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2026年01月30日

レコードの回転数「33/45/78回転」はどうやって決まった?

レコードの回転数「33/45/78回転」は、なんとなく決まった数字ではなく、「録音時間」「音質」「当時の技術・業界の都合」のせめぎ合いの中で生まれた歴史的な落としどころです。

この記事では、名古屋のライブ喫茶ELANとして、お店目線で「お客さまに話すつもり」で、できるだけやさしく、でも内容はしっかり深掘りしてご説明していきます。


レコードの回転数ってそもそも何?ELAN店主のやさしい導入

「33回転で再生してください」「この盤は45です」――ELANでもレコードをかけるたびに、プレーヤーの回転数をカチッと切り替えています。

この「回転数」とは、1分間にレコードが何回転するかを示す数値で、英語では「RPM(Revolutions Per Minute)」と表記されます。

回転数は主に次の3種類があります。

  • 33 1/3回転(33rpm)…主にLP(ロングプレイ)レコード
  • 45回転(45rpm)…主にシングル盤・EP盤
  • 78回転(78rpm)…SP盤と呼ばれる古いレコード

回転数が違うと、次のようなポイントが変わってきます。

  • 1枚あたりに録音できる時間
  • 音のキメの細かさやダイナミックレンジ(強弱や迫力の幅)
  • 溝の幅やピッチ(どれくらい細かく刻むか)

ざっくり言うと、「ゆっくり回すほど長く録れる」「速く回すほど音に余裕がある」というイメージです。

ELANの店内で同じ曲をあえて33回転盤と45回転盤で聴き比べると、「あ、こんなに違うんだ」とびっくりされるお客さまもいらっしゃいます。


なぜ78回転から始まったのか ― レコードの原点と「シェラック盤」の時代

最初から33回転や45回転だったわけではなく、レコードの歴史は「78回転」から始まりました。

この78回転のレコードは「SPレコード」あるいは「シェラック盤」と呼ばれ、20世紀前半の主役だった音楽メディアです。

78回転が主役だった時代

  • 1890年代〜1950年代前半ごろまで、世界中で主流だったのが78回転のSPレコード
  • 素材はビニールではなく、カイガラムシの分泌物から作られる天然樹脂「シェラック」が使われていた

シェラックは硬くて割れやすく、今ELANに残っているSP盤も取り扱いにはかなり気をつかいます。

一方で、溝は太く、回転数も速いため、針でしっかり物理的に音をなぞるには都合がよかったという面もあります。

78回転が選ばれた背景には、当時のモーターやぜんまい機構の都合があります。電源周波数との兼ね合いなどから「毎分約78回転前後」が扱いやすく、やがて業界の標準として固まりましたが、初期は70〜80回転台でメーカーごとにバラバラという時期もあったそうです。

78回転の「3〜5分」という制約

78回転盤の大きな特徴は「片面3〜5分程度しか録音できない」ことです。

溝が太く、盤の外周から内周までを針がたどる時間が短いため、物理的に長時間収録ができません。

この制約が、のちのポピュラー音楽の「1曲3〜4分」という長さの感覚につながっていった、とも言われています。

お店でSP盤をかけると、スタッフはすぐに次の盤を準備しなければなりません。「もう終わり? 早い!」と驚かれるお客さまも多く、当時のレコード係はかなり忙しかっただろうな、と想像してしまいます。


33 1/3回転の登場 ― LPがもたらした「アルバム」という聴き方

78回転の時代を大きく変えたのが、1948年にコロムビア・レコードが発表した「LP(Long Playing Record)」です。

このLPに採用された回転数が「33 1/3回転」で、今でも最も一般的なレコードの規格となっています。

なぜ「33と3分の1回転」なのか

数字だけ見ると少し不思議な「33と3分の1」ですが、これにも技術的な理由があります。

  • 電源周波数(50Hz/60Hz)を基準にして、安定した回転数を作りやすい
  • 回転を遅くすることで、溝を細く長く刻み、片面20分前後の再生時間を実現できる
  • 音質と再生時間のバランスを考えたときに「ちょうど良い落としどころ」だった

結果として、12インチLPでは片面20分前後、アルバム1枚で40分前後の音楽が収まるようになりました。

クラシックの交響曲やジャズの長尺演奏など、「一つの作品をじっくり通して聴く」という体験を可能にしたのが、この33 1/3回転のLPです。

ELANの店内でも、マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスのLPを最初の針落としから最後のフェードアウトまでじっくり聴いていただくと、お客さまの表情がどんどん変わっていきます。途中で盤をひっくり返す、そのひと手間さえ演出の一部になっているのが、LPの面白さだと感じます。

LPが変えた「音楽の作り方」

LPの登場で、音楽家たちは「3分1曲勝負」から、「アルバム全体で世界観を作る」という発想にシフトしていきました。

  • A面は明るめの曲、B面はしっとり
  • 1曲目と最後の曲に物語性をもたせる
  • 片面の時間を意識して曲順を組む

こうしたアルバム単位の構成は、33 1/3回転LPの「片面20分前後」という物理的な制約から生まれた文化でもあります。

ELANのラックに並ぶLPたちも、1枚1枚が「その時代のミュージシャンの物語」そのもので、お客さまにご紹介するときも「このアルバムは、夜中の2時のニューヨークみたいな雰囲気ですよ」といった具合に、時間や空気ごとお届けするつもりで選んでいます。


45回転の誕生 ― シングル盤と「音質重視」というもうひとつの答え

LPが33 1/3回転で長時間再生を実現した翌年、1949年にRCAビクターが投入したのが「45回転、7インチ・シングルレコード」です。

真ん中が大きく空いた「ドーナツ盤」のイメージをお持ちの方も多いかもしれません。

45回転が選ばれた理由

45回転は、33 1/3回転より速く、78回転より遅い「中間」の回転数です。

この中途半端にも見える数字にも、次のような狙いがありました。

  • 回転をやや速くすることで、溝に余裕を持たせ、音の立ち上がりやダイナミックレンジを確保したかった
  • 1曲あたり3〜5分のシングル曲に特化し、「ヒット曲を高音質で届ける」というコンセプトに合っていた
  • 小さな7インチサイズでも、必要な時間をしっかり収められるバランスだった

つまり45回転は、「時間重視の33 1/3回転」と「シンプル高回転の78回転」の間を埋める、「シングル曲のための最適回転数」として登場したのです。

45回転ならではの「音の気持ちよさ」

今でもオーディオファンの間では、「同じ音源なら33回転より45回転カッティングの方が音がよい」と語られることがあります。

理由としては、たとえば次のような点が挙げられます。

  • 速く回ることで、同じ時間あたりに使える溝の距離が長くなり、情報量を盛り込みやすい
  • 内周部の音質劣化(内周歪み)が目立ちにくい
  • 特に大音量・アタックの強い音が、余裕を持って刻める

ELANでも、12インチ45回転盤でカットされたジャズのシングルや、オーディオファイル向けの再発盤をかけると、「ピアノの粒立ちが全然違う」「シンバルのキラキラ感がリアル」と驚かれることが多いです。

同じアルバムが33回転LPと45回転の2種類で出ている場合、興味のある方には聴き比べをおすすめしています。


なぜ33/45/78に落ち着いたのか ― 技術と「聴き方」が決めた最終形

では、なぜレコードの回転数は「33 1/3・45・78」の3つに落ち着いたのでしょうか。

そこには、技術の進歩だけでなく、「人がどう音楽を楽しむか」という視点も大きく関わっています。

技術が選んだ3つのバランス

歴史をざっくり振り返ると、次のような流れになります。

  • 初期…メーカーごとにさまざまな回転数(70〜80台など)が混在
  • 20世紀前半…78回転SPが世界的な標準に
  • 1948年…33 1/3回転LPの登場で「長時間・高音質」路線が確立
  • 1949年…45回転シングルが登場し、「ヒット曲をコンパクトに・高音質で」楽しむスタイルが普及

結果として、

  • 78回転…古いSP盤用
  • 33 1/3回転…アルバム(LP)用
  • 45回転…シングル・EP・一部高音質盤用

という棲み分けが明確になり、プレーヤー側もこの3種類に対応していれば、ほとんどのレコードを再生できるようになりました。

「回転数で音が変わる」を体感してほしい

回転数は単なる数字ではなく、「音楽の表情」を大きく左右する要素です。

ELANでは、こんな楽しみ方もおすすめしています。

  • 同じアルバムの33回転盤と45回転盤を聴き比べてみる
  • 78回転SPと、後年リマスターされたLPやCDを比べて、録音の空気感の違いを味わう
  • あえて間違った回転数で再生して、「なぜ違和感が出るのか」を体感してみる(※実際にやるときは針と盤を傷めない範囲で)

たとえば33回転LPを45回転で再生すると、音程が高くテンポも速くなり、「みんなテンション高めのジャズバンド」になってしまいます。

逆に45回転盤を33回転で回すと、極端に遅くなり、ベーシストが二日酔いのような雰囲気に……これもまた一種の「実験」としては面白い経験です。


ELANで楽しむ「回転数の世界」 ― コーヒー片手に、耳で歴史を味わう

ライブ喫茶ELANは、「音楽とコーヒーを楽しむ隠れ家」として、レコードの回転数の違いも含め、「音の背景にある物語」ごと味わっていただける場でありたいと思っています。

店内での体験例

  • 午後の静かな時間に、33 1/3回転のLPでじっくりジャズの名盤をA面・B面通して聴く
  • 夕方、少し賑やかになってきた頃に、45回転のシングルで切れ味鋭いビートを楽しむ
  • レトロ好きのお客さまと一緒に、78回転SPのスクラッチノイズも含めて「時間旅行」を味わう

お客さまから「どうしてレコードって回転数が違うんですか?」と聞かれたときには、この記事でご紹介したようなお話を、さらに具体的な盤をお見せしながらお話ししています。

レコードのラベルに小さく書かれた「33 1/3」「45」「78」の数字が、単なる記号ではなく、「その時代の技術」「音楽業界の戦略」「人々の聴き方の変化」の結晶なのだと知っていただけたら、とても嬉しく思います。

そして、もしご自宅に古いレコードプレーヤーやレコードが眠っているようでしたら、ぜひ一度ELANのカウンターで、その思い出話を聞かせてください。

コーヒーを片手に「この盤は78回転なのか」「これはLPだから33回転だね」とラベルを眺めながら、お客さまそれぞれの音楽の時間を一緒に楽しめれば、店主としてこれほど幸せなことはありません。

 

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております