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2026年02月12日
コーヒーの酸味と音楽のテンポの関係 ――音楽とコーヒーが共鳴する、五感のひととき
音楽喫茶が紡ぐ時間のリズム
名古屋の街角にある「ライブ喫茶ELAN」は、知る人ぞ知る隠れ家のような存在です。ドアを開けた瞬間、木の香りとレコードのかすかなノイズ、そして焙煎したての豆の香ばしさが、訪れる人の五感を包み込みます。
店内のレコード棚には、往年の名盤たちが静かに並び、週末には小さなライブが開かれることも。お客様の中には「音楽を聴きながら飲む一杯が、なぜか家で飲むより美味しく感じる」と話される方が多くいらっしゃいます。
実際、音楽とコーヒーの関係は、ただの雰囲気づくりにとどまりません。音のテンポやリズムは、人の感覚や味覚にも作用すると言われています。たとえば、アップテンポの曲を聴きながら飲むコーヒーは、軽やかで明るい酸味をより感じやすくなる傾向があります。一方で、バラードのようなゆったりした曲とともに味わうと、深煎りの苦味がじんわりと染みてくるように感じるのです。
この不思議な現象を、ELANでは日常の中で自然に体験できます。
コーヒーの酸味とは? 心地よさを生む”調和のバランス”
コーヒーの「酸味」というと、苦手意識を持つ方も少なくありません。しかし、豆本来の香りや個性を楽しむうえで、酸味はとても重要な要素なのです。
コーヒーの酸味は、果実由来の有機酸(クエン酸・リンゴ酸・酒石酸など)によって生まれます。浅煎りに近いローストでは、その酸味成分が活き、柑橘のような爽やかさや、りんごのような優しい甘酸っぱさを生み出します。
たとえば、エチオピア産の豆にはベリー系のフレーバーを持つものが多く、軽やかな旋律のような「透明な酸味」が特徴です。一方で、キューバやブラジルの豆はまろやかで落ち着いた味わいになり、まるでスローテンポのジャズのような余韻を残します。
興味深いのは、同じ豆でも焙煎の仕方や淹れ方によって、その酸味の「印象」が変わることです。ハンドドリップで丁寧に抽出することで柔らかく、フレンチプレスなら果実味が強調される。まさに音楽の”アレンジ”のようなものです。
店主の私たちも、お客様のお好みやその日の気分を伺いながら、一杯の「音楽のようなコーヒー」を提案しています。
音楽のテンポが味覚に与える影響
ここで少し視点を変えてみましょう。音楽の「テンポ」とコーヒーの「酸味」は、なぜ関係があるのでしょうか?
心理学や感性工学の研究によると、人間の味覚は「聴覚刺激」によって変化することが分かっています。たとえば、テンポの速い曲を聴いているとき、人はより活発になり、刺激を求めるような感覚が強くなります。その結果、酸味や清涼感をはっきりと感じる傾向があるのです。
実験では、同じブレンドコーヒーを2つ用意し、速いジャズとしっとりしたクラシックをそれぞれ聴かせながら試飲してもらうと、前者のほうが「明るく、軽やかに感じる」と回答する人が多かったというデータもあります。
ELANでも、「ボサノヴァの日」と「クラシックの日」を設けたとき、お客様の注文傾向に変化が見られました。軽快なラテンのリズムが流れる日は、フルーティな酸味を持つ浅煎りを選ぶ方が多く、静かなピアノやボーカルの日は、深煎りやカフェオレなど、まろやかで落ち着く味を求める方が増えるのです。
音のテンポが私たちの”味覚スイッチ”を穏やかに切り替えているようにも思えます。
実際に試してみよう ― 五感で感じるペアリング体験
「コーヒーを味わいながら音楽を聴く」――それだけで十分に豊かな時間ですが、少し意識を向けるだけで感覚の世界が広がります。
ELANでは、ペアリング体験をおすすめしています。たとえば以下のような組み合わせです。
味覚と聴覚の結びつきは、じつは日常のあちこちに潜んでいます。たとえば、お祭りの太鼓を聴きながら食べる焼きそばが妙に美味しく感じたり、雨音をBGMに飲む紅茶がいつもより甘く思えたり。私たちは無意識のうちに、耳から入る情報で「味の輪郭」を描き直しているのかもしれません。ELANでのペアリング体験は、その感覚を意識的に楽しむ試みです。
- 明るいテンポの曲(スウィング、ボサノヴァなど) × エチオピアやケニアの浅煎りコーヒー
- ゆったりしたジャズピアノやバラード × グアテマラやブラジルの中煎り
- 深夜に聴きたいクラシックギターやブルース × 深煎りのブレンド
お客様からは「音で味が変わるなんて不思議」「自然と呼吸までゆっくりになる」といった感想をよくいただきます。
ある常連の方は、「仕事終わりにテンションを落ち着けたいから、夜はスロージャズと深煎り」と話されていました。逆に、休日の昼は「軽快なレコードと爽やかな酸味のキリマンジャロ」で気分を切り替えるのだそうです。まるで音楽が、その日一日のスイッチを押してくれるようです。
ELANのこだわりと小さな幸せ
ELANでは、豆の選定から焙煎、音響設計まですべて自家流。焙煎は店主自らが担当し、「音楽のようにリズムを感じながら火の加減を聴く」と言います。焙煎時に豆が”パチッ”と弾ける音――これを「ファーストクラック」と呼びますが、その音も大事な”テンポ”なのです。
ひとつひとつの豆が奏でる音を聴きながら、私たちはその日の豆の表情を見極めています。焙煎しすぎると苦味が強くなり、浅すぎると酸が立ちすぎる。その絶妙なバランスを取るのは、まさに演奏のよう。
また店内のスピーカー配置にもこだわりがあります。レコードの音が柔らかく空間に溶け込み、会話を邪魔しない程度の音量で流れるように設計しています。コーヒーの香りと音が「同じ温度」で混ざる瞬間、ELANらしい時間が流れ始めます。
音へのこだわりは、設備にもはっきりと表れています。メインスピーカーにはJBL Model 4344。往年の名機として知られるこのスピーカーは、力強く立体的なサウンドが持ち味で、低域の厚みから高域の繊細な倍音まで、一杯のコーヒーを味わう時間にふさわしい奥行きを届けてくれます。さらに、レコード再生にはレーザーターンテーブルを採用しています。針ではなくレーザー光で溝を読み取るため、盤面を傷つけることなく、原音に限りなく近い音を引き出せるのが特長です。古いレコードでも、まるで録音されたその瞬間に立ち会っているかのような鮮度で音楽が蘇ります。そしてステージには、グランドピアノとアコースティックドラムセット。週末のライブでは、電子楽器では決して出せない生音の振動が客席まで伝わり、コーヒーカップの水面がかすかに揺れる――そんな瞬間に出会えることもあります。
心と舌が共鳴する瞬間
コーヒーの酸味、香り、音楽のテンポ――それらはすべて、人の感情や記憶と密接につながっています。
たとえば、ちょっと疲れた午後。優しいピアノとともに飲む一杯のコーヒーが、言葉では説明できないほど心を解きほぐしてくれることがあります。逆に、新しい一日を始める朝には、軽やかなリズムと透き通る酸味が活力を与えてくれます。
ELANは、そうした「音と味の共鳴」を感じてもらえる空間でありたいと思っています。音楽を聴くようにコーヒーを飲み、コーヒーを味わうように音楽を聴く。その狭間にある静かな幸福を、ぜひ感じてください。
名古屋には昔から「ジャズ喫茶」「ロック喫茶」「フォーク喫茶」といった、音楽とともに過ごす喫茶文化が根づいてきました。ELANもその流れの中にありますが、私たちが大切にしているのは「聴く」だけでなく「参加する」という感覚です。月に数回開かれるセッションの夜には、プロのミュージシャンとお客様が即興で音を重ねることがあります。演奏する側と聴く側の境界がふっと溶け、その場にいる全員の呼吸がひとつになる瞬間――それはまさに、淹れたてのコーヒーから立ちのぼる湯気のように、目には見えないけれど確かにそこにある温もりです。オーナーはよくこう言います。「音楽は演奏する人と聴く人の”会話”です」と。一期一会の音が誰かの記憶に残り、またELANを訪れる理由になる。そんな循環こそが、この小さな喫茶店を動かし続けている力なのだと思います。
まとめ ― 音楽とコーヒーの調和がもたらす豊かさ
コーヒーの酸味は、決して”すっぱい”だけのものではなく、”生き生きとしたハーモニー”の一部です。そして、音楽のテンポがそのハーモニーに拍子を与えます。
ELANでは、これからも「音と味が響き合う時間」を大切に、お客様一人ひとりの心に残るひとときをお届けしていきます。次にご来店の際には、ぜひその日の気分に合わせてお気に入りのテンポと豆を選んでみてください。
ELANは、名古屋市熱田区の静かな住宅街にひっそりと佇んでいます。地下鉄名城線「西高蔵」駅から東へ徒歩7分、JR熱田駅からは北へ徒歩9分。少し見つけにくい場所にありますが、だからこそ、ドアを開けた先に広がる音と香りの世界が特別なものに感じられるはずです。平日の昼下がりは静かにレコードを楽しみたい方に、週末の夜はライブの熱気を味わいたい方におすすめです。「エランブレンドコーヒー」を片手に、その日の気分にぴったりの音楽と出会ってみてください。
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Cafe & Music ELAN
やわらかな音と、香り高い一杯を。
名古屋市熱田区外土居町9-37
光大井ハイツ1F 高蔵西館102
052-684-1711
営業時間|10:00〜23:00
定休日|月曜・第1&第3火曜日
アクセス|金山総合駅より大津通り南へ徒歩15分
市営バス(栄21)泉楽通四丁目行き「高蔵」下車すぐ
地下鉄名城線「西高蔵」駅より東へ徒歩7分
JR熱田駅より北へ徒歩9分
ゆったりと流れる時間のなかで、
ハンドドリップのコーヒーとグランドピアノの音色がそっと寄り添います
あなたの今日が、少しやさしくなるように。
Live Café ELAN でお待ちしております
