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2026年02月09日

カフェで音楽を流す最適な音量とは

心地よいカフェ時間は「音のバランス」から

カフェに入ってまず感じるのは「香り」と「音」ではないでしょうか。コーヒーの香りに包まれながら、心地よいBGMが流れている。その瞬間、人は自然とリラックスします。

しかし、この「心地よさ」を作り出すには、実は繊細な”音量の設計”が欠かせません。どんなに良い曲を流しても、音が大きすぎれば落ち着かず、小さすぎても空間に「間」ができすぎてしまいます。

当店ELANでは、創業当初から「音の居心地」を追求してきました。昼下がりの珈琲時間、夕暮れのライブタイム、そして閉店間際の静けさ。時間帯やお客様の人数によって、音の大きさをほんの少し変えるだけで、空間の印象がまるで違ってくるのです。

たとえば、平日の午後。窓際で本を読んでいるお客様が多い時間は、会話の邪魔をしない程度に、やや小さめの音量。 一方、週末の夜は少し音を上げ、空気を包みこむようなジャズの音色で、グラスを傾ける時間を演出します。 同じスピーカー、同じ曲でも、その日の空気に合わせた”音のバランス”を探ることが、ELANのこだわりです。


「ちょうどいい音量」はどこで決まるのか

理想の音量とは、数字で言えば60〜70dB(デシベル)前後と言われます。 これは、近くの人と無理なく会話でき、かつ外の雑音を自然に包み込む程度。一般的に「普通の会話」や「静かなオフィス」くらいの音の大きさです。

ただし、実際のカフェでは、空間の広さや天井の高さ、壁の素材などによって音の響き方が大きく変わります。 木の壁に囲まれた小さな店内では、少しの音でも響きやすく、逆にコンクリート造の広いカフェでは音が吸われ、同じ70dBでも「静かに感じる」ことが多いのです。

私はいつも、スピーカーの位置と客席の距離を意識します。 お客様が座る位置の平均値を見定め、そのあたりに”耳に届く音”が自然になるよう、音量を細かく調整します。店の中央は少し強め、隅のソファ席は控えめ。お客様がどの席にいても居心地よく過ごせるよう、BGMの音の「層」を意識しています。

ある常連さんから「ここでは音が包みこんでくれる感じがする」と言われたことがあります。 それはまさに、このバランスが取れた瞬間の感覚。音が主張しすぎず、でも店の空気に確かに存在している──そこに、最適な音量の答えがあるのかもしれません。


音楽は会話の邪魔をしない”もうひとりのマスター”

音量の加減についてよく質問されます。 「もう少し音を上げたほうが雰囲気が出るのでは?」とか、「静かな曲ばかりだと寂しくない?」など。 ですが、カフェでの音楽の主役はお客様です。BGMはあくまで背景。音楽そのものが話しかけてくるようなボリュームでは、せっかくの珈琲の味や会話のリズムが乱れてしまいます。

私が理想とするのは「音楽が空気のようにそこにある状態」。 具体的には、隣の席の声がほんのり聞こえるけれども気にならない、そんな微妙な音のレベルです。常連の方が「つい長居してしまう」と言ってくださるのは、音の存在感と距離感が心を落ち着かせるからだと思います。

ある日、若いカップルのお客様が来店し、ジャズのレコードを聴きながら笑い合っていました。 帰り際、「音がちょうどいいですね。落ち着けました」と言われた時は、思わず笑顔になりました。 言葉にならない居心地の良さ──それを支えているのは、他でもない”音量”の設定なのです。


BGMで空間が変わる──時間帯ごとの演出

ELANでは、時間帯ごとに音楽のボリュームとジャンルを変えています。

  • 午前: 少し明るめのアコースティックやピアノジャズ。音量は控えめで、静かな朝の会話を包み込みます。
  • 午後: 読書や一人時間を楽しむ方が多いため、スローテンポなボサノバやソフトジャズ。音の余韻を大切に。
  • 夕方以降: アルコールを楽しむお客様が増えるため、やや音量を上げてライブ感を演出。ブルースやソウルを中心に。

この時間帯の切り替えを意識することで、同じ空間でも「流れる時間の密度」が変わります。 音が空気を支配しすぎず、かといって沈み込まない。そのギリギリを探るのが、マスターの腕の見せどころです。


音量だけでなく「音の質」も大切に

音量と同じくらい大切なのが「音質」です。 BGM専用のスピーカーを正しく設置していても、EQ(音のバランス調整)が合っていないと、耳に刺さるような高音や、もこもこした低音になってしまいます。 当店では、アナログレコードの温かみを大切にするため、中音域をやや前に出し、長時間聴いても疲れにくい音づくりを心がけています。

