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2025年10月01日

ブルースが現代ポップスの原点といわれる理由〜名古屋のライブ喫茶ELANで感じる音楽の系譜〜

こんにちは、ライブ喫茶ELANです。
今回は、当店でもよくリクエストをいただく「ブルース」について、なぜ現代ポップスの原点と呼ばれるのかをお話ししたいと思います。

私たちの店では、往年のブルース名盤から現代のポップスまで、幅広いジャンルのレコードを取り揃えています。お客様とお話しする中で、「ブルースってよく分からないけど、なんで重要なの?」というご質問をよくいただきます。

確かに、ブルースは一見すると古臭く感じられるかもしれません。しかし、実際に当店の音響設備でブルースの名盤を聴いていただくと、多くのお客様が「あ、この感じ、現代の曲でも聴いたことがある!」と驚かれます。

ブルースとは何か?〜アフリカ系アメリカ人の魂の音楽〜

ブルースとは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、アメリカ南部のアフリカ系アメリカ人たちによって生み出された音楽ジャンルです。「ブルー(憂鬱)」という言葉が示すように、悲しみや苦しみ、そして希望を歌った音楽でした。

ブルースの基本的な特徴

当店でブルースをリクエストされるお客様によく説明するのが、ブルースの「12小節進行」という基本構造です。これは音楽理論の専門用語ですが、簡単に言えば「決まったパターンでコードが進行する」仕組みのことです。

具体的には、以下のような構造になっています:

  • 1〜4小節目:主和音(トニック)
  • 5〜6小節目:属和音(ドミナント)
  • 7〜8小節目:主和音に戻る
  • 9〜10小節目:再び属和音
  • 11〜12小節目:主和音で終結

この「12小節進行」は、現代のロック、ポップス、R&Bにも頻繁に使われています。

ブルーノートという革新

ブルースのもう一つの重要な特徴が「ブルーノート」と呼ばれる音程です。これは、通常の西洋音楽の音階を微妙に下げた音のことで、独特の切ない響きを生み出します。

先日、当店にいらしたジャズピアニストの方が実際にピアノでブルーノートを弾いて説明してくださったのですが、その瞬間、店内にいた全てのお客様が「ああ、これがブルースの音なんだ」と納得された表情をされていました。

このブルーノートは、後にジャズ、ロック、そして現代のポップスにも受け継がれ、音楽に深みと感情的な表現力を与える重要な要素となったのです。

現代ポップスへの直接的な影響〜ロックンロールの誕生〜

ブルースが現代ポップスの原点と呼ばれる最大の理由は、1950年代に誕生した「ロックンロール」への直接的な影響にあります。

エルヴィス・プレスリーとブルースの融合

当店のレコードコレクションには、エルヴィス・プレスリーの初期録音も収蔵されています。彼の代表曲「ハートブレイク・ホテル」や「ハウンド・ドッグ」を聴いていただくと、明らかにブルースの影響を感じることができます。

エルヴィスは、アフリカ系アメリカ人のブルースミュージシャンたちの演奏を幼い頃から聴いて育ちました。彼が革新的だったのは、ブルースの感情表現とカントリーミュージックのメロディーを組み合わせ、さらに若々しいエネルギーを加えたことでした。

チャック・ベリーの革命

ロックンロールの父と呼ばれるチャック・ベリーも、ブルースを基盤とした音楽を作り上げました。彼の「ジョニー・B・グッド」は、典型的な12小節ブルース進行を使用していますが、従来のブルースよりもテンポが速く、若者向けの歌詞が付けられています。

先月、当店でチャック・ベリー特集を行った際、10代のお客様から「この曲、現代のロックバンドが演奏していても全然おかしくない!」という感想をいただきました。まさに、ブルースが現代音楽に与えた影響の大きさを物語るエピソードです。

ローリング・ストーンズとブリティッシュ・インベージョン

1960年代、イギリスのミュージシャンたちがアメリカのブルースに魅了され、それを独自に解釈して世界に発信しました。これが「ブリティッシュ・インベージョン」と呼ばれる現象です。

ローリング・ストーンズのバンド名は、ブルースの巨匠マディ・ウォーターズの楽曲「ローリン・ストーン」から取られています。彼らの初期楽曲の多くは、シカゴ・ブルースの影響を強く受けており、それが後の世界的な成功の基盤となりました。

当店でローリング・ストーンズの初期アルバムをかけると、必ずと言っていいほど「このギターリフ、どこかで聴いたことがある」という反応をいただきます。それは、彼らが演奏したブルースの要素が、現代の多くのアーティストに受け継がれているからなのです。

ジャズとの関係性〜相互に影響し合う音楽文化〜

ブルースが現代ポップスの原点である理由を理解するには、ジャズとの関係性も無視できません。実際、ブルースとジャズは同じ時代、同じ地域で生まれた「兄弟」のような存在です。

即興演奏という共通点

ジャズの最大の特徴である「即興演奏」は、実はブルースから受け継がれた要素です。ブルースミュージシャンたちは、基本の12小節進行の上で自由に歌詞を変えたり、ギターソロを展開したりしていました。

当店では毎月第3土曜日にジャムセッションを開催していますが、参加されるミュージシャンの皆さんが最初に演奏するのは、決まってブルースです。理由を伺うと、「ブルースは即興の基礎だから」という答えが返ってきます。

ビッグバンド時代からビバップへ

1930年代から1940年代にかけて、ジャズはビッグバンドの時代を迎えました。この時期のスウィング・ジャズにも、ブルースの要素は深く根ざしています。デューク・エリントンの楽曲には、ブルース形式を発展させた名曲が数多く存在します。

その後、1940年代後半に登場したビバップという革新的なジャズスタイルでも、ブルースは重要な役割を果たしました。チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーといったビバップの開拓者たちは、ブルースを高度に発展させ、現代ジャズの基礎を築いたのです。

R&Bからソウルミュージックへ〜ブルースの現代的進化〜

ブルースの影響は、R&B(リズム・アンド・ブルース)やソウルミュージックの発展にも直結しています。これらのジャンルを通じて、ブルースの精神は現代のポップスにまで受け継がれています。

レイ・チャールズの革新

「ソウルの神様」と呼ばれるレイ・チャールズは、ブルースにゴスペル(黒人霊歌)の要素を組み合わせ、ソウルミュージックという新しいジャンルを生み出しました。彼の「ホワット・アイド・セイ」は、まさにブルースとゴスペルの融合の傑作です。

当店でレイ・チャールズの楽曲をかけると、年配のお客様は懐かしそうに聴き入り、若いお客様は「この声、現代のR&Bシンガーみたい!」と驚かれます。それは、現代のR&Bアーティストたちが、レイ・チャールズを通じてブルースの遺産を受け継いでいるからなのです。

モータウンサウンドとブルース

1960年代のデトロイトで生まれたモータウンサウンドも、ブルースの影響を強く受けています。スティーヴィー・ワンダー、ダイアナ・ロス&シュープリームス、テンプテーションズなど、モータウンを代表するアーティストたちの楽曲には、ブルースのコード進行や感情表現が随所に見られます。

特に、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」では、従来のポップスよりも深刻な社会問題を扱った歌詞と、ブルースに根ざした情感豊かなメロディーが組み合わされています。この楽曲は、後のヒップホップやネオソウルにも大きな影響を与えました。

アレサ・フランクリンの表現力

「クイーン・オブ・ソウル」アレサ・フランクリンの歌唱法にも、ブルースの影響が色濃く表れています。彼女の代表曲「リスペクト」や「チェイン・オブ・フールズ」では、ブルースの感情表現技法が現代的にアレンジされています。

当店で定期的に開催している「女性ヴォーカリスト特集」では、必ずアレサの楽曲を取り上げますが、現代の女性シンガーたちが彼女から受けた影響の大きさを改めて実感します。

ヒップホップとブルースの意外な関係〜サンプリング文化を通じて〜

一見すると全く異なるジャンルに見えるヒップホップにも、実はブルースの影響が深く根ざしています。特に「サンプリング」という手法を通じて、ブルースの遺産は現代の音楽シーンにも受け継がれています。

サンプリングとは何か

サンプリングとは、既存の楽曲の一部分を切り取って、新しい楽曲の素材として使用する手法です。ヒップホップの発展初期から現在まで、多くのプロデューサーがブルースの名盤からサンプリングを行っています。

例えば、ジェイ・Zの「公共サービスアナウンスメント」では、ブルースの巨匠B.B.キングのギターフレーズがサンプリングされています。このような手法により、若い世代にもブルースの音楽的要素が伝わっているのです。

エミネムとブルースの出会い

興味深い事例として、白人ラッパーのエミネムが挙げられます。彼の楽曲「スタン」では、ブリティッシュシンガーのディドの楽曲をサンプリングしていますが、そのディドの楽曲自体が、ブルースの影響を受けた作品なのです。

このように、直接的ではなくても、間接的にブルースの影響が現代の音楽に受け継がれている例は数え切れません。

現代ポップスアーティストとブルースの継承

現代のポップスアーティストたちも、意識的・無意識的にブルースの影響を受けています。これは、ブルースが現代ポップスの原点であることを証明する重要な証拠です。

アデルの表現力

イギリスのシンガー・ソングライター、アデルの楽曲には、明確にブルースの影響が見られます。彼女の代表曲「ローリング・イン・ザ・ディープ」では、ブルースの12小節進行を現代的にアレンジした構成が使われています。

また、アデルの歌唱法にも、ブルースの感情表現技法が取り入れられています。特に、声の震えや節回しには、アレサ・フランクリンやエッタ・ジェームスといったブルース・ソウルの女王たちからの影響が感じられます。

ジョン・メイヤーのギタープレイ

現代のギタリストとして高く評価されているジョン・メイヤーは、公然とブルースへの愛を語っています。彼のギタープレイには、B.B.キング、アルバート・キング、スティーヴィー・レイ・ヴォーンといったブルース・ギタリストからの影響が明確に表れています。

当店でジョン・メイヤーの楽曲をリクエストされたお客様から、「このギターソロ、ブルースっぽいね」というコメントをよくいただきます。実際、彼の「グラヴィティー」や「スロー・ダンシング・イン・ア・バーニング・ルーム」では、ブルースの技法が現代的にアレンジされています。

ビヨンセとデスティニーズ・チャイルド

R&Bの女王として君臨するビヨンセも、ブルースの遺産を受け継ぐアーティストの一人です。デスティニーズ・チャイルド時代の楽曲から現在のソロ活動まで、彼女の音楽にはブルースのコード進行や感情表現が随所に使われています。

特に、「クレイジー・イン・ラブ」では、ブルースの12小節進行を基にしたコード構成が使われており、現代のダンスミュージックとブルースの融合を見事に表現しています。

ライブ喫茶ELANで体験するブルースの魅力

当店では、これまでお話ししてきたブルースの魅力を、実際に高品質な音響設備で体験していただくことができます。

音響設備へのこだわり

私が店内の音響設備を設計する際に最も重視したのは、ブルースの持つ「生々しさ」と「感情の深さ」を忠実に再現することでした。特に、ブルーノートの微妙な音程変化や、ヴォーカルの息遣いまで再現できるよう、スピーカーの配置や音響特性を調整しています。

お客様からは、「家で聴くのとは全然違う!」「ブルースってこんなに迫力があったんですね」といった感想をよくいただきます。これは、当店の音響設備がブルースの本来の魅力を引き出しているからだと自負しています。

お客様との音楽談義

当店で最も楽しい時間の一つが、お客様との音楽談義です。ブルースをリクエストされたお客様と、その楽曲が現代のどのアーティストに影響を与えているかを語り合うのは、本当に充実した時間です。

先日も、70代のお客様が「昔聴いたB.B.キングと、最近の若いギタリストって、どこか通じるものがあるのね」とおっしゃっていました。音楽の系譜が世代を超えて受け継がれていることを実感できる瞬間です。

まとめ〜ブルースという永遠の泉〜

ここまで、ブルースが現代ポップスの原点と呼ばれる理由について詳しく解説してきました。12小節進行やブルーノートといった音楽的要素から、ロックンロール、R&B、ジャズ、さらにはヒップホップまで、ブルースの影響は現代音楽のあらゆるジャンルに及んでいます。

ブルースが特別なのは、単に音楽的技法を提供しただけでなく、「感情を音楽で表現する」という根本的なアプローチを確立したことです。悲しみも喜びも、怒りも希望も、全てを音楽に込めて表現するブルースの精神は、現代のあらゆるポピュラー音楽に受け継がれています。

音楽とコーヒーを楽しみながら、ブルースが現代ポップスに与えた影響を実際に体験してください。きっと、普段聴いている音楽がより深く、より豊かに聞こえるようになるはずです。

皆様のご来店を心よりお待ちしております。音楽の原点であるブルースの魅力を、ぜひライブ喫茶ELANで再発見してください。

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております