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2025年07月24日
絶対音感は才能?訓練で身につく?都市伝説に近い絶対音感の真相、相対音感との違いも解説
音楽とコーヒーを楽しむ隠れ家、ライブ喫茶ELANより
名古屋の奥座敷、静かな街角に佇む当店ライブ喫茶ELANにお越しいただき、ありがとうございます。広く落ち着いた雰囲気の店内には、往年の名曲を収めたレコードが所狭しと並んでいます。音楽を愛する皆様が、コーヒーの香りとともに、ゆったりとしたくつろぎの時間をお過ごしいただけるよう、日々心を込めてお迎えしております。
今回は、音楽愛好家の間でしばしば話題となる「絶対音感」について、その真相に迫ってみたいと思います。まるで都市伝説のように語られることもある絶対音感の実態、そして相対音感との違いについて、詳しく解説いたします。
絶対音感とは何か
絶対音感とは、基準となる音を聞かずに、単独で鳴らされた音の高さを正確に判断できる能力のことを指します。例えば、ピアノの「ド」の音を聞いただけで、それが「ド」であると即座に認識できる能力です。この能力を持つ人は、楽器の調律が微妙にずれていることも敏感に感じ取ることができます。
当店でも、時折お客様の中に「このピアノ、少し調律が狂っているようですね」と的確に指摘される方がいらっしゃいます。そのような方々の多くが、絶対音感の持ち主だったりします。レコードを聴いていても、「この録音は半音高く収録されているのでは」と気づかれる方もいらっしゃり、その鋭敏な聴覚には驚かされます。
絶対音感には、いくつかの段階があります。最も高度なレベルでは、あらゆる音を正確な音名で識別できます。楽器の音だけでなく、車のクラクションや電話の着信音、さらには人の話し声の音程まで音名で認識できる人もいます。一方で、ピアノの音のみ、あるいは特定の楽器の音のみを正確に判断できるという、より限定的な絶対音感を持つ人もいます。
絶対音感は生まれつきの才能なのか
これまで長い間、絶対音感は生まれつきの特別な才能であると考えられてきました。確かに、絶対音感を持つ人の多くは、幼少期からその能力を発揮していることが多く、「天から授かった才能」のように思われがちです。
しかし、近年の研究により、絶対音感の獲得には「臨界期」が存在することが明らかになってきました。臨界期とは、特定の能力を習得するのに最も適した時期のことです。絶対音感の場合、この臨界期は一般的に6歳頃までとされています。
この時期に適切な音楽教育を受けることで、絶対音感を身につけることが可能であることが研究で示されています。つまり、完全に生まれつきの才能というわけではなく、適切な時期に適切な訓練を行うことで獲得できる能力なのです。
当店にいらっしゃる音楽愛好家の皆様とお話しすると、絶対音感を持つ方の多くが「3歳からピアノを始めた」「幼稚園の頃から楽器に触れていた」といった共通点を持っていることがわかります。これは、まさに臨界期に音楽教育を受けていたことを示しています。
訓練で絶対音感は身につくのか
では、大人になってからでも絶対音感は身につくのでしょうか。これは音楽を愛する多くの人が抱く疑問です。
残念ながら、現在の研究では、臨界期を過ぎてから絶対音感を完全に身につけることは非常に困難とされています。しかし、まったく不可能というわけではありません。大人になってからでも、集中的な訓練により、ある程度の絶対音感的な能力を身につけることは可能です。
ただし、これには非常に多くの時間と努力が必要であり、幼少期に自然に身につけた絶対音感ほど正確で安定したものにはならないことが多いです。また、個人差も大きく、同じ訓練を行っても結果には大きな差が生まれます。
当店でも、大人になってから「絶対音感を身につけたい」という想いで楽器を始められる方がいらっしゃいます。そのような方々を見ていると、完全な絶対音感は身につかなくても、音への感性や音楽的な理解力は確実に向上していることを感じます。
相対音感との違い
絶対音感と対比して語られることが多いのが「相対音感」です。相対音感とは、基準となる音を聞いた上で、他の音との関係性を判断する能力のことです。
例えば、「ド」の音を聞いた後に別の音を聞いて、「これは『ド』から完全5度上の『ソ』だ」と判断できる能力が相対音感です。これに対して絶対音感は、基準音なしに「これは『ソ』だ」と判断できる能力です。
音楽を演奏したり楽しんだりする上で、実は相対音感の方が重要だと言われることも多いです。なぜなら、音楽は音と音の関係性、つまり「音程」や「和音」の響きが基本となっているからです。
当店でライブ演奏を行うミュージシャンの皆様とお話しすると、「絶対音感はなくても、相対音感があれば十分に音楽を楽しめる」とおっしゃる方が多いです。実際、多くのプロミュージシャンが相対音感を基盤として活動しています。
相対音感は、絶対音感とは異なり、大人になってからでも訓練により身につけることが可能です。楽器の練習や音楽理論の学習を通じて、徐々に音の関係性を理解し、相対音感を向上させることができます。
絶対音感の利点と欠点
絶対音感を持つことには、多くの利点があります。楽器の調律の狂いを即座に察知できる、楽譜を見なくても聞いた音楽を正確に再現できる、移調楽器の実音を瞬時に判断できるなどです。
しかし、意外なことに、絶対音感には欠点もあります。例えば、ピアノが微妙に調律が狂っていると、それが非常に気になってしまい、音楽を純粋に楽しむことが困難になることがあります。また、移調された音楽を聴くと、元の調との違いに違和感を覚えることもあります。
当店でも、絶対音感をお持ちのお客様が「このレコードは回転数が微妙に速くて、音程が高くなっている」と気づかれることがあります。そのような微細な違いを敏感に感じ取る能力は素晴らしいものですが、同時に、完璧でない音響環境では音楽を楽しむことが困難になることもあるのです。
絶対音感の種類と精度
絶対音感には、実はいくつかの種類があります。最も一般的なのは「音名同定能力」で、これは聞いた音を正確な音名で答えることができる能力です。
次に「音高記憶能力」があります。これは、一度聞いた音の高さを長期間記憶し、後で正確に再現できる能力です。さらに「音高生成能力」もあり、これは楽器なしに正確な音高で歌うことができる能力です。
精度についても個人差があります。完全に正確な人もいれば、数セント(半音の100分の1)の誤差がある人もいます。また、特定の楽器の音のみ正確に判断できる「部分的絶対音感」を持つ人もいます。
当店にいらっしゃるお客様の中にも、「ピアノの音だけは完璧にわかるけれど、弦楽器の音は少し自信がない」とおっしゃる方がいらっしゃいます。これも立派な絶対音感の一種です。
絶対音感と音楽的才能の関係
多くの人が誤解しているのは、絶対音感があれば音楽的才能に優れているという考えです。確かに絶対音感は音楽活動において有用な能力ですが、それだけで音楽的才能が決まるわけではありません。
音楽的才能には、リズム感、表現力、創造性、感情表現など、様々な要素が含まれます。絶対音感は、これらの要素の中の一つに過ぎません。相対音感しか持たない人でも、素晴らしい音楽家になることは十分可能です。
実際、当店でライブ演奏を行う多くのミュージシャンは、絶対音感を持たない方々です。しかし、彼らの演奏は聴衆の心を深く動かし、音楽の本質的な美しさを伝えています。音楽の価値は、絶対音感の有無ではなく、表現力や感情の深さにあるのです。
絶対音感訓練の方法
幼少期に絶対音感を身につけるための訓練方法も研究されています。最も効果的とされるのは、「固定ド」による音感教育です。これは、ピアノの「ド」の音を常に「ド」として認識させる訓練法です。
具体的には、毎日決まった時間に正確な音程で歌う練習、楽器の音を聞いて音名を答える練習、楽器なしで正確な音程で歌う練習などが行われます。重要なのは、継続性と正確性です。
ただし、これらの訓練は専門的な指導の下で行われることが重要です。間違った方法で訓練を行うと、かえって音感の発達を妨げることもあります。
当店でも、小さなお子様連れのご家族が来店されることがありますが、そのようなお子様が音楽に興味を示されると、「まずは楽しく音楽に触れることから始めてくださいね」とお伝えしています。
絶対音感を持つ人の生活
絶対音感を持つ人の日常生活は、音に対する感受性が高いため、一般の人とは異なる体験をすることが多いです。例えば、環境音も音程として認識されるため、電話の着信音や車のクラクション、さらには人の話し声も音名として聞こえます。
これは時として快適な体験をもたらします。日常の中で音楽的な美しさを見つけることができるからです。しかし、一方で、不快な音や不正確な音程に敏感になりすぎて、ストレスを感じることもあります。
当店のお客様の中にも、「エアコンの音が気になって集中できない」「隣のテーブルの方の鼻歌が微妙に音程が外れていて気になる」といった悩みを打ち明けられる方がいらっしゃいます。絶対音感は素晴らしい能力ですが、時として生活の質に影響を与えることもあるのです。
文化的背景と絶対音感
興味深いことに、絶対音感の発現率には文化的な違いがあることが研究で明らかになっています。特に、東アジア系の人々の間では絶対音感の発現率が高いことが知られています。
これには、言語的な要因が関係していると考えられています。中国語やベトナム語などの声調言語を話す人々は、音の高さの変化に敏感である必要があるため、絶対音感を発達させやすいという説があります。
また、音楽教育の方法も影響していると考えられています。東アジアの音楽教育では、固定ドによる音感教育が一般的であり、これが絶対音感の発達を促進している可能性があります。
当店でも、様々な文化的背景を持つお客様にお越しいただいていますが、確かに中国や韓国からいらっしゃる音楽愛好家の皆様の中には、絶対音感をお持ちの方が多いように感じます。
現代技術と絶対音感
現代では、スマートフォンアプリやコンピューターソフトウェアを使って、音程を正確に測定することが可能になっています。これらの技術は、絶対音感を持たない人でも、正確な音程を確認することを可能にしています。
しかし、これらの技術的な補助手段があっても、絶対音感の価値が失われることはありません。なぜなら、絶対音感は単に音程を識別する能力だけでなく、音楽的な感性や表現力とも深く関わっているからです。
当店でも、お客様が楽器の調律にスマートフォンのアプリを使われることがありますが、絶対音感をお持ちの方は、アプリよりも速く、そして時にはより正確に音程の狂いを発見されることがあります。
絶対音感の研究の現状
絶対音感に関する研究は、現在も活発に行われています。特に、脳科学の発達により、絶対音感を持つ人の脳の構造や機能について、詳細な研究が進んでいます。
これらの研究により、絶対音感を持つ人の脳では、音程を処理する領域が一般の人よりも発達していることが明らかになっています。また、絶対音感の獲得には、遺伝的な要因と環境的な要因の両方が関わっていることも示されています。
将来的には、これらの研究成果を基に、より効果的な絶対音感訓練法が開発される可能性もあります。また、大人になってからでも絶対音感を身につけることができる方法が発見されるかもしれません。
音楽を楽しむために本当に必要なこと
長年にわたって音楽愛好家の皆様とお話しさせていただいている中で感じるのは、絶対音感の有無よりも、音楽に対する情熱や愛情の方がはるかに重要だということです。
音楽の本質は、技術的な正確性だけでなく、感情の表現や人とのコミュニケーションにあります。絶対音感を持たない人でも、音楽を深く理解し、美しい演奏をすることは十分可能です。
当店でライブ演奏を行うミュージシャンの皆様を見ていると、最も大切なのは音楽への愛情と、それを聴く人々への思いやりであることがよくわかります。絶対音感は確かに素晴らしい能力ですが、それがなくても音楽を心から楽しむことができるのです。
まとめ
絶対音感は、確かに特別な能力です。しかし、それは決して神秘的な超能力ではなく、適切な時期に適切な訓練を行うことで身につけることができる能力です。また、絶対音感を持つことが音楽的才能のすべてを決めるわけでもありません。
音楽の世界は、絶対音感を持つ人も持たない人も、それぞれの方法で楽しむことができる豊かな世界です。大切なのは、自分の能力に固執することなく、音楽そのものの美しさや感動を追求することです。
当店ライブ喫茶ELANでは、絶対音感をお持ちの方も、相対音感で音楽を楽しまれる方も、どなたでも歓迎いたします。音楽とコーヒーの香りに包まれながら、それぞれの方法で音楽を楽しんでいただければと思います。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。音楽について語り合い、共に感動を分かち合える時間を過ごしましょう。
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Cafe & Music ELAN
やわらかな音と、香り高い一杯を。
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定休日|月曜・第1&第3火曜日
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ゆったりと流れる時間のなかで、
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あなたの今日が、少しやさしくなるように。
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