スピーカーの向き一つで印象は大きく変わります。壁に反射させて柔らかくするか、天井方向に分散させるか。 より自然な”包まれ感”を目指して、少しずつ微調整を重ねてきました。まるで豆の焙煎具合を探るように、音も日々チューニングを続けています。

ライブ喫茶ELANについて

ここで少し、当店のご紹介をさせてください。

ライブ喫茶ELAN(エラン)は、名古屋市熱田区の静かな住宅街にある「音楽とコーヒーを楽しむ隠れ家」です。金山総合駅から大津通りを南へ歩いて15分ほど。地下鉄名城線「西高蔵」駅からは徒歩7分、JR熱田駅からも徒歩9分ほどの場所にあります。少しだけ見つけにくい場所かもしれませんが、都会の喧騒から離れているからこそ、音に集中できる空間が生まれました。

扉を開けると、壁一面に並ぶレコードジャケットがまず目に飛び込んできます。ジャズ、クラシック、ボサノバ、ロック──ジャンルを問わず、往年の名盤から知る人ぞ知る一枚まで取り揃えています。「このジャケット、懐かしいね」とレコード棚の前で足を止めるお客様の姿は、ELANの日常風景のひとつです。

音響設備には特にこだわりました。店内はオーナー自らが設計し、JBLのスピーカーやレーザーターンテーブルなど、プロ仕様の機材を備えています。レーザーターンテーブルは針ではなく光でレコードの溝を読み取るため、盤面を傷つけることなく、原音に限りなく近い音を再現できます。「同じレコードなのに、家で聴くのとまるで違う」と驚かれるお客様も少なくありません。

また、店内にはグランドピアノとアコースティックドラムセットも常設しています。ライブ演奏やセッションを定期的に開催しており、ジャズナイトやシャンソン、フォークの夕べなど、さまざまなジャンルのアーティストがこのステージに立ってきました。スピーカーから流れる音とはまた違う、生演奏ならではの空気の振動を、コーヒー片手に味わっていただけます。

珈琲は、ハンドドリップで一杯ずつ丁寧にお淹れしています。店名を冠した「エランブレンド」は、音楽を聴きながらゆっくり飲むことを前提にブレンドしたオリジナル。苦味と酸味のバランスを整え、長居しても飲み疲れしない柔らかな味わいに仕上げています。レギュラーコーヒーやアメリカンのほか、パスタなどの軽食もご用意していますので、ランチから夜のひとときまで、お好きな時間にお立ち寄りください。

営業時間は10時から23時まで。定休日は毎週月曜日と第1・第3火曜日です。平日の昼下がりはレコードをじっくり楽しみたい方に、週末の夜はライブの熱気を感じたい方におすすめです。初めての方も気軽にお越しいただければ嬉しいです。

お客様のなかには、「ここで初めてレコードの音を聴いた」という若い世代の方もいらっしゃいます。スマートフォンで手軽に音楽が聴ける時代だからこそ、空間ごと音に包まれる体験は新鮮に映るようです。レコードに針を落とす瞬間の小さなノイズ、そこから広がる温かい音の世界に思わず目を閉じてしまう──そんな光景を見るたびに、この店を続けてきてよかったと心から感じます。

名古屋には昔から「ジャズ喫茶」「ロック喫茶」など、音楽とともに過ごす喫茶文化が根づいてきました。ELANもその流れを受け継ぎながら、こだわりの音響設備と一杯の珈琲で”音楽を味わう時間”を提案しています。決して敷居の高い場所ではありません。音楽に詳しくなくても、ただコーヒーを飲みながらぼんやり過ごすだけでも構わないのです。レコード棚を眺めて気になるジャケットを手に取ってみるのもいい。お一人でも、ご友人とでも、それぞれのペースで自由に過ごしていただける場所でありたいと思っています。名古屋の喫茶文化が長年大切にしてきた「時間の豊かさ」を、やわらかな音と香り高い一杯とともに、ぜひ感じにいらしてください。


まとめ:音はおもてなしの一部

「いい音」は、必ずしも「大きな音」ではありません。 お客様がゆっくりと過ごし、珈琲や会話を楽しむための背景にそっと寄り添う。それこそが、カフェにおける”最適な音量”の本質だと思っています。

これから喫茶店やカフェを始める方に伝えたいのは、「音量の調整」も接客の一部だということ。 美味しいコーヒーや心地よい照明と同じように、音の存在がその場の印象を決めます。 心が落ち着く音を探しながら、一杯の珈琲とともに、今日もレコードを回しています。

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております