは、ジャケットは小さなサムネイル画像に過ぎません。しかしレコードでは、30センチ四方のアートワークが存在感を放ちます。
「このジャケット、部屋に飾りたいな」
そんな声を聞くたびに、レコードが音楽だけでなく、視覚的な芸術作品でもあることを実感します。
音楽が記憶を呼び覚ます瞬間
ある日、年配の男性がふらりと店に入ってきました。棚を眺めていた彼は、一枚のレコードを見つけて手を止めます。
「これ、学生時代によく聴いていたんだよ」
そう言って選んだのは、1970年代のフォークアルバム。針を落とすと、彼は目を閉じて静かに聴き入っていました。曲が終わると、「あの頃の風景が浮かんできた」とぽつりと呟きました。
音楽には、記憶を呼び覚ます不思議な力があります。そしてレコードという物理的な存在が、その記憶をより鮮明に蘇らせるのかもしれません。手に取れる重さ、回転する盤面、針が溝をなぞる音──五感で味わう音楽体験が、過去と現在をつないでくれるのです。
ELANは、そんな音楽と記憶が交差する場所でありたいと思っています。
ELANで味わう、音と時間の流れ
当店では、オーディオファン垂涎のレーザーターンテーブルを導入しています。針を使わず、光で音を拾うプレイヤーは、アナログの温かさを損なわず、驚くほどクリアな音を再現してくれます。
コーヒーを片手に聴くレコードのA面。ふと気がつけば針が止まり、店内にはほんの少しの静寂。スタッフがそっとB面に切り替えると、また新しい音の世界が広がります。
そんな瞬間を、ELANでは大切にしています。
音楽が人と人を結びつけ、時を超えて心を動かす——その根っこには、A面とB面、どちらにも共通する”音楽を愛する気持ち”が流れているのです。
まとめ──レコードのA面・B面に込められた想い
A面とB面は、単なる表と裏ではありません。そこには、音楽を作る人と聴く人、そして時間を共有する場所——ELANのような喫茶店を含めた「音楽文化そのもの」が息づいています。
A面を聴き終え、B面へと針を運ぶ。そのほんの数秒にも、音楽を”聴く”という体験の本質があります。私たちは今日も、その一枚の中にある”二つの物語”を、お客様とともに紡ぎ続けています。
名古屋・熱田区の「ライブ喫茶ELAN」で、あなたもぜひ、その音のストーリーを味わってみてください。コーヒーとともに流れる時間が、きっと心に残る一枚になるはずです。
====================
Cafe & Music ELAN
やわらかな音と、香り高い一杯を。
名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分
ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います
あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております
