ピアノの鍵盤はなぜ白黒?その理由と歴史

音楽とコーヒーを楽しむ隠れ家

広く落ち着いた雰囲気の店内に、往年の名曲を収めたレコードが所狭しと並ぶ。
ライブ喫茶ELANは、音楽とコーヒーを楽しめる喫茶店です。音楽を楽しみながら、ゆったりとしたくつろぎの時間をお過ごしください。


こんにちは、ライブ喫茶ELANです。
今日もコーヒーの香りと音楽が店内を包んでいます。

店内のグランドピアノを眺めながら、お客様からよくいただく質問があります。「なぜピアノの鍵盤は白と黒なのでしょうか?」
今回は、この身近でありながら奥深い疑問について、歴史を紐解きながらお話しさせていただきます。

ピアノの前身たち:鍵盤楽器の歴史を辿る

ピアノの鍵盤の色について語る前に、まずは鍵盤楽器の歴史から始めましょう。現在私たちが親しんでいるピアノは、実は長い歴史の中で進化を遂げてきた楽器なのです。

オルガンの時代

鍵盤楽器の歴史は、古代ギリシャ時代のヒドラウリス(水オルガン)まで遡ります。しかし、本格的な鍵盤楽器として発展したのは、中世ヨーロッパのパイプオルガンからでした。

12世紀から13世紀頃の初期のオルガンは、現在とは大きく異なる外観をしていました。鍵盤は木製で、すべて同じ色に塗られていることが多く、現在のような白黒の区別はありませんでした。当時の鍵盤は現在よりもはるかに大きく、演奏には拳で鍵盤を叩く必要があったほどです。

クラヴィコードとハープシコード

14世紀から15世紀にかけて、クラヴィコードとハープシコードが登場します。これらの楽器は、現在のピアノの直接的な祖先と言えるでしょう。

クラヴィコードは弦を金属片で叩く仕組みで、非常に繊細な音色を持っていました。一方、ハープシコードは弦をプレクトラム(爪のような部品)で弾く仕組みで、より大きな音量を出すことができました。

この時代の鍵盤楽器では、すでに現在の12音階に相当する音程が使われていましたが、鍵盤の色は製作者や地域によって様々でした。興味深いことに、当時は現在とは逆に、半音を表す鍵盤が白く、全音を表す鍵盤が黒く塗られることも珍しくありませんでした。

白黒鍵盤の誕生:実用性からの必然

視認性の向上

ピアノの鍵盤が現在のような白黒のパターンになった最大の理由は、視認性の向上にあります。88鍵もある長い鍵盤において、演奏者が瞬時に正しい位置を把握するためには、明確な視覚的な手がかりが必要でした。

白い鍵盤(ナチュラルキー)と黒い鍵盤(シャープ・フラットキー)の配置パターンは、オクターブごとに規則的に繰り返されます。このパターンにより、演奏者は鍵盤を見ただけで、どの音程にいるのかを即座に判断できるようになりました。

触覚による識別

視覚だけでなく、触覚による識別も重要な要素でした。黒鍵は白鍵よりも少し高い位置にあり、また幅も狭くなっています。これにより、演奏者は見なくても指の感覚だけで、現在どの鍵盤に触れているかを判断できます。

特に、感情豊かな表現が求められるロマン派の時代以降、演奏者は楽譜に集中しながら演奏することが多くなりました。このような演奏スタイルにおいて、触覚による鍵盤の識別は非常に重要な要素となったのです。

材料と製作技術の発展

象牙と黒檀の時代

18世紀から19世紀にかけて、高級なピアノの白鍵には象牙が、黒鍵には黒檀が使用されるようになりました。象牙は美しい白色を持ち、適度な摩擦感があるため、演奏者の指にしっくりと馴染みました。一方、黒檀は硬質で美しい黒色を持ち、耐久性にも優れていました。

象牙の表面は微細な凹凸があり、汗をかいた指でも滑りにくいという利点がありました。また、長時間の演奏でも手触りが変わりにくく、プロの演奏家たちに愛用されました。

しかし、象牙の使用は環境保護の観点から次第に問題視されるようになり、現在では代替材料が使用されています。

現代の材料技術

現代のピアノでは、白鍵にはアクリル樹脂や特殊な合成樹脂が使用され、黒鍵には特殊な木材や樹脂が使用されています。これらの材料は、象牙や黒檀の良い特性を再現しながら、環境負荷を軽減し、コストも抑えることができます。

高級ピアノでは、演奏感を重視して、表面に特殊な加工を施し、象牙に近い触感を実現しているものもあります。

音楽理論との関係

12音平均律と鍵盤配置

現在のピアノの鍵盤配置は、12音平均律という音律システムと密接に関係しています。1オクターブを12等分した音程の中で、7つの基本音(ドレミファソラシ)を白鍵に、5つの半音(シャープ・フラット)を黒鍵に配置しています。

この配置により、あらゆる調性での演奏が可能となり、転調も容易になりました。バロック時代のJ.S.バッハが「平均律クラヴィーア曲集」を作曲できたのも、この鍵盤配置があってこそと言えるでしょう。

調性と鍵盤の関係

白鍵のみを使用したハ長調(Cメジャー)は、最も基本的な調性として位置づけられています。これは偶然ではなく、鍵盤楽器の発展と音楽理論の発展が相互に影響し合った結果なのです。

一方で、黒鍵を多用する調性(例:嬰ヘ長調)は、より複雑な響きを持ち、ロマン派以降の作曲家たちに愛用されました。ショパンの作品などでは、黒鍵の特性を活かした美しい旋律が数多く生み出されています。

地域別の発展と特色

ヨーロッパでの発展

ピアノの発祥地であるヨーロッパでは、国や地域によって異なる製作伝統が生まれました。

ドイツ・オーストリア系の楽器は、重厚で力強い音色を特徴とし、ベートーヴェンやブラームスなどの作品に適していました。これらの楽器の鍵盤は、やや重めのタッチに設定され、表現力豊かな演奏を可能にしていました。

一方、フランスやイタリア系の楽器は、より軽やかで明るい音色を特徴とし、鍵盤のタッチも軽めに設定されることが多くありました。これは、それぞれの国の音楽的嗜好や演奏習慣を反映したものでした。

アジアでの受容と発展

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ピアノはアジア諸国にも伝来しました。日本では明治時代に本格的にピアノが導入され、西洋音楽教育の中核を担うようになりました。

アジアの高温多湿な気候は、ヨーロッパとは大きく異なるため、鍵盤材料の選択や製作技術にも独自の工夫が必要でした。日本のピアノメーカーは、この課題を克服しながら、世界有数の技術力を獲得していきました。

演奏技法への影響

指づかいの発展

白黒の鍵盤配置は、ピアノ演奏における指づかい(運指法)の発展にも大きな影響を与えました。黒鍵の存在により、同じ音程を複数の指で演奏することが可能となり、より複雑で技巧的な演奏技法が生まれました。

19世紀のヴィルトゥオーゾ(超絶技巧演奏家)たちは、この鍵盤配置を最大限に活用し、従来では不可能と思われた技巧的な作品を演奏しました。リストやショパン、ラフマニノフなどの作品は、現在の鍵盤配置なしには成立し得ませんでした。

ペダル技法との協調

ピアノには、右足で操作するサステインペダル(ダンパーペダル)と、左足で操作するソフトペダル(ウナコルダペダル)があります。これらのペダル技法と鍵盤配置の組み合わせにより、豊かな表現力が生まれました。

特に、黒鍵と白鍵の音色の微妙な違いを、ペダル技法によってさらに際立たせることで、印象派の作曲家たちは新しい音楽表現を開拓しました。

教育への影響

音楽教育の標準化

ピアノの白黒鍵盤は、音楽教育の標準化にも大きく貢献しました。世界中どこでも同じ配置の鍵盤を使用することで、音楽教育の内容や方法を統一することが可能になりました。

初学者にとって、ハ長調(白鍵のみ)から始めて、徐々に黒鍵を含む調性に進むという段階的な学習方法は、非常に効果的な教育システムとなっています。

楽譜と鍵盤の対応

現在の五線譜システムと鍵盤配置の対応関係は、音楽理論の理解を深める上で重要な役割を果たしています。楽譜上の音符の位置と鍵盤上の位置が直感的に対応することで、初学者でも比較的容易に楽譜を読むことができます。

現代的な課題と発展

電子楽器との関係

20世紀後半以降、電子ピアノやシンセサイザーなどの電子楽器が普及しました。これらの楽器でも、伝統的なピアノの鍵盤配置が踏襲されています。これは、既存の演奏技法や教育システムとの互換性を保つためです。

しかし、電子楽器の特性を活かした新しい鍵盤配置の提案もあります。例えば、より効率的な運指を可能にする配置や、特定の音楽ジャンルに特化した配置などが研究されています。

バリアフリーへの取り組み

現代では、身体的制約のある方々にも音楽を楽しんでいただくための工夫が進められています。視覚障害者のための触覚的な識別方法の改良や、手の動きに制約がある方のための特殊な鍵盤配置なども開発されています。

文化的意味と象徴性

音楽文化における象徴

ピアノの白黒鍵盤は、単なる楽器の一部を超えて、音楽文化全体の象徴としての意味を持つようになりました。映画や小説、絵画などの芸術作品においても、ピアノの鍵盤は音楽や芸術性の象徴として頻繁に用いられています。

哲学的解釈

白と黒の対比は、しばしば哲学的な意味でも解釈されます。光と影、善と悪、喜びと悲しみなど、対立する概念の調和を表現するものとして、多くの芸術家や思想家に影響を与えてきました。

ライブ喫茶ELANでの体験

当店のグランドピアノでも、この長い歴史を持つ白黒鍵盤の伝統を体感していただけます。週末のライブでは、プロの演奏家たちがこの鍵盤を使って、バロックからモダンジャズまで幅広いジャンルの音楽を奏でています。

コーヒーを片手に、この美しい鍵盤から生まれる音楽に耳を傾けていると、何世紀にもわたる音楽の歴史と文化の重みを感じることができます。

未来への展望

技術革新と伝統の調和

デジタル技術の進歩により、ピアノの世界にも新しい可能性が生まれています。AI による自動演奏システムや、拡張現実(AR)を使った学習支援システムなど、様々な技術革新が進んでいます。

しかし、どのような技術革新があっても、白黒鍵盤という基本的な配置は変わることなく受け継がれていくと考えられます。それは、この配置が単なる便宜的なものではなく、音楽の本質的な構造と深く結びついているからです。

音楽教育の進化

今後の音楽教育では、従来の教育方法に加えて、デジタル技術を活用した新しい学習方法が普及していくでしょう。しかし、その基盤となるのは、依然として伝統的なピアノの鍵盤配置なのです。

まとめ

ピアノの鍵盤がなぜ白黒なのか、という単純な疑問から始まった今回の探求は、音楽史、楽器製作技術、音楽理論、文化史など、様々な分野にわたる豊かな物語を明らかにしました。

現在私たちが当然のように受け入れているピアノの白黒鍵盤は、長い歴史の中で実用性、美学、技術的制約、文化的要因などが複雑に絡み合って形成されたものです。それは単なる楽器の仕様ではなく、人類の音楽文化の結晶とも言える存在なのです。

次回ライブ喫茶ELANにお越しの際は、ぜひピアノの鍵盤をじっくりと眺めてみてください。その白と黒の美しいコントラストの中に、何世紀にもわたる音楽の歴史と、無数の演奏家たちの想いが込められていることを感じ取っていただけるはずです。

そして、そこから生まれる音楽とともに、ゆったりとしたくつろぎの時間をお過ごしください。音楽とコーヒーの香りに包まれた当店で、皆様のお越しを心よりお待ちしております。

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Cafe & Music ELAN 

やわらかな音と、香り高い一杯を。

名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
 営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜

ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います

あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております

【レコードの魅力】なぜレコードは「音があたたかい」と言われるのか?

はじめに

名古屋の隠れ家的存在、ライブ喫茶ELANにお越しいただき、ありがとうございます。
当店では広く落ち着いた雰囲気の店内に、往年の名曲を収めたレコードが所狭しと並んでいます。多くのお客様から「レコードの音はあたたかいですね」というお声をいただきますが、今回はその理由について詳しく探ってみたいと思います。

音楽とコーヒーを楽しみながら、ゆったりとしたくつろぎの時間をお過ごしいただく中で、なぜレコードの音が特別なのか、そのメカニズムと魅力について解説いたします。

アナログとデジタル音源の根本的な違い

アナログレコードの仕組み

レコードは完全なアナログメディアです。
音の波形がそのまま物理的な溝として円盤に刻まれており、針がその溝をなぞることで音を再生します。この過程では、原音の連続的な波形が途切れることなく保持されています。

録音時に収められた音の情報は、溝の深さや幅、カーブの角度として物理的に表現されます。演奏者の息遣いや楽器の微細な響き、録音スタジオの空気感まで、すべてが連続的な波形として記録されているのです。

デジタル音源の特徴

一方、CDやデジタル配信の音源は、アナログ信号をデジタル信号に変換したものです。この変換過程では、連続的な音の波形を小刻みに区切って数値化します。一般的なCDでは1秒間に44,100回のサンプリングが行われ、それぞれのポイントで音の高さを16ビットの数値で表現します。

この方式により、非常にクリアで正確な音の再現が可能になりましたが、同時に連続性が失われるという特徴もあります。人間の耳には感知できないほど細かく区切られているとはいえ、理論的には階段状の波形になっているのです。

レコードの音が「あたたかい」理由

高調波の豊かさ

レコードの音があたたかく感じられる最も重要な理由の一つが、高調波の豊かさです。アナログレコードでは、基音に加えて無数の倍音や高調波が自然に含まれています。これらの成分は、楽器本来の音色を構成する重要な要素であり、音に深みと豊かさを与えます。

特に弦楽器や管楽器では、基音だけでなく、その整数倍の周波数を持つ倍音が複雑に組み合わさって独特の音色を作り出しています。レコードはこれらの微細な成分まで忠実に再現できるため、楽器本来の響きを損なうことがありません。

自然な音響特性

レコード再生システム全体が持つ音響特性も、あたたかさの源泉となっています。カートリッジ、トーンアーム、ターンテーブル、そしてアンプやスピーカーに至るまで、すべてのコンポーネントが物理的な振動を扱います。

この過程で生じる微細な共振や響きが、音に自然な潤いを与えます。特に真空管アンプとの組み合わせでは、真空管特有の偶数次高調波歪みが加わり、より一層音楽的で心地よい響きを生み出します。

動的な音場表現

レコードの針が溝をトレースする際の物理的な動作により、音の強弱や空間的な広がりがより自然に表現されます。大きな音では針の振動が大きくなり、小さな音では細やかに動きます。この直接的な物理応答が、演奏の躍動感やダイナミクスを生き生きと伝えてくれるのです。

レコード特有のノイズが「味」になる理由

サーフェスノイズの心理的効果

レコードを聴く際に必ず伴うサーフェスノイズ、いわゆる「パチパチ音」は、一見すると音質を損なう要素のように思えます。しかし、このノイズが音楽体験に与える影響は意外にもポジティブなものです。

軽微なノイズは、聴き手の注意を音楽により集中させる効果があります。完璧すぎる無音状態よりも、わずかな背景音がある方が、人間の脳はリラックスして音楽に没頭できるという研究結果もあります。これは、自然界に完全な無音状態が存在しないことと関係しているとされています。

ノスタルジアと記憶の関連

レコード特有のノイズは、多くの人にとってノスタルジックな感情を呼び起こします。過去の音楽体験や思い出と結びついたこれらの音は、単なる雑音ではなく、音楽的な文脈の一部として認識されるようになります。

実際に、デジタルリマスタリングされた音源にわざとレコードノイズを加える技術も開発されており、このことからもノイズが持つ情緒的価値の高さが理解できます。

音楽への集中効果

完璧すぎる音質は、時として音楽以外のことに意識が向きやすくなることがあります。一方、レコードの適度なノイズは、「今、この瞬間の音楽体験」への集中を促します。デジタル音源のように他の作業をしながら聴くBGMとしてではなく、音楽そのものに向き合う時間を作り出してくれるのです。

周波数特性と人間の聴覚

人間の耳に優しい周波数レスポンス

レコードの周波数特性は、人間の聴覚特性と非常によく合致しています。特に中音域から高音域にかけての自然なロールオフ(徐々に減衰する特性)は、長時間聴いても耳が疲れにくいという利点をもたらします。

デジタル音源では、人間の可聴域を超える高周波数成分まで正確に再現されることがありますが、これらの成分は時として聴覚疲労の原因となることがあります。レコードの物理的特性による自然なフィルタリング効果は、結果として人間にとってより快適な音響環境を提供してくれます。

マスキング効果の活用

レコードのサーフェスノイズは、音響学的なマスキング効果も生み出します。これにより、デジタル音源では目立ってしまう可能性のある微細な歪みや不自然さが、適度にマスクされて聴こえなくなります。

この効果は、音楽全体をより自然で一体感のあるものとして感じさせる役割を果たしています。各楽器の音が独立して聞こえるのではなく、一つの音楽的空間の中で調和して響くように感じられるのです。

アナログレコードの物理的魅力

針と溝の直接的な関係

レコード再生の最も魅力的な側面の一つは、針と溝の直接的な物理接触です。音楽が電気信号や数値データを介することなく、純粋に機械的な動作によって再現されるという事実には、深い感動があります。

この物理的なプロセスは、音楽再生に一種の儀式的な価値も与えます。レコードを取り出し、ターンテーブルに載せ、針を落とすという一連の動作は、音楽鑑賞への準備段階として重要な意味を持ちます。

温度と湿度の影響

レコードの音質は、室温や湿度といった環境要因にも影響を受けます。これは一見デメリットのように思えますが、実際には音楽体験に季節感や時間性をもたらす要素として機能します。

夏の暑い日と冬の乾燥した日では、同じレコードでも微妙に異なる響きを聞かせてくれます。この変化は、音楽が生きているものであることを実感させてくれる貴重な体験となります。

ライブ喫茶ELANでのレコード体験

厳選されたオーディオシステム

当店では、レコードの魅力を最大限に引き出すため、長年の経験に基づいて厳選されたオーディオシステムを使用しています。ターンテーブルからスピーカーまで、すべてのコンポーネントがレコード再生に最適化されており、訪れるお客様に最高の音楽体験を提供できるよう配慮されています。

特に、真空管アンプとの組み合わせにより、レコード本来の持つあたたかさと豊かな表現力を余すことなくお楽しみいただけます。長時間聴いても疲れることなく、むしろ心地よいリラックス効果を感じていただけるはずです。

コレクションへのこだわり

店内に並ぶレコードコレクションは、単に数の多さを追求したものではありません。音楽的価値、録音品質、プレス状態など、様々な観点から厳選された名盤ばかりを取り揃えています。

ジャズ、クラシック、ロック、ポップスまで幅広いジャンルをカバーしながらも、それぞれがレコードというメディアの特性を活かした録音や演奏のものを中心に構成されています。お客様のリクエストにもできる限りお応えできるよう、常にコレクションの充実に努めています。

デジタル時代におけるレコードの意義

スローライフとの親和性

現代社会において、レコードを聴くという行為は一種のスローライフ実践とも言えます。スマートフォンで瞬時に音楽にアクセスできる時代だからこそ、あえて時間をかけてレコードを選び、針を落として音楽に向き合う時間が貴重になっています。

この物理的な手間と時間こそが、音楽により深く没頭するためのきっかけとなります。「ながら聴き」ではない、純粋な音楽鑑賞の時間を作り出してくれるのです。

コミュニケーションツールとしての側面

レコードは、音楽愛好家同士のコミュニケーションツールとしても機能します。同じ盤を持っている人との会話、レアな盤の情報交換、音質の違いについての議論など、レコードを通じた人と人とのつながりは、デジタル音源では得られない特別な価値があります。

当店でも、お客様同士がレコードの話題で盛り上がる光景をよく目にします。音楽という共通言語に加えて、レコードという共通の趣味が、より深いコミュニケーションを生み出してくれるのです。

音響工学的観点からの考察

アナログ信号の連続性

音響工学的な観点から見ると、アナログレコードの最大の特徴は信号の連続性にあります。デジタル信号では避けられない量子化ノイズや、サンプリング周波数による制限が、アナログレコードには存在しません。

この連続性は、特に楽器の自然な減衰音や、音と音の間の微妙な間合いの表現において威力を発揮します。ピアノの鍵盤から指が離れた瞬間の余韻や、弦楽器の弓の動きの微細な変化まで、忠実に再現してくれます。

位相特性の優秀さ

レコード再生システムは、位相特性においても優れています。アナログ回路による信号処理は、デジタル処理で避けられない位相の乱れを最小限に抑えることができます。

この位相の正確さは、楽器の定位感や音場の立体感に直接影響します。オーケストラの各楽器の配置や、録音スタジオの空間的な広がりを、より自然に感じることができるのです。

レコードケアとメンテナンス

適切な保管方法

レコードの音質を維持するためには、適切な保管とメンテナンスが欠かせません。当店では、温度と湿度を一定に保った環境でレコードを保管し、定期的なクリーニングを行っています。

垂直保管による盤面の保護、静電気除去による埃の付着防止、定期的な針の交換など、細かな配慮の積み重ねが、長期間にわたって高音質を維持する秘訣となっています。

クリーニングの重要性

レコードのクリーニングは、単に埃を取り除くだけではありません。溝に詰まった微細な汚れを除去することで、針の追従性を向上させ、より正確な音の再現を可能にします。

また、適切なクリーニングは、レコードとカートリッジの針両方の寿命を延ばすことにもつながります。これにより、長期間にわたって安定した高音質を楽しんでいただけるのです。

音楽ジャンルとレコードの相性

ジャズとレコードの親和性

ジャズという音楽ジャンルは、レコードというメディアと特に相性が良いとされています。アコースティック楽器中心の編成、自然な録音技法、演奏者の息遣いまで捉えた録音など、レコードの特性を活かした名盤が数多く存在します。

特に1950年代から1960年代にかけての黄金期のジャズ録音は、レコードで聴いてこそその真価を発揮します。マイルス・デイビス、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンスといった巨匠たちの演奏を、オリジナルプレスで聴く体験は格別です。

クラシック音楽での効果

クラシック音楽においても、レコードの特性は大きな価値を持ちます。オーケストラの豊かな響き、ソリストの繊細な表現、コンサートホールの残響など、すべてがアナログレコードによってより自然に再現されます。

特に室内楽や声楽では、演奏者と聴き手の距離感がより近く感じられ、まるで目の前で演奏されているかのような親密な音楽体験を得ることができます。

未来へのメッセージ

技術の進歩と伝統の価値

デジタル技術の進歩により、音楽の制作から配信まで、すべてがより便利で効率的になりました。しかし、その中でレコードが持つ価値は決して色褪せることがありません。むしろ、効率性とは異なる価値観として、その重要性が再認識されています。

技術的な完璧さよりも、人間的な温かさや音楽的な豊かさを求める人々にとって、レコードは欠かすことのできない存在となっています。これは単なるノスタルジーではなく、音楽本来の価値を見つめ直そうとする積極的な選択なのです。

音楽文化の継承

レコードを聴くという行為は、音楽文化の継承という側面も持っています。過去の名演奏や録音技術の粋を集めた作品を、当時と同じ方法で再生することで、その時代の音楽文化をより深く理解することができます。

当店のようなライブ喫茶は、こうした音楽文化の橋渡し役として、重要な使命を担っています。新しい世代の音楽愛好家に、レコードの魅力を伝え続けることで、豊かな音楽文化を未来につなげていきたいと考えています。

まとめ

レコードの音が「あたたかい」と言われる理由は、技術的な特性から心理的な効果まで、多層的で複合的なものです。アナログ信号の連続性、豊かな高調波成分、自然な周波数特性、適度なノイズによるマスキング効果など、様々な要素が組み合わさって、独特の音楽体験を生み出しています。

デジタル時代だからこそ、レコードが持つアナログの価値がより鮮明に浮かび上がってきます。効率性や利便性とは異なる、人間的な温かさや音楽的な豊かさを求める人々にとって、レコードは特別な存在であり続けるでしょう。

ライブ喫茶ELANでは、こうしたレコードの魅力を最大限に活かした音楽体験を提供しています。厳選されたレコードコレクション、最適化されたオーディオシステム、そして音楽に集中できる落ち着いた空間で、ぜひレコードならではの「あたたかい音」をご体験ください。

音楽とコーヒーを楽しみながら、ゆったりとしたくつろぎの時間をお過ごしいただける当店で、皆様のお越しを心よりお待ちしております。レコードが奏でる豊かな音楽の世界で、特別なひとときをお過ごしください。

 

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あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております